出エジプト12:21-28
子孫のための定め
ヒソプ
1.ヒソプ
『ヒソプの枝でわたしの罪を払ってください/わたしが清くなるように。わたしを洗ってください/雪よりも白くなるように。』 (詩編51:9)
ヒソプは真っ直ぐに伸び、幹は60cmぐらいの高さになり、良い香りがします。葉は細い長方形で2-5cmの長さ。夏の間には枝の先端にピンクか青い花が咲きます。10-12の種がありますが、最も有名な種は、ヤナギハッカで、地中海などで栽培されています。この種は、イスラエル周辺には自生しないことから聖書のヒソプではないと考えられています。中世においては、スープ、ピクルス、ミートパイなどに、苦味を添えることを目的に使用されました。
2.過ぎ越しの祭り
昼の内に子羊を屠る。そして、血を鴨居に塗る(主が災いを過ぎ越すためのしるし)
日没とともに焼いた子羊と種入れぬパンと、ニガナを食する。
3.現代の過ぎ越しの食事
・マッツァー(種入れぬパン)
・ゼロア(子羊のすねの骨)
・マーロール(苦ヨモギ):聖書に出てくるニガナ(苦菜)をさします。所謂ホースラディッシュです。
・ハゼレト(コスチシャ等 苦実のある葉)
・ハロセット(甘味)レンガの粘土を象徴
・ベイツァ(ゆで卵)
・カルパス(野菜)
4.この儀式の意味
そもそも、家の入口に血を塗るなどということをするわけですし、この時に初めて行われたものですから、だれでも異様に思ったでしょう。神様が初子を打つ災いを過ぎ越すための「しるし」ですが、子羊の血である必要はあるのでしょうか。新約になると、イエス様が登場して神の小羊としてのしるしを行いました。そして犠牲の血を流したわけですから、この命令は神様が将来の出来事を記念して行わせたに違いないでしょう。
食事の方は、過ぎ越しとは直接関係はありません。もともと過ぎ越しの後の一週間の除酵祭のことを指します。その最初の食事がちょうど、過ぎ越しの食事に当たるのです。これをみると、特に質素でも豪華でもない、栄養のバランスがとれた食事であることがわかります。また、ニガナがホースラディッシュなのも意外です。いわゆる、ホースラディッシュは、日本で売られている安い粉わさびの原料になります。
種入れぬパンも決して代用品ではありません。エジプトやイスラエルでは、粉を練って5分もすると、もうパンが膨らむほどに発酵が始まってしまいます。種入れぬパンを作るには、練ってすぐ焼く必要がありますから、普通のパンよりも手がかかるでしょう。それでも、大急ぎで焼いて、食べてそしてエジプトから出発したことを象徴することとして、食べながら子供たちに先祖の経験を教えるには、良い食材でしょう。わざわざニガナを食べることも、刺激的な伝承方法です。
また、この儀式を新しい土地を手に入れた後も続けるように指示をしています。これは、新しい土地を与えるとの神様の約束だということです。
モーセとアロンにこの儀式を指示されたイスラエルの民は、この奇妙な儀式を家に帰って、準備します。
エジプトからいよいよ脱出できる。そんな、実感があったのでしょう。また、朝までに家から出ると災いが家の中に起こると言われています。ここまで、イスラエルの民はモーセを信じてついてきています。シナイ半島をさまよったときには、そうはいきませんでしたが、この場面では一晩だけの我慢には、不満はなかったようです。