ダニエル書2:1-24

知恵を持って

  1.ネブカドネザルの王国

 2年目(バビロンでは初年は数えない)ということは、紀元前603年の物語です。ユダの王ヨヤキムは、エジプトに服従していたころです。ネブカドネザルは、メディア王の娘と結婚し、アッシリアを征服したので、エジプトと覇権を争うような立場となっていました。フェニキアまでは新バビロンの領土となっており、ユダ王国は、新バビロンとエジプトに挟まれていて、ユダ王国は緩衝国となってしまっています。そのころ王子としてアッシリアを征服したネブカドネザルが、即位します。その時のユダ王はヨヤキムで、エジプトのファラオであるネコが、エホアハズをエジプトに連行し、傀儡政権を打ち立てヨヤキムを王としていました。

 ネブカドネザルの心配事と言えば、このエジプト情勢です。ユダ王国もどちらにつくかで揺れていました。

2.夢解き

 この当時、夢を通して神様は人間に語りかけると考えられていました。ですから、ネブカドネザル王も夢を見ると、心が騒ぎ、眠れなくなりました。さっそく、こういう時のために召し抱えている「占い師」、「祈祷師」、「まじない師」、「賢者」に夢解きをするように命じます。王の心は騒いでいます。よほど強烈な夢を見たのでしょう。ネブカデネザル王はすっかり平安を失ってしまっているようです。「心が落ち着かない。」と王がいうわけですから、何かが起こることが知らされているに違いないということで、賢者たちは「どうぞ僕らにその夢をお話しください。解釈を申し上げます。」と請け負いました。

 ところが、王は「わたしの見た夢を言い当て、その解釈をしてくれなければ、お前たちの体を八つ裂きにし、お前たちの家も打ち壊す。2:6 しかし、もしわたしの見た夢を言い当て、正しく解釈してくれれば、ほうびとして贈り物と大いなる名誉を授けよう。」と、夢そのものを教えてくれないのです。

 賢者たちは、再び「王様、どうぞその夢をお聞かせください。僕らはその解釈をいたしましょう。」と、当然夢の説明があるものと思い、聞かせていただくようにお願いします。

 すると、王は「時間稼ぎ」と判断しました。王の見た夢について、予想ができていたり、その手掛かりを持っていないことを見抜いたのでしょう。王は、それで「夢を話してみよ」と命令をしたのです。しかし、賢者たちは、答えることができませんので、「そのようなことがわかるのは神のみだ」と言います。すると、「王は激しく怒り、憤慨し、バビロンの知者を皆殺しにするよう命令した。」

 王は、絶大な権限を持っていますので、賢人たちにとっては災難でしかありません。しかし、王の立場から言えば、2つリスクがあったのです。①夢を聞かせたら、死にたくない賢者は嘘でもついて夢解きをするだろう。②夢解きが正しいのか、間違っているのかを確認する方法がない。この2つを解決する方法を王は見つけました。夢そのものを言い当てる者であれば、その夢解きも信じられるだろう!・・・と

 バビロンの賢人たちも必死で食い下がっていますが、聞き入れられません。王は、「バビロンの知者を皆殺しにするよう命令した。」わけです。 困ったことに、ダニエルと仲間は「知者」として位置づけられていました。そして、ダニエルにやって来たのは、王の侍従長アルヨクでした。目的はもちろん、バビロンの知者たちを殺すためです。彼が訪ねて来た時、ダニエルは知恵と思慮とをもって応待しています。

ダニエルは落ち着いて、冷静に対応しました。「どうして王様はこのような厳しい命令を出されたのですか。」

と聞いてみると侍従長は、教えてくれました。するとダニエルは、王のところに行きます。これ以上知者が殺されないために、そして侍従長が王の命令に従わなかったなどと言われないようにとの、冷静な対応でした。 ダニエルは許可を得るとすぐ行動に移りました。自宅に戻り、同僚のハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤにこの事を知らせたのです。彼らは「天の神」のあわれみを請います。四人で心を合わせて祈っているのです。

そして、『夜の幻によってその秘密がダニエルに明かされた。』のでした。

「夢」は眠っている時に見るものです。「幻」は起きている時に鮮明に示されるものです。夜、祈っているときに幻で夢が解き明かされた。つまり、神様はダニエルら4人の祈りに対して、鮮明にお答えになったのです。

4人は、神をほめたたえ、感謝の祈りをしました。神様を賛美し終えると、ダニエルはすぐに王の侍従長アルヨクのもとへ行きました。バビロン中の知者たちが滅ぼされる前に、王に報告しなければなりません。ダニエルは、王の前に連れて行ってくれるようにと頼みました。