1.悪霊に会う
イエス様と弟子たちは、舟でガリラヤ湖のカファルナウムの対岸(南東岸)のゲラサに着きました。ゲラサは、ローマ直営のデカポリスの町です。(異教徒の地方だと認識ください)
『5:2 イエスが舟から上がられるとすぐに、汚れた霊に取りつかれた人が墓場からやって来た。5:3 この人は墓場を住まいとしており、もはやだれも、鎖を用いてさえつなぎとめておくことはできなかった。』
汚れた霊、とか悪霊とは何を指すのかは、定かではありません。この悪霊は人に憑いています。悪霊に憑かれた彼は、墓場に住んでいました。(洞窟などの穴が墓として使われていました)
『5:6 イエスを遠くから見ると、走り寄ってひれ伏し、5:7 大声で叫んだ。「いと高き神の子イエス、かまわないでくれ。後生だから、苦しめないでほしい。」』
彼の方から、イエス様に駆け寄っています。 そして、イエス様を拝みます。人間には手のつけようがなかったこの悪霊は、イエスの御前では足元に服従しているのです。 彼は、イエス様を、「いと高き神の子」と呼んでいます。彼に憑いている霊は、イエスの正体を知っていたのです。 そして、この悪霊はイエスにお願いしています。
『5:8 イエスが、「汚れた霊、この人から出て行け」と言われたからである。5:9 そこで、イエスが、「名は何というのか」とお尋ねになると、「名はレギオン。大勢だから」と言った。』
この汚れた霊は、一人ではなかったようです。レギオンは、ローマの約6千人の兵隊を呼ぶ単位です。 そして、自分たちをこの地方から追い出さないでくださいと懇願しました。
2.豚への乗り移り
『5:11 ところで、その辺りの山で豚の大群がえさをあさっていた。5:12 汚れた霊どもはイエスに、「豚の中に送り込み、乗り移らせてくれ」と願った。』
その土地に豚が飼われていました。「豚」は、律法によると、汚れた動物なので、ユダヤでは飼いません。つまり、ここは異邦人の土地なのです。けがれた霊どもは、豚に乗り移りたいと願いました。イエス様に追い出されるとしても、汚れた豚の中に逃げ込めば、そこから再び追い出される事は無いだろうということでしょうか?
『5:13 イエスがお許しになったので、汚れた霊どもは出て、豚の中に入った。すると、二千匹ほどの豚の群れが崖を下って湖になだれ込み、湖の中で次々とおぼれ死んだ。』
イエス様は、悪霊どもの願いを聞き入れて、豚に乗り移るのを許しました。悪霊にさえも、イエス様は相談に乗るのです。イエス様は、すべての人格に対して、同様にされるのでしょう。
『5:14 豚飼いたちは逃げ出し、町や村にこのことを知らせた。人々は何が起こったのかと見に来た。5:15 彼らはイエスのところに来ると、レギオンに取りつかれていた人が服を着、正気になって座っているのを見て、恐ろしくなった。』
イエス様は、悪霊ではなく、悪霊につかれていた男を助けようとしていたわけです。ところが、その地方に住んでいた人々は違っていました。彼らは、悪霊から解放された人を見て、喜んだのではなく、恐ろしくなりました。彼らは、この男のことをよく知っていたからです。そもそも、彼らが飼っていた豚が2千匹おぼれてしまった恐ろしい光景を目撃しています。そして、彼らはその男が悪霊から解放されたことよりも、自分たちのビジネスが、壊滅状態になったこと、そしてそれが繰り返されないか?を恐れたのです。
『5:16 成り行きを見ていた人たちは、悪霊に取りつかれた人の身に起こったことと豚のことを人々に語った。5:17 そこで、人々はイエスにその地方から出て行ってもらいたいと言いだした。』
人々の願いは、イエス様を追い出すことでした。イエスは彼らの意思を受け入れました。それは、人々が自分らで選んだからです。イエス様は、だれの選択であっても尊重します。
『5:18 イエスが舟に乗られると、悪霊に取りつかれていた人が、一緒に行きたいと願った。5:19 イエスはそれを許さないで、こう言われた。「自分の家に帰りなさい。そして身内の人に、主があなたを憐れみ、あなたにしてくださったことをことごとく知らせなさい。」』
悪霊どもや人々の申し出を受け入れたイエス様ですが、彼の願いを許しませんでした。しかも、お供をしたいという願いにもかかわらず、それを拒みます。なぜなら、彼は、イエス様を証ししようとしていたからです。イエス様は、彼の心に信仰がともったことをご覧になったと思います。ですから、12弟子のように、いつもイエスのそばにいたいと求めている彼に対して、イエスは、「そのままのあなたでいなさい。あなたが受けたことを、そのまま語り告げなさい。」と言うことだったのでしょう。
『5:20 その人は立ち去り、イエスが自分にしてくださったことをことごとくデカポリス地方に言い広め始めた。人々は皆驚いた。』
彼は、イエス様の証人となりました。こうして、イエス様は、大ぜいの悪霊を追い出すことによって、ご自分がキリストであることを示したのです。