使徒19:1-20

エフェソで

  

 パウロの第三回伝道旅行は、いきなりアジア州最大の都市エフェソで使徒言行録の記事は始まります。明らかに、エフェソでの伝道が目的です。町が大きいだけではなく、エフェソはアルテミス神殿がある異教の中心地だからです。パウロは、第二次伝道旅行の時の帰りにこのエフェソに来ています。しかし、過ぎ越しの祭りまでにエルサレムに上ろうとして、あまり滞在していないようです。そのかわり、コリントから同行してきたアキラとプリスキラがエフェソで伝道をして、アレクサンドリア生まれのアポロを見出し、コリントに送り込みました。アポロは、エフェソでイエス様のことを伝道していましたが、「聖霊によるバプテスマ」について、知りませんでした。これを知ったアキラとプリスキラは、神の教えをアポロに教えます。そのエフェソで伝道していたアポロをコリントに送り出したので、エフェソにいるキリスト者には、「聖霊によるバプテスマ」が浸透していなかったと思われます。


1.エフェソで

 パウロがエフェソにつくと、「信仰に入った時に聖霊を受けましたか?」と兄弟たちに聞きます。たぶん、アキラとプリスキラから、エフェソで伝道に励んでいたアポロのことを聞いたからでしょう。アポロが知らないならば、エフェソの信徒が知る由もなかったと思われます。やはり、アポロと同じように「バプテスマのヨハネの悔い改めのバプテスマ」しか知りません。

 パウロは、言います。「ヨハネは、自分の後から来る方、つまりイエスを信じるようにと、民に告げて、悔い改めの洗礼を授けたのです。」

 こうして兄弟たちは、イエス様の名によるバプテスマを受けることになったのです。そして、聖霊降臨日の出来事のように、パウロがこの12人の頭に手を置くと聖霊が降ってきて、それぞれが異言を語ったり預言をしだしたりしました。これで、エフェソが本格的な伝道拠点となったと言えます。

 しかし、パウロが教えてもかたくなに信じようとしない人々がいました。それだけではなく、非難をするものですから、パウロはその人々から離れます。かたくなだったのは、ユダヤ教の本流の人たちなのだと思われます。キリストを信じる者の群れは、集会場所を替えて2年。妨害を受けずに済んだので伝道が順調に進み、ユダヤ人もギリシャ人も パウロが教える主の言葉を聞くようになります。このように、ユダヤ教とキリスト教は、徐々に教会単位で別れたものと思われます。


2.ユダヤ人の祈祷師たち

パウロは、多くの癒しや悪霊の追い出しによって、目覚ましく伝道成果を上げていました。聖霊が働いていたからです。

それを真似しようとしたユダヤ人の祈祷師がいます。エフェソは、そういう祈祷師がいる街です。なぜなら エフェソにはアルテミスの神殿があって、多くの参拝客が集まり、病気の癒しや商売繁盛を願う者が競って魔術を求めていたからです。エフェソは異教的迷信、魔術の中心地でしたので、ユダヤ人の祈祷師たちもエフェソに集まってきていたのです。パウロの癒しの業を見て、その祈祷師たちが金儲けのために、イエスやパウロの名前を使って、癒しを行おうとしたわけです。しかし、そこには聖霊は働きません。当然ながら失敗します。

『イエスのことは知っている。パウロのこともよく知っている。だが、いったいお前たちは何者だ。』と言われた挙句に、ひどい目にあってしまいます。

そんなエピソードもあって、エフェソでの「イエス様」の名声は大いにあがります。そして、悪を行っていたものは、そのことを告白しました。また、魔術で金儲けしていた人々は、その魔術の教科書を捨てます。そうして、イエス様を信じる者の群れに入っていったのでしょう。パウロのエフェソでの伝道は、ますます勢いがついていき、「主の言葉」は広がりました。