1.シケム
シケムは、古い聖所を含む土地の名前です。ヨシュア記の後の方で、「大きな石」と「テレビンの木」が主の聖所周辺にあることが明言されています。
ヨシュア『24:25 その日、ヨシュアはシケムで民と契約を結び、彼らのために掟と法とを定めた。24:26 ヨシュアは、これらの言葉を神の教えの書に記し、次いで、大きな石を取り、主の聖所にあるテレビンの木のもとに立て、24:27 民全員に告げた。「見よ、この石がわたしたちに対して証拠となる。この石は、わたしたちに語られた主の仰せをことごとく聞いているからである。この石は、あなたたちが神を欺くことのないように、あなたたちに対して証拠となる。」』
この聖所の起源は、族長時代にあります。(創世記12:6,33:18―20,35:2―4)特にイスラエルの聖地となったのが、この土地を購入したことに始まっています。
創世記『33:19 ヤコブは、天幕を張った土地の一部を、シケムの父ハモルの息子たちから百ケシタで買い取り、33:20 そこに祭壇を建てて、それをエル・エロヘ・イスラエルと呼んだ。』
創世記では、樫の木のある聖所が、既に存在しているという事実が語られています。(ヨシュア記ではテレビンの木)シケムには、アブラハムとヤコブの伝承が結び付けられているだけでなく、ヨシュアの伝承とも結びつけられています。ヨシュアもエフライム族であり、シケムはヨセフの家の中心的な聖所であるからです。ここでは「ヨセフの家」が集合したことが記されています。
テレビンの木:エラー(パレスチナテレビン)と呼ばれ、その意味は神の木です。アルローン(樫の木)とは別の木の種類です。
2.聖なる契約
全イスラエル(12部族)が連帯して聖なる契約を結んだと考えられます。その際、信仰共同体として重要なのは、イスラエルの神、ヤハウエを選び、他の神々を除き去ることです。しかも先祖たちが崇拝していた神々のみならず、新たに獲得した土地の神々をも除き去ることです。
古代人の思考では、神と土地は結びついています。実際、先祖たちユーフラテス川の向こう側に住んでいた時には、彼らはその土地の神々を礼拝していました。ですから、『24:2~あなたたちの先祖は、アブラハムとナホルの父テラを含めて、昔ユーフラテス川の向こうに住み、他の神々を拝んでいた。』という理解は、イスラエルの十二部族がこれからどのように歩むべきかを導く意味を持ちます。イスラエルの十二部族が一つの民として歩むために必要なことは、自分たちを選び、約束の土地へ導き入れた主(ヤハウェ)を畏れ、主をのみ礼拝し、主にのみ仕えることです。
『24:14 あなたたちはだから、主を畏れ、真心を込め真実をもって彼に仕え、あなたたちの先祖が川の向こう側やエジプトで仕えていた神々を除き去って、主に仕えなさい。』
この言葉は、イスラエル十二部族が一つの民として歩む指標となります。パレスチナへの入植は、イスラエル十二部族の民を新しい宗教の中に置くことになります。だから、「アモリ人の神々」に導き入れることがないように、主にのみ仕えることを約束させたのです。
『24:15 もし主に仕えたくないというならば、川の向こう側にいたあなたたちの先祖が仕えていた神々でも、あるいは今、あなたたちが住んでいる土地のアモリ人の神々でも、仕えたいと思うものを、今日、自分で選びなさい。ただし、わたしとわたしの家は主に仕えます。」』
新しい土地に入植した民は、大きな危機に直面することになりました。その土地の神である「バアル」に対するヤハウェの戦いを第一にすべきです。ヨシュアの言う家とは、ヨセフの家です。つまりヨセフの子であるエフライム族とマナセ族。歴代誌上 7 章のエフライムの系図では、ヨシュアの名前は家系の最後にあります。(ヤコブから祝福を受けたのはヨセフなので、ヨセフの家がイスラエルの象徴と言えます)