使徒16:25-40

真夜中の賛美

1.フィリピで投獄

パウロはフィリピで占い師の女奴隷から悪霊を追い出し、占いをできなくさせたことで住民の怒りをかい、牢獄に入れられます。この牢獄はフィリッポイ(フィリピ)遺跡の一部として、現存していますが、石積みで入り口には扉があったようです。

囚人部屋の天井に開けたマンホールから吊り降ろされるような、地下の牢獄ではありません)

パウロとシラスは、『16:24~二人をいちばん奥の牢に入れて、足には木の足枷をはめておいた。』と書かれていますから、あまり厳重でない牢獄ではあるものの、とても脱出が出来るような状況にはないことがわかります。

2.賛美するパウロとシラス

 牢獄には窓がありません。一日中真っ暗です。そんな中で、パウロとシラスは賛美をして祈っていました。そして、他の囚人たちはこれに聞き入っていました。何を祈ったのでしょうか。パウロは、フィリピに来る予定ではありませんでした。それが、フィリピに来たのは神のご命令によるものとパウロは考えていました。『16:9 その夜、パウロは幻を見た。その中で一人のマケドニア人が立って、「マケドニア州に渡って来て、わたしたちを助けてください」と言ってパウロに願った。』からです。

それが、マケドニアの町フィリピに着いたとたんに投獄されてしまったのです。どうにもならなくなったパウロは、「神様は、何をご計画されている」のかを 賛美しながら祈ったのでしょう。そして、この牢獄は、厳重ではない上に、入れられている人たちも「おとなしい」ようです。パウロとシラスの賛美と祈りを聞いていました。牢獄と言えば、荒くれがたくさんいるように思われますが、たいへん意外です。荒くれにもパウロとシラスの賛美と祈りが聞かれたのでしょうか。それとも、この牢獄に入れられている人は、無実の罪等で訴えられたような、今イエス様の助けが必要な人が集められていたのでしょうか。どちらにしても、驚きではないでしょうか。

パウロとシラスの賛美と祈りの結果、牢獄の中で思いもかけない伝道が行われていたのです。そういう意味で、驚くべきことは、もうすでに起こっていたのです。

3.地震と足かせからの解放 

局所的に地震が起こったということは、あまり科学的に説明はできません。また、それで扉が全部開いて、鎖が外れるのかというと説明は絶望的です。しかし、この物語の結果として、牢に入れられた人々が信仰を持ち、そして看守がイエス様を信じ、そして看守の家族までバプテスマを受けました。ですから、やはり、何かが起こっているのです。

 科学的な説明ができないことを除いて、すべてのことが事実だという前提で、守衛に着目するとこんなことが考えられます。

・実は、看守もパウロとシラスの賛美と祈りに聞き入っていた。

・地震で目を覚ました看守は、牢の戸(複数)が開いているのを見て、囚人たちがみんな逃げたと思い込んで、自殺しようとした。そしてパウロは自害してはならないと叫びます。

 (看守は、パウロを見ていませんでした。パウロからは看守が見えたのでしょう)

・看守は、パウロとシラスの前に震えながらひれ伏し、 二人を外へ連れ出した。

 (この時、鎖が外れたのではないでしょうか。外したのは看守ということを考えました。)

 地震があったとしたならば、それは看守の心の中に大地震が起こっていたと私は考えます。

イエス様のことが、賛美と祈りを通して看守の心の中に入ってきたのです。

そして、気が付いてみると、囚人はみなその罪から解放されて、牢の扉が開いて鎖も切れて自由の身になっていたのです。看守は、慌ててしまいました。しかし、それは、霊の問題であります。実際に、地震があって自由の身になっているわけではありません。実際、全員が牢の中にいました。そして、看守はパウロとシラスに教えを乞うのです。

(私が説明できないだけで、聖書の記事が疑わしいと言う意味ではありません)

4.高官の処置


 パウロは生まれながらのローマ市民でした。ローマは、敵を征服してはその征服地をローマ化していました。そのため、属国の市民もローマ市民として、ローマを支える側に取り込んでいました。例えば、ローマ兵は属国からも集められ、一定期間務めるとローマ市民になれたのです。ローマ市民権をとると、現代社会の市民と同じような権利が与えられました。ここでパウロが下役に言ったのは、「裁判を受ける権利がローマ市民にはある」という事です。全く裁判らしいこともしないうちに、民衆が騒ぐことに合わせて、むち打ちにしてさらに牢獄に入れられたわけですから、これは公になると高官は大変なことになります。失脚するということも十分に考えられますので、高官たちは、詫びを入れています。

(この当時は、ローマ皇帝の権力が強く、不祥事があると簡単に失脚してしまいます。例えば、ガリラヤ領主ヘロデ・アンティパスや総督ピラトは、失脚しています)