エズラ記6:13-22

神殿の完成


紀元前520年に神殿建設が再開しました。そのときのダレイオス王とは、キュロスの孫ダレイオス1世(在位BC521-486)です。紀元前537年にキュロスの命令が出てから17年もたっているわけです。そして、紀元前515年に神殿が完成します。また、歴史上のアルタクセルクセスとは、アルタクセルクセス1世のことで、ダレイオス1世の子です。しかし、聖書では、キュロスの命令を無視して、神殿建築中止命令を出した2代目の王となっています。 2代目のペルシャ帝国の王はカンビュセス2世(在位BC529年頃 - 522年)なので、史実と聖書は一致しません。


1.神殿建設の再開

 キュロスの命令は、この地のユダとベンジャミンの民と対抗する住民によって骨抜きにされます。

『4:4 そこで、その地の住民は、建築に取りかかろうとするユダの民の士気を鈍らせ脅かす一方、4:5 ペルシアの王キュロスの存命中からダレイオスの治世まで、参議官を買収して建築計画を挫折させようとした。』

 そして、さらに王に向けて告訴したのです。

『4:12 王のもとからこちらに上って来たユダの者らがエルサレムに着き、反逆と悪意の都を再建していることをご存じでしょうか。彼らは既に城壁の工事を始め、基礎を修復しました。』

 結果、工事は中断です。

『4:21 従って今、その人々に工事を中止するように命令せよ。改めてわたしが命令を出すまで、その都は再建されてはならない。4:22 この事をなおざりにしないように留意し、損失が大きくなって、王になおいっそうの迷惑が及ばぬようにせよ。」4:23 このアルタクセルクセス王の公文書の写しは、レフム、書記官シムシャイおよびその仲間の前で朗読された。彼らはエルサレムにいるユダの人々のもとに急いで行き、強引に武力で工事を中止させた。』

 神殿建設は中断されましたが、ダレイオスの時代に入って、勝手に再開します。

すると、その地方の長官は尋ねます。

『この神殿を建て、その飾りつけを仕上げよ、と誰がお前たちに命令したのか』

そこで、キュロスの命令であったことの説明を受けると、長官はダレイオスに確認します。その結果、ダレイオス王は、キュロス王の覚書を探し出したので、キュロスの神殿建築命令が事実であり、今でも有効であることを確認し、命令します。

『6:6 「それゆえ、ユーフラテス西方の長官タテナイとシェタル・ボゼナイ、およびその仲間であるユーフラテス西方の巡察官たちは干渉をやめ、6:7 その神殿の工事をさせることにせよ。ユダの長官と長老たちは、かつて神殿があった場所にその神殿を再建しなければならない。』

 エルサレムの神殿の再建は、キュロスの命令ではありましたが、それはキュロスに神様が命令したものであり、同じように預言者やユダヤの民は、神様の命令によって、動かされたのです。


2.神殿の完成

 アダルの月(12月)に完成しますから、ニサンの月(1月)の14日に過ぎ越しの祭りが控えています。まず、神殿を奉献するために、雄牛百頭、雄羊二百匹、小羊四百匹をささげました。また、全イスラエルのために贖罪の献げ物としてイスラエルの部族の数に従って雄山羊十二匹をささげます。

 モーセの書とは、モーセ五書(トーラー)のことです。その中にこのような記事があります。

民『3:5 主はモーセに仰せになった。3:6 レビ族を前に進ませ、祭司アロンの前に立たせ、彼に仕えさせなさい。3:7 彼らはアロンと共同体のために臨在の幕屋を警護し、幕屋の仕事をする。3:8 すなわち、臨在の幕屋にあるすべての祭具を守り、イスラエルの人々のために幕屋を守り、幕屋の仕事をする。3:9 あなたはレビ人をアロンとその子らに属する者とせよ。彼らはイスラエルの人々の中からアロンに属する者とされている。』

また具体的には、ダビデがアロンの子孫の祭司を24組に組み分けをしています。(歴代史上24章)仕事の分担と、組み分けによって、生贄を捧げに来る人々を受け入れる体制を作ったと言えます。

 過ぎ越しの祭りについて、ヨシア王のときに復活(王23:23)とされていますが、それ以降の記事ではこのエズラ記にしか記載がありません。このときに、再度復活させたと思われます。除酵祭は、過ぎ越しと同時に始まるので、これもモーセの書に従って復活させたものと思われます。というのは、モーセの書(律法)は神殿が完成したころに編集が終わっているからです。ネヘミヤの8章には、会衆に披露されている様子が書かれていますが、そもそものモーセの命令が忘れられていて、律法をもとに犠牲の捧げ方、祭司の編成や仮庵の祭りから始まって、過ぎ越しの祭りと除酵祭も、復活できたのではないかと考えられます。バビロンに捕囚されて戻ってきたイスラエルの民は、異教の国である捕囚先でこのような祭りを大規模にできるわけでもありません。祭りの復活によって、すべてのイスラエル人が過ぎ越しの食事に与ります。

こうして神様はイスラエル民族のアイデンティティー(私は、何者であるか?)を取り戻します。神様は、敵国であるアッシリア(アケメネス朝ペルシャ+エジプト)を活用されたのです。