1.神殿の崩壊の予告
『13:1 イエスが神殿の境内を出て行かれるとき、弟子の一人が言った。「先生、御覧ください。なんとすばらしい石、なんとすばらしい建物でしょう。」』
弟子の一人は、神殿の景色のすばらしさに見とれています。しかし、実態は、違います。神殿には長い祈りが大好きなファリサイ派の人々がいたり、暴利を得るために神殿に商人がいたからです。葉はすばらしく生い茂っているけれども、実を結ばないいちじくの木のように、神殿は立派なだけで、本来の機能をなしていなかったのです。
『13:2 イエスは言われた。「これらの大きな建物を見ているのか。一つの石もここで崩されずに他の石の上に残ることはない。」』
このヘロデ大王が修復した第二神殿は、世界の七不思議に入れられるほど、荘厳なものでした。当時の世界の中で、これほど美しい建築物はなかっただろうと言われています。それなのに、将来、石が積まれたまま残ることはないというのです。この言葉の通り、ローマ帝国がこの神殿をこわすことで、実現しました。そもそも、ユダヤ戦争は、ユダヤの反乱でありました。この戦争でユダヤの町はすべて陥落してしまったのです。エルサレムの町も、最後は神殿の丘を残して陥落してしまいます。ところが、神殿に立てこもって戦い続けたため、ユダヤのシンボルであった神殿は無くなってしまったのです。ここから、目に見えるものを根拠に誇ることのむなしさを学びます。目に見えるものは、必ず過ぎ去ります。形あるものは必ず壊れるのです。イエスがこれから弟子たちに話されることは、目に見えるものがどのように滅び去るか、ということです。
2.終末の徴
『13:4 「おっしゃってください。そのことはいつ起こるのですか。また、そのことがすべて実現するときには、どんな徴があるのですか。」』
弟子たちは、神殿が滅びることに関して、世の終わりについてイエスに質問しています。なぜなら、ゼカリヤ書14章には、終わりの日にエルサレムが攻められることが記されているからです。
『13:5 イエスは話し始められた。「人に惑わされないように気をつけなさい。13:6 わたしの名を名乗る者が大勢現れ、『わたしがそれだ』と言って、多くの人を惑わすだろう。13:7 戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞いても、慌ててはいけない。そういうことは起こるに決まっているが、まだ世の終わりではない。1』
イエス様は、世の終わりについて話を何度かしますが、いくつかの命令をしています。一つ目は、「気をつけなさい。」です。世の終わりについて、多くの惑わしがある。ですから、惑わしを受けないためにも、正しい知識を持つ必要があります。例えば歴史を通じて、自称キリストが出現し、戦争も各地で起こりました。イエス様は、このようなことがしばらく続く、と言っているのです。弟子たちが理解していなかったことは、この期間についてです。エルサレムをイスラエルが実際に失ったのは、紀元70年です。また、この期間に、神様はユダヤ人だけではなく、異邦人にも救いの手を広げました。
『13:8 民は民に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に地震があり、飢饉が起こる。これらは産みの苦しみの始まりである。13:9 あなたがたは自分のことに気をつけていなさい。あなたがたは地方法院に引き渡され、会堂で打ちたたかれる。また、わたしのために総督や王の前に立たされて、証しをすることになる。』 これは、3つの出来事が起こります。戦争と地震と飢饉です。イエス様は、これらを「産みの苦しみ」と呼びました。痛みが激しいのですが、いったん子どもが産まれると、その喜びで体験した苦しみは過ぎ去ってしまうのです。したがって、世の終わりには、希望があります。しかし、イエス様は、再び「気をつけなさい。」と命じています。そして、聖徒たちに起こることを話します。「地方法院に引き渡され、会堂で打ちたたかれる。」わけです。この法院は、ユダヤ人指導者によって形成されるサンヘドリンであり、会堂はユダヤ教の礼拝堂です。つまり、使徒たちはユダヤ人から迫害されます。
『13:10 しかし、まず、福音があらゆる民に宣べ伝えられねばならない。』
不思議なことですが、迫害を受けることによって、福音はあらゆる民族に伝わる、と言っています。その模範となるのがイエス様ご自身ですが、十字架にかけられたことによって、世界中にいる人々に信仰を与えました。
『13:11 引き渡され、連れて行かれるとき、何を言おうかと取り越し苦労をしてはならない。そのときには、教えられることを話せばよい。実は、話すのはあなたがたではなく、聖霊なのだ。』
使徒たちは、イエス様のことを人々の前で証しをすることになるので、その準備に苦労することでしょう。しかし、その時は、聖霊が話すべきことを教えるのです。だからその時は、聖霊に助けを求めてください。聖霊は、必要なみことばや、みことばの解き明かしを与えてくださいます。
『13:12 兄弟は兄弟を、父は子を死に追いやり、子は親に反抗して殺すだろう。13:13 また、わたしの名のために、あなたがたはすべての人に憎まれる。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。」』
迫害は、国からではなく、家族からもあります。信徒を国に売り渡すときが来るからです。 しかし、最後まで耐え忍ぶ人は救われるのです。