第13話 目覚めた少女たち (08)

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 翌日は朝から三人で絡み合った。一条さんも二日続けてというのはさすがにキツイので、キスが中心のイチャイチャだ。それでも、あたしと美菜子ちゃんにそれぞれ二回ずつ出した。

 もう当分はセックスしたくないんじゃないかしら。

 時間が来て、あたしと美菜子ちゃんは一条さんのマンションを後にした。

 美菜子ちゃんとは駅で別れた。トランクルームに戻って着替えるためだ。ひとりになって駅で列車を待っていると、いろいろなことが頭をよぎった。

 今回の援交では考えさせられることが多かった。『魔法の掲示板』が閉鎖されてから出会いがうまくいかないこと、美菜子ちゃんに嫉妬してしまったこと、女の子同士のセックスがすごくよかったこと。

 セックスをしすぎたからなのか、頭が痺れて考えがまとまらない。

 ふと思いついて、ショウマにメールを送った。『相談したいことがあるから会いたい』と。ベンチに座って夕方まで待っていたけれど、返信はこなかった。

 どうしようかな。

 このまま誰もいない家に帰ってもいいけど、それじゃなんだか寂しい。昨日からずっとセックスしどおしだったから、人恋しいのかも。

 あたしは予定とは違う路線の列車に乗って、適当な駅で降りた。あてもなく移動したつもりだったけど、無意識のうちに目的地を選んでたみたいだ。

 そこはエンジェルフォールの近くの駅だった。

 鷹森蓮司さん。すてきな人だった。また会いたい。

 うーん、なんとかあの人と友だちになれないかなぁ……。

 なんて考えててもしょうがない。

 蓮司さんは「おとなになってから来い」と言っていたけど、「二度と来るな」とは言われてない。追い返されるかもしれないけど、行ってみよう。

 エンジェルフォールの入り口はビルの外階段を下った地下にある。木製の扉には店名だけが書かれていて、とても店舗のようには見えない。たまたま通りかかった人が階段に気づいたとしても、倉庫か機械室の入り口としか思わないんじゃないかな。

 重い扉を開けると、チリンチリンというドアベルの音が鳴った。

 前回来たときとは違って、店内は薄暗く、いかにもバーという風情だった。照明はどこか暖かみがあって、焚き火のようなリラックスできる雰囲気を作っていた。

 奥のテーブルにひとりだけお客さんがいた。身なりのいい初老の紳士だ。あたしを一瞥して品定めするような視線を向けてきたけど、目が合うとすぐ顔を伏せた。

 カウンターの向こうに目をやると、蓮司さんが呆れた表情であたしをにらんでいた。

「エヘヘ、来ちゃった」

「来るなと言って素直に聞くようなタマじゃないとは思っていたが」

 やっぱり蓮司さんの声ってアソコを刺激する。

 あたしは笑顔でカウンター席に座った。

「本物の大人向けのバーに来てみたかったんです。素敵なお店ですね。蓮司さんも相変わらずカッコいいです」

「そりゃどうも。で、ご注文は?」

「スクリュードライバーをお願いします」

 蓮司さんがタンブラーに氷を入れるのを見ながら、

「ホントは蓮司さんに会いたくて来ちゃったんです。迷惑かもと思ったんですけど、ここに来ないと会えないし。あの、連絡先を交換しませんか?」

 と言うと、蓮司さんはおかしそうに唇をゆがめた。

 蓮司さんはタンブラーにオレンジジュースを注いで、スライスしたオレンジとチェリーを添えて、あたしの前に置いた。

「あのぅ……、ウォッカが入ってないんですけど……? これ、オレンジジュース……」

「お前は高校二年だろ。営業時間中に酒を飲ませられるか。スクリューなんかで酔っ払ったら犯されるぞ」

 蓮司さんが顔を近づけてきたので、あたしの胸が高鳴った。

「あたし、蓮司さんに犯されたいです。レイプしてください」

「お前、沙希と言ったか、よく変な女だと言われるだろ?」

「魅力的な男性と出会ってしまって、何とかその人と仲良くなりたいと一生懸命がんばってるだけ。女の子ならフツーのことです。まあ、援助交際してるくらいだからフツーの女の子ではないかもですけど」

「あいにくだが、俺はゲイだ」

 そう言われて、あたしは顔をしかめて口を尖らせた。

「女の子のアプローチを断る口実としてそうゆうウソは、ちょっと不誠実だと思います」

 そのときドアベルが鳴ったので、蓮司さんはあたしの抗議を聞き流してしまった。

 入ってきたお客さんは若い女性で、あたしの知ってる人だった。

「マリアさん!?」

「やあ、沙希。久しぶりだね」

 マリアさん――。ショウマの家の住み込み家政婦だ。

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