1. 宰相となったヨセフ
『41:37 ファラオと家来たちは皆、ヨセフの言葉に感心した。』
ファラオの夢の話を聞かされたヨセフは、その場でそれを解き明かし、対処法まで提言しました。もちろん、夢の事象が正確であるという前提に立てば、ヨセフの提言はだれにでも考えられることです。しかし、7年間の豊作を使って、7年間の飢饉に備えるなどは、思いついたとしても提言はできません。もし外れていたら?とか、もし提言は正しかったとしても、うまく管理できなければ?などと心配しだしたら、言い出すことも難しいです。特にこの専制国家でファラオに誓ったならば、結果が悪ければ命の保証はありません。それなのに、ヨセフは提言を言い切ったことは、やはり神様の導きがあって、ヨセフはそこに完全な信頼を置いていた証であります。
『41:41 ファラオはヨセフに向かって、「見よ、わたしは今、お前をエジプト全国の上に立てる」と言い、41:42 印章のついた指輪を自分の指からはずしてヨセフの指にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にかけた。』
これは、ヨセフの夢の解き明かしと提言を聞いたファラオの結論でした。その証拠として、「印章のついた指輪を自分の指からはずしてヨセフの指にはめ」ました。「指輪」は装飾品であるだけではなく、王様の印鑑であります。この印鑑で命令書に捺印すると、王の命令となります。ですから、王と同じ権威を持つことを示します。ですから、指輪を渡すことは、「摂政」としてヨセフを任命することを公に宣言したことになります。この指輪によって、ヨセフはエジプトを実質的に支配できるのです。想定できそうもない展開ですが、これが神様のご計画なのです。
このときのヨセフは30歳。管理者としての実力が問われるのですが、それに対応できるように神様は準備をしていました。父ヤコブのところにいたときからの父の財産を管理させ、ポティファルの家や牢獄においてもその管理を任されていました。全エジプトを治める知恵もその間に養われていたのです。
2.ヨセフの二人の子供
エジプトに未曽有の大飢饉が来る前に、ヨセフはエジプトの祭司ポティ・フェラの娘アセナトを妻として与えられます。そして二人の子どもが与えられます。名前は、「マナセ」と、「エフライム」です。それらの名前はヨセフがこれまで神が自分の生涯にどのようにかかわってくれたかをあかしするものでした。妻の宗教に感化されることがないヨセフだったのでしょう。子どもの名前を呼ぶごとに、いつでも神様のことを思い起こすことができるようにしたのです。
①「マナセ」という名
「マナセ」という名前は「神が、わたしの苦労と父の家のことをすべて忘れさせてくださった。」という意味です。ヨセフのこれまでの生涯を振り返るならば、アップダウンを繰り返しています。しかし、ヨセフの良い時にも悪い時にも、いつでも「主はヨセフとともにおられた」のです。その歩みを貫いているのは神様のご計画でありますから、すべての出来事がつながっているということです。
「マナセ」という名前の中に、ヨセフはこれまでの自分の経験した苦しみの中に、自分の父のことや兄弟たちにされたことを忘れさせるほどの、帳消しにするほどに、神様がそこにおられ、その祝福と計画に導かれてきたことを示しています。自分が受けた苦しみを凌ぐほどの神様のご計画という摂理がそこにあったことを受け止めたことを意味しています。
②「エフライム」という名
「エフライム」という名前は、「神は、悩みの地で、わたしに子孫を増やしてくださった。」ことを意味します。「エフライム」の語源は「多くを実らす、繁殖する」を意味する「パーラー」です。旧約では30回(創世記では15回)も使われています。神様は「生めよ、ふやせよ」等のフレーズで、アダム、ノア、アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフに語っています。