ローマ15:14-33

パウロの使命


 パウロは、ローマの信徒への手紙を書き終えようとしています。ここで、改めてこの手紙の目的を振り返ったのでしょう。「いったい、パウロには何をしろと、神様は命令しているのか?」。そして、ローマに行きたいと言っているパウロ自身が、「ローマで為すべきことは何なのか」を考えていたのでしょう。実際、パウロが伝道して回った場所は、ギリシャ東部とトルコです。この地区で何を成し遂げたならば、次の伝道の地のローマに行くつもりなのでしょうか? そして、ローマを出るときにも同じことが言えます。パウロは、まだ明らかになっていないローマでの活動について、そして自身の役割や使命について、自分自身に問いただし、そしてローマにいる仲間に「パウロが祈っている最中の計画」を共有しようとしました。


1.パウロの使命


 パウロは、このように言います。

『わたしが神から恵みをいただいて、15:16 異邦人のためにキリスト・イエスに仕える者となり、神の福音のために祭司の役を務めている』


 そして、この使命を感じるがゆえに、『この手紙ではところどころかなり思い切って書きました。』と正直なところを伝えます。パウロは、この手紙の出過ぎたところがあれば、「戒めてもらおう」としたのだと思われます。ただし、次の思いから書いたので、その点は配慮してもらいたかったのです。

『異邦人が、聖霊によって聖なるものとされた、神に喜ばれる供え物となるためにほかなりません。』

パウロが、神様のために働くのは、「異邦人が信仰をもつようになる」ためです。その目的であれば、どこかの町に行っても果たせることになります。このことから、パウロはローマに行く可能性があったわけです。しかし、まだローマに行っていないのは、地理的に遠い為か、パウロの係わる教会の指導がまだ必要だった為でしょう。

 パウロは、異邦人伝道は「神のための働き」と確信し、キリストがパウロに働いて導かれたと確信していました。パウロの言葉、パウロの行い、パウロが与えられた「しるし」、パウロが用いた奇跡の力、パウロに働いた神の霊の力は、全てキリストがパウロを通して働かれた。すべてが、イエス様の働きだったと、パウロは証ししたのです。イエス様によって、エルサレム、アジア州、マケドニア州、アカイア州を伝道したパウロです。イリリコン州はギリシャの西海岸ですから、使徒言行録に記載されている訪問地にはありませんが、イタリアの近くまでパウロが来ていることを伝えたかったのでしょう。パウロは、教会の無いところに、教会を作りました。その結果として、パウロの伝道は、福音が知られていない地域ばかりでした。こうして、パウロ自身が、イザヤ書の預言と同じだと説明します。

イザヤ『52:15 それほどに、彼は多くの民を驚かせる。彼を見て、王たちも口を閉ざす。だれも物語らなかったことを見/一度も聞かされなかったことを悟ったからだ。』


2.ローマ訪問の計画


 ローマの信徒への手紙は、コリントで第3回伝道旅行のことと思われます。ローマに行きたくていけなかったというのは、エルサレム教会への献金(エルサレム教会は自立していなかった)の課題もあれば、異邦人の割礼等の問題をエルサレムで相談する必要があったためと思われます。また、コリントに2回目の訪問をすることすら、なかなか実現しなかったので、エフェソに長く留まらないといけない事案があったのだろうと思われます。

『しかし今は、もうこの地方に働く場所がなく、その上、何年も前からあなたがたのところに行きたいと切望していたので、15:24 イスパニアに行くとき、訪ねたいと思います。』

 たぶん、エフェソを出発したのは、ティモテに託すことができたからでしょう。コリントを離れられたのも、アポロに託すことができたのだと思われます。これから、エルサレムに行ったら、ローマ経由でイスパニア(スペイン)に行こうと命がけで大航海をする決意を固めていたようです。そして、

『しばらくの間でも、あなたがたと共にいる喜びを味わってから、イスパニアへ向けて送り出してもらいたいのです。』

「送り出してもらいたい」とパウロが言っているのは、やはり、「ローマを任せられる状態になってから、スペインに行く」という考えからと思われます。

 

『15:29 そのときには、キリストの祝福をあふれるほど持って、あなたがたのところに行くことになると思っています。』

実際、次の年にはパウロは囚人としてローマに行くわけですが、エルサレムの使徒たちに献金をして、喜ばれ、そして異邦人信徒の割礼の問題も理解をもらったうえで、ローマを訪問できると期待して祈る様子がわかります。