創世記25:19-26

長子の権利


1.長子の権利

 「長子の権利」とは、文字通り「長子」、つまり、最初に生まれた子ども、第一子に与えられる特権を指します。イサクには双子の息子が生まれましたが、ヤコブの前に生まれたのがエサウでした。そのため、エサウに長子の特権が与えらます。しかし、ヤコブはこの権利が自分にないことを知り、欲しいと思いました。エサウは長子の権利を当然手に入るものとして気にも留めていませんでしたが、ヤコブは兄や父をだまして自分で手に入れました。

 また、ヤコブの息子ヨセフは、父から長子の権利を譲り受けています。早くからそのことは、神様が彼に示していました。 長子の権利は、一族の指導的立場を引き継ぎ、他の子供の2倍の財産を相続できる権利であります。また、ヨセフが長子権を受け継いだことは、祝福も受けたことになります。ヤコブの家系において、ヨセフが長子の権利を譲り受けたことは、聖書の中に記された出来事の一つです。また、ユダヤ12民族の名前は、ヤコブの子の名前ですが、ここにはヨセフとレビ(祭司なので入らない)は入っていません。そこには、エフライム、マナセ(ヨセフの母系の子たち)が名前を並べているように、ヨセフに長子権が譲られた事は、大きな影響がありました。後の北王国は、ベンジャミン、エフライム、マナセのヨセフの家が中心となりました。

 ところで、長子とは誰の事なのか? が 混乱の元です。 正妻の最初の子、妻たちの最初の子、優秀と認める年長の子、愛する妻との間の子 色々判断が分かれるところであります。その選択は、一族が安泰であるためにも、家族への愛情という面でも 非常に悩ましいものでした。ただ、長子権を引き継ぐといっても、個人の持っているものを長子に他の子の2倍 との決まりを守るかどうか?が問われます。長子に全部を渡すかもしれません。また同様に、一族が持っているものについても問われます。長子権の問題は、一族の協力の上でも、大変大事でありました。

 ①相続権: 長子は父親や祖父からの相続財産を受け継ぐ権利があります。これは、土地、財産、家畜、または他の資産に適用されます。

 ②指導的立場: 長子は一族の指導者としての役割を引き継ぐことが期待されます。彼らは家族の決定を導き、他の兄弟姉妹をサポートする役割を果たします。

 ③祝福と特別な地位: 長子はしばしば神からの祝福を受け、特別な地位を持つことがあります。これは宗教的な文脈で言及されることもあります。

2.長子の権を奪ったヤコブ

 「長子の権利」と言われるものは、文字通り「長子」、つまり、最初に生まれた子ども、第一子に与えられる特権です。ヤコブに双子で生まれましたが、彼の前に生まれたのがエサウでした。ですから、エサウに長子の特権が与えられるわけです。これは一人だけに与えられる特権です。

 ヤコブはこの権利が自分にないのを知ってどうしても欲しいと思ったのです。兄のエサウにとっては、黙っていても手にはいるものであるし、特別その特権には固執してはいませんでした。むしろそんなものよりは、今、自分が欲しいと思うものに目が行っていた人でした。ところが、黙っていてもそれを与えられないヤコブは兄や父をだまして自分で手に入れたのです。

 ここで問題にしたいのは、アブラハムの場合との比較でです。長子の権利は、神様の命令で息子イサクに与えらました。そして、イサクはそれをアブラハムから譲り受けたのです。他にも息子たちがいましたが、長子の権利をめぐってやがて争いにならないようにと、彼らをイサクから遠ざけました。イサクの場合は長子の権利をエサウに譲るつもりでしましたが、ヤコブに騙されてそれを譲り渡してしまいました。あとでそのことを知ったイサクは愕然としますが、これが主の計画であることを感じて恐れたのです。ヤコブが騙し取ったことの背後には、エサウがカナンの女を妻にしたために、「失格」したとの神様の判断があったものと思われます。

3.父イサクは神様から守られた

 神の祝福(約束)を継承するという問題は、イサクの場合、とても難しいことでした。自分が父アブラハムからの祝福の継承者となったのは、父アブラハムのお陰です。義兄のイシュマエルにしても、アブラハムのもう一人の妻ケトラから生まれた6人の義兄弟とのかかわりにおいてもすべて父が祝福の継承に問題が起こらないようにしました。また、イサクの良い所は、戦いを好まない性格です。ですから、アブラハムから受け継いだ祝福の継承という重要な問題を、イサクは家庭内に問題が起こらないことを優先します。序列に従って祝福する。そのほうが彼の性格上、良いと思えたのです。批判を言えば、イサクは保身的であって、誰が長子の権利を取るべきか? の一族としての判断を避けたのだと言えます。

 もし、自分がイサクの立場であったならどうしたでしょうか?継承者が一人であれば全く問題ありませんが、複数の中からただ一人を選ばなければならないときには、そう簡単な問題ではあります。窮地に立たされるのです。継承する地位、資産の価値が高ければ高いほど、継承問題は、いつの時代においても、深刻な痛みを伴います。

 ある意味、イサクは騙されたことによって、長子権の継承という責任のストレスから守られました。イサクは父アブラハムや子のヤコブとは異なり、ストレスの少ない生涯であったと思われます。そのためか、父や子よりも長生きをして180歳まで生きました。ちなみに、父アブラハムは175歳、波乱の人生を送ったヤコブは147歳でした。同様に、エジプトでの生活でストレスが大きかったヨセフは110歳で亡くなっています。(注:年齢は、数え方によります。例として、魏志倭人伝等から見ますと、倭人は祭りのごとに年を取るので、年の数え方も知らないと書かれています。 実際に1年で1歳かどうか? 洪水や祭りの回数ではないか? 歴史を古く見せるために長命にせざるを得なかった 本当に長生きした など言われています。)