ルカ22:24-46

 弟子たちのための祈り

 

1.いちばん偉い者(2)

 

『自分たちのうちでだれがいちばん偉いだろうか』

最後の晩餐で、「この中に裏切る者がいる」という深刻な話題の中、このような議論がありました。ユダヤでは、席順が厳格に上下関係を表しますから、最後の晩餐の席順が気に食わなかったのでしょうか?しかし、この話題が出てくるのは2回目ですから、日常的に行われていた議論なのかもしれません。世俗的な、出世競争に熱心だったわけでしょうが、弟子の裏切りを予告された後に、このような議論をするのではイエス様に失望を与えるものでしかありません。しかし、イエス様は、そんな弟子たちにこの後をゆだねなければなりません。

『あなたがたの中でいちばん偉い人は、いちばん若い者のようになり、上に立つ人は、仕える者のようになりなさい。』

『 あなたがたは、わたしの国でわたしの食事の席に着いて飲み食いを共にし、王座に座ってイスラエルの十二部族を治めることになる。』 とイエス様は、諭しました。

2.ペトロの離反を予告する

 弟子たちをふるいにかける。サタンがそう願い出たとイエス様は説明しました。弟子たちの信仰が保たれるようにイエス様が祈ったことも伝えます。しかし、弟子たちは、どう受け止めたのでしょう?。イエス様は「立ち直ったら」と言っていますから、全ての弟子が、一度はふるいにかけられ、籾殻のように捨て去られようとしていることを予告しているわけです。そこに能天気なペトロが言います。

『主よ、御一緒になら、牢に入っても死んでもよいと覚悟しております』

全く、理解していない様子に対し、イエス様は冷静に 予告しました。こんなペトロに、将来を託さなけらばなりません。そのためには、ほかの11弟子に、裏切るのは一人だけではないことを知らせたのでしょう。


『ペトロ、言っておくが、あなたは今日、鶏が鳴くまでに、三度わたしを知らないと言うだろう。』


結局、イエス様を裏切らなかった弟子はいませんでした。しかし、そのことが将来を託すだけの信仰を育てる良い機会となったのでした。


3.財布と袋と剣

以前、短期の伝道のため弟子たちを二人一組で派遣しました。その時は、財布や剣を持たないように指示を受けました。結果はというと、様々な奇跡を起こしながら、訪ねた家の世話によって、何も困らなかったのです。(ルカ10:4)しかし、2つの意味で今度の指示は違っています。一つは、イエス様が捕まる場面に向かうわけですから、弟子たちも防御のために武装する必要もあるからです。そうして、もう一つは、これから弟子たちによる伝道の旅が始まるということです。


4.オリーブ山で祈る

意外なことに、聖書の中に「ゲッセマネの園」はありません。基本的にオリーブ山はオリーブ畑ですから、祈る場所としては座る場所が欲しいものです。実際、マタイとマルコの記事からみると、イエス様は座っています。オリーブ畑には、オリーブを絞るための設備があって、そこで祈ったものと思われます。古くは石臼と棒ですりつぶしてオリーブ油を絞ったのですが、このころは、石の入れ物にオリーブを入れ、その上から梃子と石のおもりをつかって絞る方法がとられています。そして、絞った油は、大きな石の入れ物に流れていくわけです。つまり、座れるところがたくさんありそうです。

〔 〕内は、後で加筆された経緯があるため、信ぴょう性がうたがわれているとのことです。


 ここでも弟子たちはやらかします。イエス様が苦しみながら弟子たちのこれからの事も含めて祈っていた時に、弟子たちは眠ってしまいました。イエス様の伝道の業を引き継ぐには、とても相応しくない、醜態ばかりをさらしています。しかし、イエス様は、それでも弟子たちの信仰が保たれるように祈りました。