使徒24:1-27

パウロ訴えられる

  

  1.パウロ訴えられる

 パウロは、総督フェリクスのところに保護されましたが、大祭司アナニアがフェリクスにパウロのことを訴えたので、パウロは引き出されました。千人隊長が理解した通り、パウロには法を破ったなどと言うことはありませんでしたが、大祭司たち訴える者には、「総督に訴えるように」と伝えていました。こうなると、訴える口実がなくても、訴え出なければ面目が立たなかったのでしょう。そしてその訴えたるや、『世界中のユダヤ人の間に騒動を引き起こしている者、『ナザレ人の分派』の主謀者であります。』といった風評でありました。そして、『この男は神殿さえも汚そうとしましたので逮捕いたしました。』と、やってもいないことであり、そして、「神殿を汚そうとしていた」ということが何の裏付けもないまま訴えるものでした。どちらの訴えも、何か犯罪を犯したとか、犯罪を犯すためと分かるような具体的な準備をしていた、もしくは犯行をするとの予告をしていたということでもありません。訴えに値しないことでも弁護士は、依頼者のために誠実に仕事をするものですが、ここまで訴えるための状況証拠さえないのでは、裁判を維持できるものではありません。しかし、政治的には総督側も大祭司側も、お互いにこの出来事を利用しようとすれば、却下することも取り下げすることもなく、形式上裁判は続けられることになります。

 

2.パウロの弁明

 総督フェリクスは、訴えの内容が不明確であるにもかかわらず、そのままパウロに弁明をさせます。フェリクスの妻は、ユダヤ人でこのパウロの一派の教えと、伝統的な教えを重んじるユダヤ人との間に起きていた事情をある程度知っていたし、ローマ法でもユダヤの自治の習慣上もあり得ない訴えをこれ以上聞く必要はないと思ったのでしょう。

 パウロは、さっそくエルサレムに来て12日しかたっていないこと、どこでも騒ぎを起こしたことはないことを説明し、訴えに当たる事実も証拠もないことを訴えます。ただ、「死者の復活について、(最高法院に)訴えられているのだ」と叫んだだけだと弁明します。しかし、その前にパウロは千人隊長の前で、群衆に弁明をしたときに「神様から異邦人を伝道するように命令された」旨を話し、その結果大騒ぎになっています。とは、言いながら暴動を起こしているのはユダヤの民であり、パウロの弁明したことには、何も罪が認められません。そこで、フェリクスは、パウロにも大祭司側にも味方をすることなく、千人隊長から事情を聴くこととして、その場を閉じます。ただの時間稼ぎですが、この場で罪らしいものが見当たらないパウロを裁くことは憚れますし、かと言って大祭司の訴えを却下したのでは騒ぎがますます激しくなると考えたのでしょう。

 

3.パウロ監禁される

 結局、大祭司たちを返して、そしてパウロは形だけ監禁されました。パウロが監禁されたことで、大祭司たちの怒りはある程度収まったのだと思われます。そういう理由で、フェリクスは、再び裁判を開くことはありませんでした。この時代の事ですから、お金を持ってきた方に味方するつもりだったのかもしれません。それで、フェリクスはパウロに時々会ったのですが、パウロはイエス様の教えを語りました。フェリクスは、その教えに導かれることなく、パウロを監禁し続けるのでした。それにしても、パウロは、誰にでもどこでも大胆に伝道をしたことがわかります。