第7話 えっち大好き! (02)
栄寿さんがわたしを降ろした。それから向きあって腰をかがめると、両手をわたしの肩に置いた。
「莉子ちゃん……。そんなふうに言われたら、ぼくはガマンできなくなっちゃうよ。きみは兄さんの子供で、まだ小学生なのに」
「ガマンしなくていいよ。栄寿さんになら、何をされたっていいもの」
スカートのファスナーを下げ、ホックをはずす。スカートがすとんと地面に落ちた。
夕陽に照らされた肌に栄寿さんが目を見張る。でも、すぐに視線をそらした。
「まだよ。ちゃんと見て」
わたしは両手でヒモパンの紐を勢いよく引っぱった。結び目がするっとほどけて、パンツの布が垂れた。毛なんて生えてないから、アソコの割れ目が丸見えになる。
身につけているのはサンダルだけ。まわりには誰もいなけど、道路の真ん中で全裸になっちゃった。
「ママの代わりになれるかな?」
栄寿さんが横目で盗み見るようにわたしを見て、唾をごくりと飲み込んだ。
「早くしないと誰か来ちゃうよ。その前に、わたしを奪って――」
言い終わる前に栄寿さんに抱きしめられ、キスで唇をふさがれた。
ずっとママのことが好きだったんでしょ?
わたしのことを好きだって言ってくれたのも、わたしがママの娘だからなの?
わたしにママの面影を見ていたの?
いまはどうなのかな。
涙がこぼれた。夕暮れ時はなんだか物悲しい雰囲気だ。楽しく遊んだ一日が終わって家路につく時間だから。何も心配することのなかった子供の頃の思い出。
ふと、実際に夕焼けを見ているのだと気づいた。
夢を見てた。寝ちゃってたんだ。
夢の中の夕焼け空と現実の夕焼けがダブって、一瞬、夢の続きかと錯覚した。
子供の頃の夢だ。でも、実際にあったことと妄想がごっちゃになってる。あの頃、ジンベイザメはまだいなかったし、ヒモパンなんていまでも持ってない。
夢から覚めたけど、まだ夢みたい。
お父さんと寄り添ってシーツにくるまってる。バルコニーに出したダブルベッドの上だ。実のお父さんとセックスしたんだ。
お父さんは黙って空を見つめていた。
わたしが自分の娘だと知らされてどう思ったかな。
お父さんの腕にほっぺたをくっつけた。お父さんがわたしのほうに目を向けた。互いにはにかんだように笑った。
「お父さん」
幼い子供が甘えるように抱きついた。お父さんは嫌がらない。わたしを抱きとめてくれた。
「ママの代わりでもいいよ」
「莉子ちゃんのこと、そんなふうに思ってないよ」
「でも、ママのこと好きなんでしょ?」
「好きだった。でも……」
お父さんはわたしを見つめて、言いかけた言葉を飲み込んだ。何度も口を開きかけては閉じ、それから目を伏せると、
「いまは莉子ちゃんのことが好きだ」
時が止まったように思えた。しばらくして、胸の奥に暖かいものが溢れてくるのを感じた。好きな人から好きだと言われるのって、こんなにうれしいんだ。
仰向けに寝そべったお父さんの体の上に腹ばいになって重なった。柔らかくなったアレがわたしのお腹にこすれた。ほっぺたを胸にくっつける。お父さんは両手で抱きしめてくれた。わたしもお父さんもちょっぴり冷えてきてる。体温を分け合うように肌を密着させた。そうしていると、ぬくもりが伝わってくる。
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