1. ヨセフを殺そうと
『37:18 兄たちは、はるか遠くの方にヨセフの姿を認めると、まだ近づいて来ないうちに、ヨセフを殺してしまおうとたくらみ、37:19 相談した。「おい、向こうから例の夢見るお方がやって来る。37:20 さあ、今だ。あれを殺して、穴の一つに投げ込もう。後は、野獣に食われたと言えばよい。あれの夢がどうなるか、見てやろう。」』
ヨセフの兄たちはヨセフをねたみ、そして憎しみ、ついに殺意まで抱いています。長子はレアの子ルベン。ヨセフよりも10~20歳も上です。だけど、父ヤコブは、愛するラケルの子ヨセフを跡継ぎにしようとしています。また、あからさまに良い服を着せられていました。そのヨセフも、夢の中で兄弟たちがヨセフの下についたといったことを兄弟に話したものですから、憎まれたのも理解できます。しかし、その憎しみは、父の見ていないところで、兄弟たちは弟ヨセフを殺すことを相談する、ほどでありました。
そして「あれの夢がどうなるかを見ようではないか。」と言っています。これは、自分たちでその夢を阻止してみようではないか、との提案なわけです。けれども、その結果はというと、ヨセフの夢は遠くエジプトの地で実現するのです。
『7:21 ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から助け出そうとして、言った。「命まで取るのはよそう。」37:22 ルベンは続けて言った。「血を流してはならない。荒れ野のこの穴に投げ入れよう。手を下してはならない。」ルベンは、ヨセフを彼らの手から助け出して、父のもとへ帰したかったのである。』
ルベンは、父を助けて一族をまとめていたのでしょう。そして、もしヨセフが死んだら?と父の嘆く姿を思うと、ヨセフを父のもとに返さなければならないと思いました。しかし、ほかの9人の兄弟の憎しみを感じると、殺さずに放置することを提案します。それならば、後でこっそりと連れ出すことができるからです。
『37:23 ヨセフがやって来ると、兄たちはヨセフが着ていた着物、裾の長い晴れ着をはぎ取り、37:24 彼を捕らえて、穴に投げ込んだ。その穴は空で水はなかった。』
遊牧している場所に穴があるというのは不自然です。原語では、貯水槽とか井戸を指す言葉が使われています。いずれにしろ、深さのある穴であり、そして枯れていたわけですから、そこに落とすだけで、人の助けなしに脱出することは不可能です。彼らは、羊飼いなので、井戸の所在については明るかったのでしょう。ここでは、ルベンも一緒になってヨセフの晴れ着をはぎ取って、穴に投げ込んでいます。ルベンは助けようとしていることがばれないようにしたのでしょう。それでも、やはりヨセフが憎かったのかもしれません。
これは、乾いた井戸であります。実は、ヨセフは「助けて」と叫んでいますが、兄たちは無視しました(42:21)。そして、長服を脱がせていますが、それはヨセフへの妬みを象徴するものだったからです。
2.ヨセフのその後
『37:25 彼らはそれから、腰を下ろして食事を始めたが、ふと目を上げると、イシュマエル人の隊商がギレアドの方からやって来るのが見えた。らくだに樹脂、乳香、没薬を積んで、エジプトに下って行こうとしているところであった。』
イシュマエルとはアブラハムとハガルの子の名で、イシュマエル人はその子孫です。エジプトと中東を結ぶ街道は、海の道、王の道、アラブ通商の道の三つですが、ヨセフが向かったシケムの真ん中には王の道につながる街道が通っていました。ギレアドは、ヨルダン川をはさんだ東側の町で、王の道が通っています。そこは、貿易隊商にめぐり合うような場所だったのです。そこで、ルベンはいなかったのでしょう、四男のユダが、イシュマエル人に売ろうと提案します、そこに敵対するミデヤン人の商人が来て、ヨセフは売られてしまいます。後にユダが、イスラエルの代表する存在になった、その始まりかもしれません。
ヨセフは、ラケルとの唯一の子ですから、ヤコブの悲しみは実に深いものでした。けれども、死んでしまったと思いましたが、実際は奴隷として売られたのです。そして、パロの廷臣に買い取られたのです。十七歳の子が外国の奴隷として、しかも兄たちによって売られているのです。けれども、神様にはご計画があります。 どうか続きの話を読んでみてください。特段説明しなくても、その驚くべき展開に圧倒されると思います。全ての出来事が無駄ではなく、折り重なって、最後は一つの神様の目的が達成されていくのです。