第14話 童貞のススメ (12)

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 抱きしめてくれた。あったかい。

 そのまましばらく朝岡さんの腕の中ですすり泣いた。

 誤解のないように説明しておくと、あたしは心から朝岡さんに恋愛感情を抱いていた。この人を幸せな気持ちにしてあげたいと本気で思っていた。胸がキュウウッと締め付けられるように感じていた。

 それと同時に、これがいわゆる色恋営業で、あたしにガチ恋させて目一杯お金を払わせようという演技だということも理解していた。朝岡さんが一生出会えないようなめくるめく恋の体験を有料のサービスとして提供しているのだとわかっていた。

 言ってみれば、コントロールされた二重人格。何も特別なことじゃない。実は人は誰でもこういう芸当ができる。男性の側だって、ガチ恋気分を意識しているのと同時に、これがお金と引き替えの援助交際だとわかってる。だから、あたしはカラダを売ってるんじゃない。夢を売ってるんだ。

「沙希……」

 あたしは泣き笑いしながら朝岡さんの顔を見上げた。

「やっと名前で呼んでくれたね。貴志くん……、あたし、あなたの初めての女になりたい。あたしじゃ、ダメですか?」

 もう言葉はいらない。

 朝岡さんはふたたびあたしにキスをした。童貞の人はやさしいキスをする。失敗したくなくて慎重になるからだろうな。

 ゆっくり体を引いて、あたしを押し倒すよう誘導。

 上着を脱いで床に落とす。スカートのホックをはずして、朝岡さんの手をファスナーへと導く。ベッドに横たえられるまでのあいだに、あたしはブラウスのボタンを全部はずした。童貞くんは服を脱がすのがうまくできないことが多い。でも、女の子が自分から裸になったのでは男性心理としては興ざめだ。だから、朝岡さんをサポートしつつ、女の子を脱がす経験もさせてあげるのだ。ブラをはずすのが最後の難関として残っちゃうんだけどね。

 まくりあがったスカートからのぞく太もも、幼さを感じさせる綿ショーツに隠された股間、おびえたように上下するすべすべしたおなか、ブラジャーにつつまれた二つの膨らみ。無抵抗で、しかし恥ずかしそうに震える半裸の少女。

 こんなときいつも思う。自分の意志で顔を真っ赤にすることができたらいいのにって。バイオフィードバックの訓練をしたらできるようになるかな。

 スカートを脱がされ、リボンタイをほどかれ、パンツも脱がされた。

 覆いかぶさってきた朝岡さんにキスされる。こんどは舌を挿れられた。ブラの上から乳房を揉まれた。体重をかけないよう注意してくれてる。

 唇を離した朝岡さんが熱っぽく見つめてきた。

「キスってこんなに気持ちいいものだったんだな」

 感動してるのが伝わってくる。そんなふうに言ってくれると照れる。すごくうれしい。

「貴志くんも服、脱いじゃお」

 朝岡さんが服を脱ぐあいだに、あたしも体を起こして背中のブラホックをはずしておく。

 全裸になった朝岡さんがあたしのブラウスを脱がせ、ブラをはずした。白ニーハイを脱がすかどうかは好みだけど、朝岡さんはもう待ちきれない様子で靴下のことには頭が回らないようだった。

 抱きしめられて押し倒された。筋肉質の胸が乳房に押し付けられる。キスのつづき。おなかに朝岡さんの熱い体温を感じる。肌と肌を触れ合わせているだけで、しあわせな気持ちが沸き起こってくる。

 想像していたより大きなアレがツンツンと突っついてきた。早くあたしの中に入りたいと言ってる。あたしは前戯が長い方が好きだ。でも、童貞くんにそれを求めたりはしない。童貞の人とのセックスの魅力はもっとほかのところにある。

「貴志くん……、もう挿れていいよ。貴志くんと早くひとつになりたい」

 朝岡さんは右手を添えて位置を合わせると、ためらいがちに中に入ってきた。童貞の人は恐る恐る挿入するので、結果的にいいカンジになるのだ。

「んッ」

 思わず声が漏れてしまった。あたしは濡れやすい方だけど、さすがにちょっと痛かった。でも、この反応が男の人を喜ばせることも知ってる。

 ゆっくりと奥まで押し込まれた。朝岡さんはじっとしてあたしの反応をうかがってる。あたしが弱々しく微笑むと、やさしいピストンが始まった。すこし痛い。

 朝岡さんの肩につかまって快感に耐えるフリをする。初体験が一生の思い出になるよう、ちゃんと感じてるように見せるんだ。どんどん気持ちよくなっていく様子を見せると、朝岡さんの動きがだんだん速くなる。ときどき体を硬直させたりピクピクさせたりして、何度もイッてることをアピール。もちろん全部演技だ。

 ほどなくして朝岡さんがあたしの中に射精した。

 そのあとはちゃんと抱きしめてキスもしてくれた。

 あたしも甘える子供のように抱きついて、うっとりとした声で言った。

「オナニー以外でイッたの初めて……。ウフフ、すごく気持ちよかった」

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