マタイ28:1-15

 行く手に立つイエス様 

1.二人のマリア

  マグダラのマリア、と小ヤコブ(12弟子)の母マリア(マタイ27:56)が、マタイではこの場面に登場します。ヨハネ20:11-18の学びの時も触れましたが、当時、女性が先生の弟子になって学ぶという事はありませんでした。しかし、イエス様は多くの婦人を弟子にしていました。マグダラのマリアは、その中でも一番の弟子のようです。ほかに、ゼベダイの息子たち(大ヤコブ、ヨセフ)の母や、マリア・サロメ、ベタニヤ村のマリア(マルタの妹)などがイエス様の弟子と考えられます。

 なぜ、二人は明け方に墓に行ったのかと言いますと、葬りの準備をする間もなく、過ぎ越しの祭りの日がきてしまったからです。彼女らは過ぎ越しの日の安息日を休んで、日曜の夜明けを待って香油などの葬りの準備をしに行ったわけです。この準備をすると言うことは、やはり一番近い人であったのだと思います。

 

2.天使

 お墓には、石の蓋があって、さらに番兵が付いていました。これは、「イエス様の仲間が遺体を盗んでから、『イエス様が復活した』と言う」ことを防ぐためです。石の蓋は、円盤状で立てて転がすようになっていましたが、大変重いので簡単に動かせるようなものではありません。

しかし、「天使が降ってきて、石を転がして石の上に座った」と記されています。その時に地震が起こったのでしょう。そして、天使はこう言います。『あの方は死者の中から復活された。そして、あなたがたより先にガリラヤに行かれる。そこでお目にかかれる。』

 

3.行く手に立つイエス様

 天使の言葉を聞いた婦人たちは、急いで戻って弟子たちにこの天使の言葉を伝えようと、駆け出しました。すると、行く手にイエス様が立っていたのです。そして「おはよう」と声を掛けます。(ギリシャ語聖書には、「言った」、または「挨拶を言った」としかありません。挨拶をたのだろうと思われますので、「おはよう」か「シャーローム平安があるように)」等でしょう。 参考までに、英語の聖書では、greetings,said greetings, saying, greeted,  said, "Peace be with you."  ,said Rejoice それぞれの訳になっていますが、ここはやはり「声を掛けた」ことによって、次の場面が生きるのだと思われます。

 婦人たちは、「イエス様の足を抱き、その前にひれ伏した」ということですので、幽霊か言った疑いはまったく持っていなかった様子です。「足を抱き」というところで、復活されたことへの驚きと喜びが感じられると思います。そして、しばらくして、その出来事への恐れを感じたのでしょう。イエス様の前にひれ伏しました。イエス様は、「恐れることはない。行って、わたしの兄弟たちにガリラヤへ行くように言いなさい。そこでわたしに会うことになる。」と言われました。このあと、イエス様はその場から消えたのでしょうか?婦人たちがイエス様を置いて、弟子たちのところへ急いだのでしょうか?聖書には書かれていません。

4.番兵たち

 その場には、もっと驚いて身の危険を感じた人たちが居ました。それは祭司長たちがつけた番兵たちです。はたして、番兵らの見たことが信じてもらえるかも不安だったでしょう。すぐに報告しなければ、かえって怪しまれますし、婦人たちが先に第一報を入れてしまっては、番兵として失格だからです。

 番兵たちは、だれとも戦ってもいませんし、墓に遺体が無いのも事実です。ですから、「イエス様の仲間と戦わずに、遺体を引き渡した」と誤解されては大変です。ですから、番兵たちはありのままを報告するしかなかったのです。

5.祭司長たち

 番兵たちの報告を受けた祭司長たちは、長老たちと相談します。彼らは、遺体を取り戻すことや、婦人たちの口を封じることを考えたのでしょう。しかし、その時は、すでにイエス様が復活したことを、番兵たちは天使から聞いています。そして、婦人たちは祭司長たちがこの報告を受けている間に、すでに人々にこの話をしているでしょう。番兵を付けた経緯も、マタイ27:62-66(下を参照)の通りです。ですから、番兵さえ黙っていれば「盗まれた」ことに出来ると、考えたのです。だから、番兵には、お金を渡して「戦って負けた」ように、見せかけたのです。

◆番兵、墓を見張る
27:62 明くる日、すなわち、準備の日の翌日、祭司長たちとファリサイ派の人々は、ピラトのところに集まって、27:63 こう言った。「閣下、人を惑わすあの者がまだ生きていたとき、『自分は三日後に復活する』と言っていたのを、わたしたちは思い出しました。27:64 ですから、三日目まで墓を見張るように命令してください。そうでないと、弟子たちが来て死体を盗み出し、『イエスは死者の中から復活した』などと民衆に言いふらすかもしれません。そうなると、人々は前よりもひどく惑わされることになります。」27:65 ピラトは言った。「あなたたちには、番兵がいるはずだ。行って、しっかりと見張らせるがよい。」27:66 そこで、彼らは行って墓の石に封印をし、番兵をおいた。