「わたしがあなたに語った言葉をひとつ残らず巻物に書き記しなさい。」・・・この冒頭の言葉は、エレミヤ書27章、28章のように、民の前で語られたのではなく、最初から書き記すことに専念していたという事を強調しています。この預言の特徴は、祝福と回復であります。おそらくバビロンの捕囚たちが預言者の教えを受け入れた結果でもあるのでしょう。そこに、新しい契約の約束(エレミヤ31:31)が見いだされます。
1.回復の約束
エレミヤ30〜31章は慰めの書と呼ばれています。エレミヤは自らの預言を弟子バルクに口述筆記させ(エレミヤ36:4)、それをバビロンの捕囚民に送りました。捕囚地の人々はそれを回覧したわけです。国を滅ぼされた民族は、ふつうは血が混ざって一体化してしまいます。しかし、ユダヤ民族は、異教の民族と混ざらなかったのです。彼らは、民族としてのアイデンティテーを忘れず、そしてエレミヤ、エゼキエルの預言者を通して、国家回復の希望を持ち続けたからです。
『 30:1 主からエレミヤに臨んだ言葉。30:2 「イスラエルの神、主はこう言われる。わたしがあなたに語った言葉をひとつ残らず巻物に書き記しなさい。30:3 見よ、わたしの民、イスラエルとユダの繁栄を回復する日が来る、と主は言われる。主は言われる。わたしは、彼らを先祖に与えた国土に連れ戻し、これを所有させる。」』
慰めは災いによる苦しみの後に与えられます。
エレミヤ『30:11 わたしがお前と共にいて救うと/主は言われる。お前が散らされていた国々を/わたしは滅ぼし尽くす。しかし、お前を滅ぼし尽くすことはない。わたしはお前を正しく懲らしめる。罰せずにおくことは決してない。』
2.国の再建
エレミヤ『30:17 さあ、わたしがお前の傷を治し/打ち傷をいやそう、と主は言われる。人々はお前を、「追い出された者」と呼び/「相手にされないシオン」と言っているが。
30:18 主はこう言われる。見よ、わたしはヤコブの天幕の繁栄を回復し/その住む所を憐れむ。都は廃虚の丘の上に建てられ/城郭はあるべき姿に再建される。』
「都は廃墟の丘の上に建てられる」とあります。日本の常識からいうと、廃墟となったら完全に撤去してから、そこに基礎を設置します。しかし、イスラエルでは、廃墟の上にどんどん家を建てていきました。テルと呼びますが、廃墟の上に家を建てまた廃墟となることを繰り返すわけですから、小山のようになっていきます。例えば、イエス様が十字架を背負って歩いた道は、現在のドロローサではなく、地下50mほどのところに埋まっているわけです。シオンの街すなわちエルサレムが、これまでたどってきたように、廃墟の上に再び建てられるわけです。そして、古くから高い城壁を誇っていたエルサレムですから、同じように城郭も整備されるとの預言です。それは、国をとりもどし、すべての国としての機能が元と同じ様に回復することを示します。
3.メシヤ預言
『30:21 ひとりの指導者が彼らの間から/治める者が彼らの中から出る。わたしが彼を近づけるので/彼はわたしのもとに来る。彼のほか、誰が命をかけて/わたしに近づくであろうか、と主は言われる。』
ユダヤ人は、再び彼らの王の下に置かれます。この王は、仲介者なしで神様に近づくことができます。つまり、言い換えれば、彼は王であると同時に大祭司でもあるのです。大祭司でなければ、誰もそのような一歩を踏み出そうとはしません。大祭司以外の誰も神様の御前に出ることを許されず、至聖所は年に一度だけ大祭司自身にだけ開かれていました。他のすべての人にとって、これは死刑に処せられるべき冒涜でした。命がけで、神様の前に出れるのは、それを許された者メシア(キリスト)なのです。
『30:22 こうして、あなたたちはわたしの民となり/わたしはあなたたちの神となる。』
あなたたちはわたしの民となり・・・何百年もの間、ユダヤ人の民は「ロアンミ」または「あなたがたはわたしの民ではない」と呼ばれてきました(ホセア書『1:9 主は言われた。「その子を/ロ・アンミ(わが民でない者)と名付けよ。あなたたちはわたしの民ではなく/わたしはあなたたちの神ではないからだ。」』)。
しかし、今や回心すると、神様の恵みの契約は新たに更新され、その新たな恵みが彼らに与えられるのです。そして、その恵みにあずかる者は、神の民と呼ばれ、そのように振る舞い、主を恐れ、主を礼拝します。
そして、私はあなたたちの神となる。・・・神様は、ユダヤ人に愛を示し、ユダヤ人に好意を与え、ユダヤ人を保護の下に連れて行くのです。これは、人々が神様に立ち返るときに目に見える形で起きます。
『11:26 こうして全イスラエルが救われるということです。次のように書いてあるとおりです。「救う方がシオンから来て、/ヤコブから不信心を遠ざける。11:27 これこそ、わたしが、彼らの罪を取り除くときに、/彼らと結ぶわたしの契約である。」』