使徒21:1-16

エルサレムへ

エフェソ:Ephesus

ミレトス:Miletus

パタラ:Patara

コス島:COS

ロードス島:RHODES

キプロス島:CYPRUS

ティルス:Tyre(英)【テュロス:Tyros(希)】

プトレマイオス:Ptolemaiss

カイサリア:Caesarea

エルサレム:Jerusalem

   ミレトスの町でエフェソの長老と別れを告げたパウロは、海路でフェニキア(ティルス)に向かいます。パウロにはすでに、聖霊から投獄と苦難が告げられていました。それでもパウロはエルサレムに行くことが使命と考え、エルサレムに向かっていたのです。

 

1.パウロが迫害される背景

 当時のイスラエルには、ヘブライ語を話すユダヤ人と、外国で生まれ育ったユダヤ人がいました。第四代ローマ皇帝クラウディウスがローマからユダヤ人を追放した(使徒18:2)ので、ローマ中にいたユダヤ人は、帰ってきていました。このことから、ヘブライ語を話すユダヤ人であるヘブライイストと、外国語を話すユダヤ人であるヘレニストの間には、問題が発生していました。それは、ユダヤの習慣についてです。外国で暮らしてきたユダヤ人たちは、伝統的な習慣を守ることや守らせることにあまり熱心ではなかったのです。また、外国人への伝道には熱心でした。ユダヤ人は、ユダヤ教を信じてユダヤの習慣に従えば、仲間と認める伝統がありますので、この問題は、言葉や人種によってできたものではありません。しかも根深く、キリスト教の活動が始まった当初から、外国語を話すユダヤ人は、配給がいきわたらないなどの問題がありました。その対策として7人の執事が立てられましたが、7人とも外国語を話すユダヤ人でした。そして、その代表的な人物であるステファノは石打の刑にかけられて死んでしまいます。こうして、外国語を話すユダヤ人たちはエルサレムを離れ、シリアやサマリヤに脱出して伝道を続けるのです。そのとき、12使徒はエルサレムにいて安泰でした。迫害の対象ではなかったのです。同じ、グループとは思えないほど、外国語を話す信徒は差別され迫害の対象となっていたのです。エルサレムに残った使徒たちは、一貫して伝統的慣習を重視していました。一度は、異邦人の無割礼など認めていましたが、途中から一緒に食事をすることも避けるようになりました。そして、パウロらが伝道する先々で、伝統的習慣に従うように教えていきました。一方で、各国にいるユダヤ(教の)人たちは、パウロらが作った群れを迫害しました。

 

2.エルサレムに

 パウロは、たびたび迫害について告げられてきました。弟子たちも聖霊から告げられて、エルサレムに行かないように言います。また福音宣教家フィリポ(7人の執事の一人)のところによった時などは、パウロの帯をとられて、『エルサレムでユダヤ人は、この帯の持ち主をこのように縛って異邦人の手に引き渡す。』とまで、預言されてしまいます。するとそこにいたみんなが、エルサレムに行かないようにパウロを説得しますが、パウロは、

「縛られることばかりか死ぬことさえも、わたしは覚悟しているのです。」と答えます。

パウロの覚悟は固いので、『わたしたちは、「主の御心が行われますように」と言って、口をつぐんだ。』

ルカ等の同行者は、このように祈るしかなかったのです。