使徒22:22-23:11

最高法院での取り調べ

     エルサレムの神殿で、パウロは群衆に弁明しましたが、かえって群衆は怒り出す結果になりました。そのために、千人隊長はパウロを縛り付けて鞭を打ち、この騒ぎの原因を調べようとします。

 

1.ローマの市民権

 選挙権・被選挙権、婚姻権、所有権、裁判権とその控訴権、ローマ軍団兵となる権利などを指します。また、人頭税や属州民税が免除されていました。どうすれば市民権を得ることができたかと言うと、親がローマ市民であれば、生まれながらのローマ市民です。もう一つが、ローマの支配下の属州になることを選んだ都市国家の有力者が、ローマ市民となりました。パウロの親がそれにあたります。時代が進むと、ローマ兵のなりてはローマ市民だけでは足りなくなったので、属州の自由人もローマの補助兵になりました。この場合、任期を務めあげると、ローマ市民権が与えられたのです。ほかに、教師、医師、解放奴隷がローマ市民権を持ちました。すべての自由人がローマ市民権を持つのは3世紀のことなので、パウロの時代のローマ市民とは支配者階層だと考えても、良いと思われます。この千人隊長は、ローマ市民権をお金で手に入れたようなので、権力者の子ではないのでしょう。一方で、パウロは生まれながらのローマ市民ですから、権力者の子であることは明確です。ですから、ローマ兵はパウロを縛り上げたことが恐ろしかったのです。

 

2.パウロ最高法院で取り調べを受ける

 千人隊長は、この騒ぎの原因を知るため、最高法院を開かせパウロの取り調べをさせました。ローマ法で裁くよりも前に、ユダヤの宗教的・政治的な中心である最高法院で調べさせればそれが裁判にかけたことになるからです。また、ローマ兵にはユダヤ教の宗教にかかわる問題を調べて、理解し、解決することは困難だからです。

 パウロは、「良心に従って神の前で生きてきました」と弁明すると、大祭司アナニアは、パウロの「口を打て」(叩いて黙らせろ)と命じます。パウロもそれに対抗しますが、アナニアが大祭司であることを知ると、矛先を治めました。そして、今パウロが訴えられているのは、「死者が復活する」という望みについてであると説明します。確かに、一度十字架で死なれたイエス様が復活したことを信じ、その道に人々を伝道していたわけですから、言っていることに嘘はありません。しかし、サドカイ派の人々は「死者の復活」を認めませんし、ファリサイ派の人々は、パウロと同じように「死者の復活」に希望を持っています。そもそも、ファリサイ派の人々もサドカイ派から派生しておりますが、サドカイ派は名誉職を、ファリサイ派は実権を握っていたようです。サドカイ派の人々は、いろいろ反対をしても、ファリサイ派の言うことに従うしかなかったようです。パウロは、そのことを十分に知っていたはずですので、ここでは無罪となることで、次は総督フェリクスの裁きが受けられると考えたのでしょう。