第3話 校内美少女ランキング (12)
動画プレーヤーをもうひとつ起動して、『2』という名前のファイルを再生させた。
二人組の全裸の男たちが、幼い少女を押さえ付けている場面。
夫を奪われた復讐のためにお母さんが雇った男たち。これは契約遂行の証拠として撮られたビデオだ。時に三脚に据え付けられ、時に男のひとりが手持ちで撮影していた。
後ろ手に手錠をかけられて、バックで犯されながら、もうひとりのアレをむりやり咥えさせられる。髪をつかまれて乱暴に突かれる。
泣いて許しを乞うことしかできなかった。
突然、吐き気に襲われて口を押さえた。嘔吐しそうになったけど、いまは胃の中が空っぽだ。涙だけがあふれた。
『おいおい、まだ六年生なのにフェラチオを覚えちゃったなぁ。お嬢ちゃん、学校の友達に自慢できるよ。この際、お尻も経験しちゃうか?』
『ひょえー、ふたあな体験か。小学生なのにスゲーな。でも、入るか?』
画面を見ることができない。あたしはイスの上で膝を抱え、顔を伏せた。
悲鳴。それがやがて喘ぎ声に変わっていく。
耐えがたい苦痛に歯を食いしばった。
あたしはこれほどまでにお母さんから恨まれていたんだ。
お母さんがさせたことだとわかったとき、安堵したことを覚えてる。あたしは行きずりの男たちに意味もなく犯されたわけじゃない。生まれてきたことの罰を受けたんだ。そう考えたらガマンできるような気がした。
そして、最後。『3』という名前のファイルを再生する。
中学校での輪姦ビデオ。
口をガムテープでふさがれ、押さえつけられ、野球部の狭い部室で輪姦されたんだ。
顔がはっきり写ってるのに、ネットでばらまかれた。
くぐもった泣き声、いやらしいセリフ、喘ぎ声、罵声。
過呼吸の発作で息ができなくなった。指先がしびれた。耐えられなくなって、パソコンの電源ケーブルを引っこ抜いた。でも、電源は切れない。片手で耳をふさぎながら、必死にプレーヤーの画面を閉じた。
あたしは椅子から転げ落ちた。体中が焼けるように熱い。体の中から何かが噴き出しそうだ。うめき声をあげながら両手で頭をかかえた。脚をバタバタさせ、よだれをたらして、床を転がった。叫びだしたいのに、声が出せない。
苦しい。助けて。誰か助けて。
強姦されたい。
中学のときは犯された後で気持ちよくなれたんだ。
誰でもいいからめちゃめちゃに犯されたい。
そう思ってしまう自分が悔しくて、悲しくて、涙があふれた。
床を這って、いつも使ってるちいさな紙袋を見つけると、口元に当てた。
これがあたしなんだ。
学校でのあたしはほんとのあたしじゃない。
あたしは穢れてる。
あたしは壊れてる。
正気でいるために見つけれた唯一の方法が援助交際だ。
生きていてもいいんだと思える唯一の場所が援助交際だ。
それがあたしを傷つけてるのは、もちろんわかってる。
援助交際で手にするほんのすこしの幸せと引き換えに。
あたしはますます穢れ、壊れていくんだ。
二十歳になるまで生きてはいないだろう。
結婚なんてできるわけがない。
あたしは娼婦だ。
だけど。
死ぬ前に王子さまに出会いたい。
命を捧げてもいいと思える人に出会いたい。
ひとときでいい。娼婦としてでかまわない。
愛されたい。
王子さまにはきっとふさわしいお姫さまがいる。それはあたしじゃない。
ふたりのしあわせを祈りながら、あたしは誰にも看取られずに死んでいくんだ。
でも、死ぬ時に――。
生まれてきたことに意味があったんだと思わせてほしい。
あたしの人生が誰かの役に立ったんだと思わせてほしい。
それ以上は望まない。
しばらくして落ち着いてくると、あたしはすすり泣きをやめて起き上がった。簡単な夕食を作って食べた。お母さんの分も用意したけど、その夜、お母さんは結局帰ってこなかった。
[援交ダイアリー]
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