ヨハネ16:25-33

しかし、勇気を出しなさい

  

1.平和を得るため

 「これらのこと」とはどんなことでしょうか。それは、最期の晩餐のときイスカリオテのユダが去って行った(ヨハネ13:30)後で、イエス様が残った11人の弟子たちに語られたことすべてです。

◆新しい掟◆ペトロの離反を予告する◆イエスは父に至る道◆聖霊を与える約束◆イエスはまことのぶどうの木◆迫害の予告◆聖霊の働き◆悲しみが喜びに変わる

 『16:33 これらのことを話したのは、あなたがたがわたしによって平和を得るためである。』

 イエス様は「これらのこと」の多くをたとえで話しました。しかし、弟子たちにはその意味がよくわかりませんでした。彼らは悲しみでいっぱいだったからです。彼らにとって必要だったのは説明ではなく励ましでした。それで、これらの最後に「悲しみは喜びに変わる」ことを話しました。

『もはやたとえによらず、はっきり父について知らせる時が来る。16:26 その日には、あなたがたはわたしの名によって願うことになる。わたしがあなたがたのために父に願ってあげる、とは言わない。』

「その日」とは、聖霊が降った日、ペンテコステのことです。それまではイエス様の名によって祈ることはありませんでした。なぜなら、イエス様が彼らとともにおられたからです。ともにいて彼らの必要をすべて満たしてくださいました。しかし、その日には、約束の聖霊が降った後は、イエス様の名によって祈るようになります。その日には、イエス様が神様と共に天にいるからです。そして、「父御自身があなたがたを愛しておられる」から、イエス様が父なる神様に願わなくても、イエス様を信じる弟子の祈りをきいてくださるのです。弟子たちの信仰は、この数時間後にはイエス様を裏切って逃げてしまうような弱さでした。それにもかかわらずイエス様は、信仰を認めてくださいました。神様は、人の弱さを十分知っていながら、それでも愛してくださるのです。イエス様が神様のもとから来たことを信じたからです。

 『16:28 わたしは父のもとから出て、世に来たが、今、世を去って、父のもとに行く。」16:29 弟子たちは言った。「今は、はっきりとお話しになり、少しもたとえを用いられません。16:30 あなたが何でもご存じで、だれもお尋ねする必要のないことが、今、分かりました。これによって、あなたが神のもとから来られたと、わたしたちは信じます。」』

 弟子たちは、イエス様が何を言っているのかわかりませんでした。しかし、イエス様がはっきりと父のもとから出てこの世に来たこと、そして再びこの世を去って、父のもとに行くと言った時、分かりました。それで、「あなたが神から来られたことを信じます。」と告白したのです。

 弟子たちは、イエス様が神の子、救い主であると信じました。しかし、イエス様は「今ようやく、信じるようになったのか。」と言います。弟子たちの信仰は弱いのです。この後、どんなことが起こるのかをイエス様は知ってました。

 弟子たちが散らされてイエス様が一人になる。その時が来ていました。その時とは、イエス様が十字架に付けられる時です。イエス様は父なる神、まことの神に信頼していました。ですから、すべての人に裏切られたとしても孤独ではありませんでした。父がともにおられたからです。

2.勇気を出しなさい 

『16:33b世にあっては苦難があります。しかし、勇気を出しなさい。』

 この後、弟子たちは、迫害を受けることになります。「しかし、勇気を出しなさい。」とあります。イエス様は、私たちが「しかし」と言わなければならない現実があることをよく知った上で、勇気を出しなさいと言いました。これは、イエス様が十字架につけられる前の晩に弟子たちに言った言葉です。イエス様は、この言葉の翌日に十字架につけられて、死にます。その時弟子たちは、みんな怖くなって逃げて行きました。イエス様について行く勇気がなかったのです。みんな逃げて行ってしまったので、イエス様はたった一人で十字架への道を歩んで行かなければなりませんでした。でも、実は一人ではありませんでした。弟子たちがみんな逃げて行き自分一人が残されましたが、そこに父なる神がともにおられたので一人ではなかったのです。

3.世に勝っている

『16:33cわたしは既に世に勝っている。』

 どうしてイエス様が一緒にいるなら、苦難があっても平和なのでしょうか。イエス様は、私たちの弱さをよくご存じです。でも、私たちが苦難に遭うとき、そこから逃げなさいとは言いませんでした。むしろ、勇気を出しなさいと言います。なぜなら、イエス様はすでに世に勝っているからです。

 イエス様は、十字架で死んで私たちの罪を贖ってくださっただけでなく、三日目にその死の中からよみがえりました。十字架での死は、一見すると惨めな敗北のようです。しかし、イエス様は、その死からよみがったことで、この世を支配しているサタンを完全に打ち破ったのです。

Ⅰヨハネ『5:4 神から生まれた人は皆、世に打ち勝つからです。世に打ち勝つ勝利、それはわたしたちの信仰です。5:5 だれが世に打ち勝つか。イエスが神の子であると信じる者ではありませんか。』

黙示録『12:11 兄弟たちは、小羊の血と/自分たちの証しの言葉とで、/彼に打ち勝った。彼らは、死に至るまで命を惜しまなかった。』