ルカ1:1-25

道筋をまっすぐに

202年12月12 主日礼拝

 道筋をまっすぐに

聖書 ルカによる福音書1:1-25


今週は、アドベント第三週です。ろうそくも5本の内3本に火がともっています。先週は預言者のろうそくに続き天使のろうそくが点きました。今週は羊飼いのろうそくが灯りました。そして来週はベツレヘムのろうそくと、真ん中のイエス様のろうそくを灯します。今日は、ルカによる福音書から、バプテスマのヨハネ誕生の予告についてお話します。

バプテスマのヨハネは、イエス様の先駆として、この世に生まれました。ルカによる福音書では、バプテスマのヨハネの役割をこのように説明しています。


ルカ『3:3 そこで、ヨハネはヨルダン川沿いの地方一帯に行って、罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた。3:4 これは、預言者イザヤの書に書いてあるとおりである。「荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を整え、/その道筋をまっすぐにせよ。3:5 谷はすべて埋められ、/山と丘はみな低くされる。曲がった道はまっすぐに、/でこぼこの道は平らになり、3:6 人は皆、神の救いを仰ぎ見る。』」』

ルカが、引用しているのはイザヤ書40章4-5節で、救い主が来る前にその通る道をまっすぐに、そして道の高低差を無くし、そしてでこぼこ道を平にするとの預言です。そのイザヤの預言通りに、バプテスマのヨハネは救い主が通られるまでに、人々への悔い改めのバプテスマを授けました。こうして、神様の赦しをえるための準備をしたのです。人々の心をイエス様が通るために、その道をまっすぐにしていたのです。

さて、今日の聖書の箇所の冒頭を見ましょう。

『1:5 ユダヤの王ヘロデの時代、アビヤ組の祭司にザカリアという人がいた。その妻はアロン家の娘の一人で、名をエリサベトといった。』

ユダヤの王ヘロデは、そのころユダとサマリアそしてガリラヤを領土とする王様でした。アビヤと言うのは、ダビデが祭司を24の組に分けた時の、8番目の籤にあたった組の長の名前です。(代上24:10 第七のくじはハコツに、第八のくじはアビヤに、)ダビデの時代にはすでに24の家に分かれていて、ヘロデの時代には、一万八千人くらいの祭司がいたわけです。割り算してみると、750人くらいが一組にいるわけです。その750人のうちの一人がザカリアです。もちろん祭司は全てアロンの子孫であります。そしてザカリアの妻エリサベトもアロンの子孫です。つまり、ザカリアとエリサベトの子が生まれるなら、祭司にとってより相応しい血筋と言えるのです。そして、血筋だけではなく、神の掟を守り、非の打ちどころのない二人だったと書かれています。それが、この二人は子供が無いまま年を取ってしまったのです。


祭司には、当番がありました。年に3回ある祭りの日には祭司全員で対応しますが、それ以外の日は、2週間の奉仕を年に2回、つまり年に28日のお勤めになります。

そうしますと、「主の聖所」で香を焚く、その祭司を決めるくじを750人で引くチャンスは、30年務めたとして840回となります。確率からいって、ザカリアは一生に一度くらいしか当たらないくじにあたったことになります。しかし、これは くじがたまたま当たったと考えないでください。くじは聖書の中にたびたび出てきますが、神様が選んだ者や、神様の決定等を知るために用いられました。そして、神様の決定ですから、最終決定ということになります。ですから、ザカリアが極めて確率が低いくじで選ばれたのは、運ではなくて神様の意思であるわけです。神様がザカリアにこの機会を与えたのは、エリサベトが男の子を産むことを告げさせるためでした。

天使は、ザカリアとエリサベトの子の名をヨハネとするように指示します。そして、天使はバプテスマのヨハネに与えられた使命を語ります。それは、イエス様が来られるための準備のことです。

『1:15 彼は主の御前に偉大な人になり、ぶどう酒や強い酒を飲まず、既に母の胎にいるときから聖霊に満たされていて、1:16 イスラエルの多くの子らをその神である主のもとに立ち帰らせる。1:17 彼はエリヤの霊と力で主に先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に正しい人の分別を持たせて、準備のできた民を主のために用意する。」』


ここで、天使は「エリヤの霊と力」という言葉を使いました。エリヤはモーセと並び評価されるような偉大な預言者でしたね。エリヤで最も有名なのが、バウルの神官との「いけにえ」の物語です。簡単に紹介しましょう。

バアルの預言者たちとエリヤはカルメル山に祭壇を築いて、それぞれの神に祈ったところ、バアルからは何の答えも無く、エリヤの神(ヤハウェ)のみが天から火を降らせて生贄を焼き尽くしたという物語です。(王上18:39)このようにして、エリヤはバアルの預言者たちが拝むものが偽物であることを証明した預言者なのです。ですから、エリヤには預言する力があっただけではなく、霊の力を使えたことがわかります。そのエリヤが再び来ることについて、マラキ書にはこの様に預言さています。


マラキ書『3:23 見よ、わたしは/大いなる恐るべき主の日が来る前に/預言者エリヤをあなたたちに遣わす。』


これは、主が来られる時を迎える前に、エリヤが遣わされるということを指します。救い主が与えられる前に、エリヤが道をまっすぐにするために派遣されるという預言は、そのまま、救い主イエスキリストが来られる前にエリヤであるバプテスマのヨハネが来るという、新約聖書の理解につながります。この福音書を書いたルカも、バプテスマのヨハネのことをエリヤであると信じ、そしてイエス様こそ救い主であると信じてこの記事を書いたに違いありません。


しかし、ザカリアはその天使の言葉を、そのまま受け入れることが出来ませんでした。そして、『わたしは老人ですし、妻も年をとっています。』と言います。それもそうでしょう。神様には何でもできると信じて祈っていたとしても、すぐには信じられないような「奇跡」だからです。すると、天使ガブリエルはザカリアをそのことが起こる日まで口が聞こえなくすると宣言してしまいました。天使の伝えた言葉をザカリアが信じなかったからです。


結局、ザカリアは口がきけなくなり、だいぶ時間がたってから聖所から出てきました。そんなザカリアの口がきける様になったのは、エリサベトが子を産み、その子の名前をヨハネと名付けた時でした。こうして、バプテスマのヨハネは、イエス様の少し前にこの世にやって来ました。これも神様のご計画であります。

そして、エリサベトにとっては、念願の子供が出来たのです。不妊の女として肩身の狭い思いをしていたエリサベトは、神様が返り見てくれたことを深く感謝しました。


バプテスマのヨハネは、その名の通り人々バプテスマを授けました。悔い改めのバプテスマです。

ルカ3:3『そこで、ヨハネはヨルダン川沿いの地方一帯に行って、罪の赦しを得させるために悔い改めのバプテスマを宣べ伝えた。』

ユダヤ教には、バプテスマのような習慣がありました。宗教的な沐浴の儀式です。異邦人が改宗するときの清めや、体が汚れた時の清めのためです。また、エッセネ派の人々は、毎日沐浴で清めをし、それとは別に儀式用の沐浴場でバプテスマを施していたようです。

バプテスマのヨハネは、たぶんこのエッセネ派の流れを汲むのでしょう。罪を悔い、そして改めることを勧めました。その悔い改めの「しるし」としてバプテスマを施したのです。こうして、次に来られるイエス様から罪の赦しをいただくためです。当時のバプテスマは、頭の先までを水につける方式です。かなり乱暴なようにも感じますが、この水に全身を沈めるということは、罪の世界に生きていた自分との決別を意味します。そして、罪のある生活は死ぬのです。再び、水の上に顔を出したときには、新しい命が与えられます。イエス様の十字架の死によって私たちの罪は贖われたのですが、イエス様を信じるようになった私たちが、バプテスマを受けたいとの信仰の表明を通して、イエス様の救いに与れるのです。バプテスマのヨハネのバプテスマは、水によるものでした。それが、イエス様の時から聖霊によるバプテスマになります。バプテスマのヨハネ自身がこのように言っています。

ルカ『3:16 そこで、ヨハネは皆に向かって言った。「わたしはあなたたちに水でバプテスマを授けるが、わたしよりも優れた方が来られる。わたしは、その方の履物のひもを解く値打ちもない。その方は、聖霊と火であなたたちにバプテスマをお授けになる。』


イエス様に聖霊が降り立ったのは、バプテスマのヨハネからバプテスマを受けた時でした。

ルカ『3:21 民衆が皆洗礼を受け、イエスも洗礼を受けて祈っておられると、天が開け、3:22 聖霊が鳩のように目に見える姿でイエスの上に降って来た。すると、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が、天から聞こえた。』


しかし、バプテスマのヨハネは、このように活躍をしていましたが、イエス様が活動を始めた頃には、ヘロデ・アンティパスにつかまって、活動が出来なくなってしまいます。(このことは、史実として記録されています。イエス様の親戚であるバプテスマのヨハネは、歴史上の人物なのです。)

バプテスマのヨハネの活動は、イエス様の来られるまでの準備でした。そして、イエス様の伝道が始まり、イエス様の十字架での死と3日後の復活をもって、神様の計画は完成することになります。この様に、預言者によって語られたエリヤとメシアがこの地上に降され、神様の計画を進めたのでした。エリヤだとされるバプテスマのヨハネがメシアの来るための準備をし、道をまっすぐにしていたのです。こうして、イザヤ書の預言は成就したのです。


このバプテスマのヨハネが生まれる前に、私たちの主イエス様の生まれることがマリアに告知されます。この時のみ使いも天使ガブリエルでした。2回続けて、神様は信じられないような奇跡を起こすのです。

来週19日は、アドベント4週にクリスマス礼拝を守ります。どうかこの一週間、神様の不思議な業、そしてご計画が成就したことに感謝して、祈ってその時を迎えましょう。また、バプテストでは、アドベント4週の礼拝をクリスマス礼拝と位置づけしています。去年と同じようにコロナのために、祝会などはできませんが、静かなクリスマスも味わい深いと思います。そして、イヴ礼拝は24日の午後7時からあります。皆で、多くの人が礼拝に来られることを祈って参りましょう。