創世記4:1-16

カインとアベル


1.献げ物

 弟アベルは羊を飼う者に、兄カインは土を耕す者になりました。献げ物の記事から中身を見ましょう。

①焼き尽くす献げ物(レビ1章)

 牛・羊または山羊(無傷の雄)、山鳩または家鳩

②穀物の献げ物(レビ2章)

 小麦粉、オリーブオイル、乳香、塩(種入れぬパン)

③和解の献げ物(レビ3章)

 牛(無傷)、羊・山羊(無傷)

④贖罪の献げ物(レビ4章)

 若い雄牛、無傷の雄山羊、無傷の雄羊

ほかに、賠償の献げ物がありますが、割愛します。

 これだけ揃えるとなると弟アベルの方が、圧倒的に有利です。初子や初穂についても、羊飼いなら羊の初子と立派に見えたことでしょう。それに対してカインは、小麦を捧げることになります。

 『主はアベルとその献げ物に目を留められたが、4:5 カインとその献げ物には目を留められなかった。』

この結果に、カインは激しく怒って顔を伏せました。では、なぜカインは顔を伏せたのでしょうか?

① 神様は、十分に頑張って捧げたカインの献げ物に目を留められなかった。

② 神様は、十分に頑張って捧げたアベルの献げ物に目を留められた。

 ①ならば、これは職業の違いで捧げられるものが違うことに神様は配慮していないことになってしまいますので、これはないでしょう。②は成立すると思います。問題は、カインが十分に頑張った献げ物をしたか?です。もしそうであれば、神様はカインの献げ物にも目を留めたでしょう。

 カインは正しくない捧げ方をしたと思われます。量でしょうか?質でしょうか? 「土の実り」と「肥えた羊の初子」を比べてみると、普通の物と最上の物の違いがあったのだと考えてよいでしょう。神様の前では、言い訳しても無駄です。しかも、正しくない捧げ方のために、神様が目を留めなかったことは、カインのやったことへの報いであります。

2.カイン アベルを殺す

  この物語で、カインがアベルを殺す正当な理由が見当たりません。献げ物に差があっただけですし、献げ物は神様と個人の問題であって、人と人の関係ではありません。ですから、カインとアベルの間には、何も問題が存在していないのです。ただ、人は罪深い原因を持っています。われ彼を比較して「妬ましい」思いが持ち上がってくるのです。そして、不幸にしてカインは、その感情を抑えることが出来ずに、アベルを殺してしまいました。

3.カイン追放される

『4:9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」』

 カインは、なぜ素直に「アベルは私が殺しました」と言えなかったのでしょうか? あわよくば、隠し通せるとでも思ったのでしょうか? 嘘をついて、そして神様に対して「弟の番人ではない」と攻撃的になっているわけです。でも、すぐに神様にばれてしまいます。追放です。

『 4:13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。4:14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」』

 カインは、神様に追放を言われると、罪については何も言い訳をしませんでした。カインは追放と言った罰であっても、結局は自分は殺されてしまう。つまり、自分の土地はもうアベルの血のために実りがないならば、実りがある土地に移ることになります。そこにはそこで生活をしている人がいるわけですから、争いになります。つまり、殺人の罰が他の人の殺人の罪と、カインの死刑へと連鎖していくわけです。これでは、死刑を追放に減刑する意味がありません。

『 4:15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。』

 神様は、カインの言葉を聞き入れました。カインを守るためにしるしをつけて、カインを殺す者に7倍の復讐をするとの神様の宣言です。7は、完全数の7です。7倍の復讐とは、殺した本人とその家族 計7人を殺すと言う意味です。(例 サムエル下21:6)


 一つの伝承:アベルはカインにとってのルルワと同様に、双子の妹アクレミアがいた。イスラム教のラビの伝承によると、彼らと彼女らの父親であるアダムは、ルルワはアベルと結婚し、アクレミアはカインと結婚することを提案した。ルルワをアクレミアよりも魅力的だと思っていたカインは、この提案に反対した。ルルワの双子の兄弟を納得させるために、アダムは、神意を伺うために彼に神への捧げものを供えさせたが、カインの供え物は神によって拒絶された。カインはアベルを殺害すればルルワが自分の妻になると考え、アベルを殺害した。