今日の箇所には、イエス様が十字架に架けられるために、エルサレムに入るところが記されています。イエス様は、エルサレムに入るにあたり、準備をさせました。そのまま弟子たちとともにエルサレムに入城したのではなかったのです。二人の弟子を遣わし、子ろばを用意させたのです。それは「王様」としての姿を人々に示すためです。なぜならば、旧約聖書にも、メシアがエルサレムに上る預言があります。
ゼカリヤ『9:9 娘シオンよ、大いに踊れ。娘エルサレムよ、歓呼の声をあげよ。見よ、あなたの王が来る。彼は神に従い、勝利を与えられた者/高ぶることなく、ろばに乗って来る/雌ろばの子であるろばに乗って。』。
このようにゼカリヤは、救い主の到来を約束しました。「勝利を与えられた者」と言いますが神様の律法に生きる者であり、「ろばに乗って」と「王」であることを示しています。そして、ろばは「柔和な者」即ち「高ぶることがない」ことを示しました。
1.まだだれも乗ったことがない子ろば
『11:1 一行がエルサレムに近づいて、オリーブ山のふもとにあるベトファゲとベタニアにさしかかったとき、』
ベトファゲもベタニアも小さい村で、エルサレムのすぐそばにあります。つまり、イエス様はエルサレムに入る直前の村で、入城の準備をしたのです。
『イエスは二人の弟子を使いに出そうとして、11:2 言われた。「向こうの村へ行きなさい。村に入るとすぐ、まだだれも乗ったことのない子ろばのつないであるのが見つかる。それをほどいて、連れて来なさい。』
ここでイエス様は、弟子たちへの指示の中で、ご自身が「神の子」であることを示しています。「まだだれも乗ったことのない子ろば」とは、神様がご自身のために道具等を用いるための「聖別」された子ろばであることを示します。ですから、ご自身を神の子、神として、「聖別された子ろば」を手配するように指示したのです。
『11:3 もし、だれかが、『なぜ、そんなことをするのか』と言ったら、『主がお入り用なのです。すぐここにお返しになります』と言いなさい。」』
ここでも、自分のことを「主:クリオス(Κύριος)」と呼んでいますが、これは、神様と言う意味と持ち主(主人)との意味です。ここでは、前者の意味で使われています。と言うのは、文脈から、「神様の御用に使います。そして、神様の御用が終わったらお返しします」と言えば、相手に通じるとの意思が読み取れるからです。つまり、人間の御用ではないことを明示しているのです。と、言うことで、イエス様はここで自分が神の子であり神様であることを告げたと言えます。こうしてイエス様の言葉の通り、神様の救いのご計画が進められていったのです。
2.エルサレム入城
イエス様は、いよいよエルサレムに向かいます。
『11:7 二人が子ろばを連れてイエスのところに戻って来て、その上に自分の服をかけると、イエスはそれにお乗りになった。11:8 多くの人が自分の服を道に敷き、また、ほかの人々は野原から葉の付いた枝を切って来て道に敷いた。11:9 そして、前を行く者も後に従う者も叫んだ。』
イエス様は子ろばに乗って入城し、人々はローマ支配からの解放のための王として熱狂的に迎えました。しかし、イエス様は、人々が熱狂する中で、何の反応もしていません。黙しています。しかし、ゼカリヤの預言はだれでも知っています。救い主はろばに乗って、やってくるのです。群衆は、それを知って歓迎しました。イエス様は、救い主としてろばに乗ってエルサレムに入城し、群衆は自分の着ている服や、棕櫚(なつめやし)の葉を道に敷いて、先導する者たちと後ろについてくる者たちに分かれて、それぞれ叫びました。
『「ホサナ。主の名によって来られる方に、/
祝福があるように。11:10 我らの父ダビデの来るべき国に、/
祝福があるように。いと高きところにホサナ。」』
ホサナ(英語: hosanna )は、元はヘブライ語で「どうか、救ってください」を意味する ホーシーアー・ナー(hoshia na)の短縮形 です。明らかに、イエス様を救い主と見て、歓迎しているわけです。
『11:11 こうして、イエスはエルサレムに着いて、神殿の境内に入り、辺りの様子を見て回った後、もはや夕方になったので、十二人を連れてベタニアへ出て行かれた。』
イエス様がエルサレムに着き、真っ先に向かった先は「神殿」でした。神様との交わりの場を丁寧に見たのです。あきらかに、群衆が歓待した目的でイエス様がエルサレムに入城したのではないことが、ここからわかります。ローマ支配の政治的支配の様子を見るのであれば、ピラトの官邸や、カイザリヤに駐屯するローマ軍を見に行くはずです。また、エルサレムに住む有力者である、ヘロデ・アンティパスの傭兵部隊を見に行ったでしょう。そして、夕方になるとベタニヤ村に向かいます。もともとエルサレムに行った時にイエス様が定宿としていた、マルタとマリア、ラザロの家に向かったのです。