十年前、大学を出たばかりのパパと、そのころもう実業家として会社をふたつも経営していたママが結婚して、悠里が生まれた。わたしはまだ五歳だったし、当時はわたしの生物学上の父親である夏目おじさんのことは知らなかった。だから、すぐにパパを父親として受け入れてなついたらしい。ママはシングルマザーで、夏目おじさんとは結婚していなかったんだ。ママは仕事で忙しかったので、わたしはまだ仕事の少なかったパパと過ごすことが多かった。
わたしにとってはいまのパパが本当のパパだ。
パパのことが大好き。
恋愛感情を抱いているわけじゃない。家族として大好きだって意味だ。もっとも、わたしはまだ本当の恋をしたことがないので、パパに対する気持ちが恋ではないとは言い切れないような気もする。
初めての相手として、パパならぴったりだ。わたしの理想の男性だし、わたしのことをわかってくれている。きっと優しく教えてくれるに違いない。パパの手で大人の世界に導いてもらえるなら最高だ。
だけど、パパはわたしのことを女として見てくれるかな?
十歳近く年上のママと結婚したパパにとって、十四歳の女の子はセックスの対象になるのかな?
ママに比べたら、わたしなんてぜんぜん子供だ。
わたしが悠里のことをまだ弟としてしか見ていないように、パパはわたしのことを娘としてしか見ていないのかもしれない。
娘といっても血のつながりはないんだから、セックスしたって問題ないはずだ。
わたしは血のつながりがあっても、ぜんぜん大丈夫なんだけどね。このへんはママの血筋なんだろう。ママの初体験の相手は実のお兄さん、つまりわたしの伯父さんなんだ。ママが中学一年生のときだったそうだ。
パパがわたしを女として見てくれれば……。
わたしは近くにあった椅子に腰掛けた。お嬢さまっぽく、ひざをそろえて座る。パパがシャッターを切る。
椅子に座ったまま右ひざを立て、かかとを椅子に載せた。わたしの太ももが丸見えになった。
一瞬、パパの動きが止まった。
でも、すぐにカメラを構えなおして、シャッターを切り続けた。撮影しながらパパはわたしの表情やポーズを褒めた。たぶんグラビア撮影の仕事のときにはそうするのだろう。モデルのように扱われて、すこしいい気分だ。
左ひざも立てて、両手でひざを抱えた。パパにはわたしのパンツが見えるはず。カメラのレンズがほんのすこしだけ下向きになったような気がした。レンズ越しにパパにアソコを見つめられているような感じだ。
制服のワンピースは丈が短くて、このポーズだとどうやってもパンツは丸見えになってしまう。
わたしはわざと、――パンツが見えてしまうのを恥ずかしそうに、でも恥ずかしがっているのを気取られないように、さりげなくスカートをなおす少女を装って――、スカートを押さえるふりをした。
その仕草が色っぽく見えるだろうと思ったんだ。
パパとはよく一緒にお風呂に入る。唇と唇とでキスしたこともある。同じベッドでパパの腕に抱かれて寝ることだってある。
親子なんだから、そのくらい当然だ。そんなの父親と娘のスキンシップだもの。
でも、いま必要なのは、男と女のドキドキなんだ。
Copyright © 2010 Nanamiyuu