ピンクローターの思い出(11)

[Back][Next]

 いつものような強姦されたときのことを思い出しながらの自慰ではない。まどかが思い浮かべたのは、雄太と過ごした時間のことだった。授業中にさりげなく見つめていた横顔。話しかけてくれたときの屈託のない笑顔。デートのときに初めて知ったいろいろな素顔。ありえたかも知れない幸福な日々。もうどんなに手を伸ばしても届かない。

 ワンピースのボタンを外して胸をはだけた。指先で乳首を刺激する。ブラジャーはまだ着けていない。乳房は日ごとに成長していた。六年生だけど、どんどん女の体になっていく。中学生になった雄太と過ごせたかも知れない時間を思う。高校生になってからデートしたらどんなふうになれただろう。

 永遠に汚れてしまった自分には夢に見ることさえ許されない。雄太の隣にいるのは優子のような子であるべきだ。

 悲しくて胸が締め付けられる。その感覚は性の快感に似ている。切なさに震えながら、まどかは達した。

 その瞬間、

「おい、新田。大丈夫か?」

 という雄太の声がして、びっくりしたまどかはベッドから飛び起きた。

 スイッチが入ったままのローターが床に落ちてカタカタカタと音を立てた。

 まどかは声が出せず、どんな表情をすればいいのかもわからなかった。それは雄太も同じで、跳ね回るローターを見つめたまま動けなかった。

 先に我に返ったのはまどかだった。「あたし、帰る」と言いながら、無表情のままサッとしゃがんでローターを拾い上げた。そのとき床で滑ってバランスを崩した。雄太はまどかのために缶ジュースとアイスを持ってきたのだが、それを放り出してまどかを支えようとした。まどかが雄太にしがみついた拍子に二人はベッドに倒れ込んだ。

 仰向けになったまどかの乳房を雄太がつかんでいた。悲鳴をあげたり逃げようとしたりはしなかった。ついさっきまで夢想していた雄太との時間。夢と現実が溶け合っていく。息がかかるほと雄太の顔が近い。まどかは切ない表情で雄太を見つめた。

 雄太も夢を見ているような顔でまどかを見つめている。その顔がゆっくりと近づき、二人の唇が重なった。

 恐る恐る唇を押し付けるようなキス。

 雄太が顔をあげたとき、まどかは目に涙を浮かべて震えていた。

「ゴ、ゴメン……!」

 雄太が体を起こして顔を背けた。自分のしたことに恥じ入っている様子で青ざめている。

 まどかは起き上がって弱々しく微笑んだ。

「ねえ、中川くん。新田は援交してるってクラスのみんなが噂してる。中川くんもあたしのこと、そうゆうことしてる子だって思ってたの?」

「そんなこと思ってないよ! 新田はそんなことする子じゃないってわかってる」

「そう。だったらいい」

 まどかは自分の唇に触れた。できなかったファーストキス……。

「あの……、ホントにゴメン。ぼく、どうかしてた……」

 消え入りそうなほど恐縮する雄太を見てまどかはクスッと笑った。それから黙ってワンピースを脱いだ。身につけているのは大人っぽいガーターストッキングとショーツだけ。雄太は唖然としながらもまどかの裸体から目を離せなかった。

「中川くん、あたしのヌードを見た上におっぱいにも触った。中川くんも裸を見せてくれないとズルい」

 雄太は起きていることについていけず何も反応できない。まどかは雄太のTシャツに手をかけると、バンザイをさせて一気に脱がした。まどかを強姦した男たちとは違って、雄太の体は子供っぽくて華奢だった。

 今度はまどかの方からキスをして、乳房を押し付けた。そのまま唇を触れ合わせていると、雄太がまどかを押し倒した。

 両手でまどかの肩を抱き、夢中になって唇をむさぼる。息が荒くなって自分でも何をしているのかわかっていない。理性が吹き飛んでいる。まどかが抵抗するどころか自分の背中に腕を回すのを感じ、雄太は自分から半ズボンとパンツを脱いで全裸になった。まどかの脚の間に下半身を割り込ませ、勃起したアレをまどかの股間に押し付ける。まどかの胸の膨らみを体で感じ、気が遠くなるほどの興奮に荒ぶった。首筋に吸い付き、乳房を揉みしだき、ショーツの中に手を入れた。それから一度体を起こして、まどかのショーツを剥ぎ取ると、ふたたびまどかに覆いかぶさった。大きくなっているけどまだ剥け切ってはいないアレを、まどかのアソコにこすりつける。そして――。

 雄太が小さくうめき、白い液体がまどかのおなかに飛び散った。米の研ぎ汁のように薄く、未熟な精子のかたまりが米粒のように混じっている。

 射精して突然正気に戻った雄太は、肩で息をしながらまどかから離れた。自分の行為が信じられない様子で呆然としている。不安そうに精液を見つめていた。

「中川くんの精子だよ。出たの初めて?」

「精子……? これが……? そう……」

 まどかはティッシュで精液を拭き取った。

 二人は無言のまま服を着た。

[Back][Next]

[ピンクローターの思い出]

Copyright © 2022 Nanamiyuu