使徒21:17-36

パウロ逮捕される

     ヤコブとはイエス様の兄弟のヤコブの事です。エルサレムの教会の中心人物でした。ユダヤ教の人々には尊敬されていて良い関係を構築していましたので、エルサレムの教会は迫害の対象ではありませんでした。ここで、4人の誓願希望者と引き合わされます。この誓願では、頭を剃ることが書かれていますから、パウロが第二回伝道旅行の時にコリントの東港で行った「ナジル人の誓願」であることが、想像されます。パウロは、誓願を達成したので、頭を剃ってその伸びた髪と共に捧げたのです。

1.パウロへの誹謗中傷

エルサレムのユダヤの人々には、パウロのよからぬうわさが流れていました。それは、イエス様を信じるようになったユダヤ人たちから出たものです。彼らは熱心に律法を守っているのに、パウロが「律法を守るな」と 国外にいるユダヤ人に教えているといううわさが広がってしまっています。いずれ、彼らはパウロがエルサレムに来ていることを知ると、騒ぎが起きそうです。

エルサレムの教会が出した答えは、パウロが熱心に律法を守っていることをわからせることでした。そこで、ナジル人の誓願を立てている4人と一緒に、パウロは誓願を達成した4人の髪の毛を剃ることになりました。誓願中は、民数記6章によると次の通りとなります。

・ありとあらゆる葡萄の木の産物を口にすることを禁止される。葡萄酒、葡萄酢(ワイン・ビネガー)、生のまま、干したもの(レーズン)、まだ熟していないもの、皮、が列挙されている。

・髪を切ってはいけない。

・死者に近づいてはいけない。たとえそれが自分の父母であっても例外は存在しない。

ユダヤの律法の中で、もっとも厳しい誓願について、パウロはすでに行っており、そしてまた今エルサレムで誓願達成の感謝をパウロが中心になって行うことで、パウロが律法を守らないように指導しているということは、根拠がないことを示そうとしたのです。しかし、このような試みもすでに手遅れだったといえます。しかし、見方を変えるとパウロが捕まるのも神様のご計画だったのであります。


2.パウロ逮捕される

 パウロは、一週間もしないうちに神殿の中でアジア州のユダヤ人に見つかってしまいます。神殿は2重に壁があって、外側の壁の中には外国人でも入ることが許されますが、内側の壁にある美しの門から入った婦人の庭から先は、ユダヤ人しか入ることができません。そこで、パウロを見つけたということと、パウロがエルサレムの市内でギリシア人を連れていたこともあって、アジア州のユダヤ人はパウロが神殿内にギリシア人を連れ込んだと思い込んでしまいました。そうなると、もう収集はつきません。しかも、その相手は「律法を守らせない」との噂の主であるパウロですから、身に危険が及ぶほどの騒ぎになりました。冷静に考えると、何が起こっているのかを把握してる人はほとんどいないはずですが、それでも騒ぎ立てるということで、混乱が収まりそうもありません。神殿の北隣がローマ兵が駐留しているアントニオ要塞となっていますので、そこから千人隊長が兵士を引き連れてやってきます。その場の混乱から、隊に戻ってから調べることとしたのですが、パウロへの暴力が収まらないために、兵隊はパウロを上に掲げてその暴力を防ぎました。ローマ兵も内側の壁の中には入れませんから、パウロは群衆によって内側の壁から外国人の入れる庭まで、すでに引きずり出されていたようです。そこから、神殿の外側の壁から出そうという時に、また群衆が殺到したものと思われます。群衆は、極刑を求めていたからです。それだけ、群衆はすでにパウロの悪い噂を信じてしまっていたのです。