１．ラザロを起こしに行く

　ラザロの住んでいたベタニアは、エルサレムから１５スタディオン（185ｍ×15＝2,775ｍ）です。イエス様は、ユダヤで受け入れられなくて、命を狙われていることから、一時ユダヤから離れていました。多分、ガリラヤだと思われます。そこに、ラザロが病気だとの連絡が入ります。すぐ行ってあげたいのですが、ユダヤ（エルサレム）に近いベタニアに行くのは危険です。2日間そこにとどまったのち、ユダヤに行く決心をしました。もちろん、危険な旅となるはずでした。

『11:5 イエスは、マルタとその姉妹とラザロを愛しておられた。11:6 ラザロが病気だと聞いてからも、なお二日間同じ所に滞在された。11:7 それから、弟子たちに言われた。「もう一度、ユダヤに行こう。」11:8 弟子たちは言った。「ラビ、ユダヤ人たちがついこの間もあなたを石で打ち殺そうとしたのに、またそこへ行かれるのですか。」11:9 イエスはお答えになった。「昼間は十二時間あるではないか。昼のうちに歩けば、つまずくことはない。この世の光を見ているからだ。11:10 しかし、夜歩けば、つまずく。その人の内に光がないからである。」11:11 こうお話しになり、また、その後で言われた。「わたしたちの友ラザロが眠っている。しかし、わたしは彼を起こしに行く。」』

　このエルサレムへの旅は、最後のユダヤへの旅となります。ユダヤに行こうとの決心をしたとき、すでにラザロは死んでいたのでしょう。それから４日かけて、ベタニアに到着したのです。死んでしまったラザロを起こすために・・・

２．マルタの信仰告白

　ラザロの姉妹（マルタ、マリア）を慰めるために、また共に悲しむために人々が集まっていました。イエス様はまずマルタと対話しました。マルタは、イエス様が近くまで来ていることを聞いたので、家を飛び出してきたのです。ですから、マリアにそのことを伝えもしないくらい、すぐにイエス様に会いたいと、駆け出してしまったのです。

『11:21 マルタはイエスに言った。「主よ、もしここにいてくださいましたら、わたしの兄弟は死ななかったでしょうに。11:22 しかし、あなたが神にお願いになることは何でも神はかなえてくださると、わたしは今でも承知しています。」』

　ここでのマルタの信仰告白は、たいへん明確なものでした。まずマルタは、イエス様は奇跡を行うことができる、という信仰を告白します。イエス様は病気のラザロを癒すこともできると信じているし、さらには死んだラザロを今でもよみがえらせることができる、だろうと彼女は、その可能性があることを知っています。

『11:23 イエスが、「あなたの兄弟は復活する」と言われると、11:24 マルタは、「終わりの日の復活の時に復活することは存じております」と言った。』

　イエス様は、ラザロは「生き返る」という意味で言ったのですが、マルタは、最後の日に起こる死者の復活のことだと思い、「信じています」ではなく「知っています」と答えました。つまり、マルタはイエス様が病人を癒すことは知っていて、信じているものの、「生き返る」ことは知っていても、強くは信じていなかったと言えるでしょう。一つは、知り方の深さだと思われます。知識として知っていることと、目の前で見て知っていることには、大きな差があるわけです。マルタは、病人を癒すイエス様を見ていますが、死んだ人を生き返らせるところは、見たことがありません。（しかし、この後すぐ見ることになります。）また、最後の日の死者の復活も誰も見たことがないのです。やはり、教えられて知っていることであれば、教えた人を信じている事だけが、根拠であります。経験値はないのです。それで、「知っています」と答えたと言えるでしょう。

『11:25 イエスは言われた。「わたしは復活であり、命である。わたしを信じる者は、死んでも生きる。11:26 生きていてわたしを信じる者はだれも、決して死ぬことはない。このことを信じるか。」』

そして、イエス様の決定的な質問が飛んで来ます。イエス様は、マルタの答えにあわせたのでしょう。地上での命の事ではなく、天の国での永遠の命について、「イエス様を信じる者は、永遠の命を得る」と宣言しました。そして、マルタに「このことを信じるか？」と問うわけです。

『11:27 マルタは言った。「はい、主よ、あなたが世に来られるはずの神の子、メシアであるとわたしは信じております。」』

マルタは、イエス様の栄光をはっきりと見てきました。そして、信じると告白しました。

問いは、①わたしは復活であり、命である。

　　　　②わたしを信じる者は、死んでも生きる。

　　　　③生きていてわたしを信じる者はだれも、決して死ぬことはない。　でした。しかし、

マルタの答えは、①②③とも無回答でした。「イエス様が神の子でメシアである」ことを信じます　とだけです。それでもこれだけで、三つの問いに対して、「信じます」と答えたのと同じことだと言えます。