使徒16:16-24

パウロたち牢に入れれる

 

1.フィリピでの伝道


 フィリピでは、紫布を商うリディアと言う名の婦人の協力が得られ、伝道が開始されました。基本的に異邦人の町ですからイスラエルの民族よりも、ローマ、ギリシャ系の人々が多いわけです。また、ローマ市民からみて、この伝道活動は受けいれにくかったと言えるでしょう。実際に、こんな言葉をもってパウロたちは役人に引き渡されました。

『「この者たちはユダヤ人で、わたしたちの町を混乱させております。16:21 ローマ帝国の市民であるわたしたちが受け入れることも、実行することも許されない風習を宣伝しております。」1』

まず、人種としてユダヤ人なので、ギリシャとは異質の者達であること。多神教の地域に一神教を持ち込んだこと。人は全て罪人であると言う事。そして、死んだ者が復活すると言ったことなどでしょう。そして、十字架につけられ処刑されたイエス様が神様であると、伝道して回ったことが、このように言われる原因であります。これらのことは、聞き流すとか、見逃してあげるとかで済むことではなかったようです。まずユダヤ人であることは、ローマ市民と対等ではないと言う意味ですが、そのユダヤ人がローマ市民に教えようとすること自体が、心よく受け入れられないでしょう。そして私の神は唯一の神だと信じている分には害はありませんが、あなた方が礼拝しているのは神ではなく、偶像だと言ったのでは、反発を買うにきまっています。そして、犯罪の覚えもない一般市民に対しても罪人であると言い、死人が復活したと証しするわけです。しまいには、ローマの法に基づいて死刑になった者が救い主だったなどとまで聞けば、何を言っているのか訳が分からないというのも、言い過ぎではないと思われます。パウロたちが、もし群衆の心をとらえていたならば、群集自らが味方してくれるはずですが、そのような状態ではありませんでした。

  

そして、どういうわけか占の霊に取りつかれた、女奴隷に出会ってしまいます。たぶん、真の神、唯一の神でない 女奴隷に取りついた霊は、パウロたちが邪魔だったのでしょう。

『「この人たちは、いと高き神の僕で、皆さんに救いの道を宣べ伝えているのです。」』

このように、女奴隷に言わせて、パウロたちの伝道を邪魔して回りました。そして、この女奴隷の主人たちも共謀して、職場放棄を黙認していたものと思われます。なぜなら、占いを当てる 女に取りついた霊が ニセ者であり、「神は唯一でユダヤの神の一人しかいない」と言って回られたら、商売にならないからです。

 


2.パウロたち牢に入れられる

 

  この霊に取りつかれた女奴隷が幾日もこんなことを繰り返すので、パウロは、

『「イエス・キリストの名によって命じる。この女から出て行け。」』 と言って、占いの霊を女奴隷から追い出してしまいました。

 

 ふつうの癒しであれば、これで「めでたし」ということになります。しかし、この女奴隷に占いをする能力が無くなった事を知った主人たちは、今までの伝道妨害では気が済まずに、パウロたちを捕まえて役人に引き渡してしまいます。

 

実際に、女奴隷の占いによる収入がなくなる被害の賠償ではなく、罰を与えることが目的だと思われます。役人に引き渡したとき、死刑になるように利益が損なわれたことを訴えずに、「反乱罪に当たる」ことをした と訴えました。これは、かなり確信的であります。たぶん、パウロたちはこの主人たちの商売の邪魔で目障りだったのだと思われます。ですから、この占いの霊の追い出しが無かったとしても、いずれは同じように女奴隷の主人たちから訴えられたと考えて良さそうです。

 

役人側は、パウロたちの言い分を聞くことも無く、むちを打ち込みます。反乱罪は最も重い罪の一つです。その疑いがかけられるだけでも、充分にむち打ち以上の刑になって当然だったと思われます。そもそも、ユダヤ人がギリシャのマケドニア地方の町に来て、ギリシャ人が一般的に知らない宗教であるユダヤ教、そしてその中の新しいグループの教えを伝道し始めているわけですから、役人としても放っておける問題ではありません。また、訴えられたことを正しく調べて、反乱罪であれば確実に裁き、そして確実に見せしめの上死刑にしなければなりません。そういう事情もあり、逃げられないようにむち打ちで体力を奪い、そして牢屋の一番奥に入れ、そして足かせをかけ、看守によって厳重に監視をするわけです。