１．公生涯の始まり

　イエス様は、ヨハネからバプテスマを受けました。そのとき、

『天が開け、3:22 聖霊が鳩のように目に見える姿でイエスの上に降って来た。』

この時から、聖霊はイエス様と共にあったわけです。そして、

『「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が、天から聞こえた。』

ルカは、この時から「神の子としての公生涯」が始まったことを宣言します。

　イエス様が宣教を始めたのが、およそ30歳の時とされています。イエス様の十字架がAD30年とされていますから、イエス様が伝道をしていた期間は、さほど長くはありません。そして、ルカは明らかに「イエス様はヨセフの子ではない」と言う趣旨でしょう「イエスはヨセフの子と思われていた」と書いています。それでも、家系をたどる意味を問えば、ダビデの末であることが預言通りであることが、イエス様が救い主であるとの証拠だと言いたかったのだと思われます。

注）アダムからイエス様まで約75代ですから、1代30年と長めに仮定しても、アダムがBC2250年くらい。聖書をベースに時代を考えると、アダムがBC4000年くらいになりますから、皆さん長生きだったと言うよりは、さほど古くない物語であると考えた方が合理的であります。記憶として残っている歴史は、BC2100年くらいのアブラハムあたりからと思われます。しかし、歴史的な裏付が可能となってくるのはBC1000年くらいのダビデの時代です。（古代ヘブライ語が浸透したため）　ですから、ダビデより前の聖書の記事は、言い伝えが主で、宗教観によるバイアスが効いているものと思われます。＊＊＊

２．誘惑を受ける

　ルカは、『1:3 そこで、敬愛するテオフィロさま、わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、順序正しく書いてあなたに献呈するのがよいと思いました。』と書いています。しかし、この部分の順序は、正しいのでしょうか？

「生まれた経緯　少年時代　ヨハネによるバプテスマ　聖霊が降る　宣教を始める　系図　悪魔の誘惑」

系図について、順序から言うと、マタイのように一番最初となるはずですが、「ルカはヨセフの子と思われていた」と書いている通りに、血のつながりではない家の正当性としています。イエス様が神の御子として正当性を主張するには、生まれた経緯と聖霊が降った場面が大事です。一方悪魔の誘惑は、さらに訓練を受けて世に出たことであれば、正当性を主張するものではないとも考えられます。しかし、霊にあふれ、なみなみならない知恵を持つイエス様であったことを理解するうえで大事な記事であると思われます。

　イエス様は聖霊に満ちていました。そして”霊”によって引き回されました。聖霊の霊と”霊”は同じ言語です。聖霊は聖い霊と文字そのものですが、”霊”は、風、呼吸、精神を表します。しかし、ここでは定冠詞付きの”霊”なので、聖霊が荒れ野の中を40日間引き回したことになります。ですから、悪魔が出てきますが、それは聖霊によって出された悪魔であります。いわば、本格的伝道に出る前の、最終試験だったと言えますし、このときすでに神の御子としての資質が認められたことを言い表しているものです。

・「神の子なら、この石にパンになるように命じたらどうだ。」

・「この国々の一切の権力と繁栄とを与えよう。それはわたしに任されていて、これと思う人に与えることができるからだ。4:7 だから、もしわたしを拝むなら、みんなあなたのものになる。

・「神の子なら、ここから飛び降りたらどうだ。4:10 というのは、こう書いてあるからだ。『神はあなたのために天使たちに命じて、／あなたをしっかり守らせる。』4:11 また、／『あなたの足が石に打ち当たることのないように、／天使たちは手であなたを支える。』」

　どの悪魔の問いも、人間の欲（食欲、権威欲、信頼の証拠を確かめたい心情）にかかわることです。特に三番目の誘惑は、神様を信頼する聖書の記事を根拠に、神様を疑うこと、そして神様を試すことを勧めています。これらすべての悪魔の誘惑に対し、イエス様は毅然と聖書の言葉を用いて拒否しました。

・神様の言葉は私たちの剣であり、その言葉への信仰は私たちの盾です。神様はご自分の民を養う多くの方法をお持ちであるので、パンを餌にする悪魔の言葉に乗ってはいけないのです。

・私たちは神様を崇拝し、その奉仕による富、名誉、幸福を求めるべきです。キリスト者は、富を餌にするような悪魔は崇拝するわけがありません。

・神様の保護に対するイエス様の信頼を根拠に、イエス様自身を殺すように悪魔は誘惑しました。悪魔や人間による聖書の乱用で、神様を信頼する心を揺るがせた上に、「本当に守られるかどうか試してみなさい」と、イエス様に神様を試すよう唆したのです。神様を試そうというのは、何者だとうぬぼれているのでしょうか？