使徒8:9-25

魔術師シモン

  ここで出てくるフィリポは、使徒たちが立てた執事のひとりです。ステファノが殺されたあとの中心人物だったようです。フィリポは、サマリア伝道に向かいます。本来、シケムはサマリアの中心であって、アブラハム以来のイスラエルと縁のある土地です。しかし、この時代には、北王国が異国の宗教に走った後のことですから、サマリアは同じイスラエル民族であっても、伝道の対象外でした。しかし、ステファノの事件以来、エルサレムから追い出されていたこの信仰の群れは、サマリアやシリヤのダマスコで伝道を開始します。

 

1.魔術師シモン

この魔術師シモンについては、記録などないので、どのような魔術をしたのかはわかりません。魔術を使ったということですが、手品のようにトリックを使って人を驚かしていたのか、本当に不思議な力を持っていたのかだと思います。偉大な人物と 自称しているところが怪しいと思いますが、「この人こそ偉大なものといわれる神の力だ」と人々に言われていました。人々は、その魔術に長い間ひきつけられていたからです。

 そこに、フィリポが伝道にやって来ると、世界が変わってきます。フィリポの伝道によって、しるしと奇跡がおこなわれるようになって、魔術師シモンのことよりもフィリポが注目されました。そして、注目されるばかりか、多くの人々がフィリポによって福音が述べ伝えられ、人々はバプテスマを受けました。そして、魔術師シモンまでもが、そのしるしと奇跡、そして福音によって伝道され、信仰を持ちバプテスマを受けたのです。

 

 

2.ペトロとヨハネ

  エルサレムにいる使徒たちは、サマリアの人々が信仰を受け入れたと聞いて、エルサレム教会の中心になっていたペトロとヨハネが様子を見に行くことになりました。

すると、サマリアの人々はバプテスマを受けていましたが、聖霊によるバプテスマを受けていませんでした。
(この流れから見ると、聖霊によるバプテスマを授けたのは、ペトロとヨハネまたは、限られた人に与えられた権限だと思われます。フィリポのこの後エチオピアの宦官を伝道してバプテスマを授けますが、この時は聖霊の働きかけに応答したものでした。)

人々の上にペトロとヨハネが手を置くことによって、人々は聖霊を受けることが出来ました。

 

すると魔術師シモンが、その力を欲しがります。フィリポが起こすしるしと奇跡が人々を引き付けたように、シモンがこの能力を持つと、昔以上にシモンが尊敬を集めると思ったのだと思います。少なくとも、人々への奉仕を申し入れたのではなく、自分への利益のためにこのような発言をしているのです。

 

『シモンは、使徒たちが手を置くことで、“霊”が与えられるのを見、金を持って来て、8:19 言った。「わたしが手を置けば、だれでも聖霊が受けられるように、わたしにもその力を授けてください。」』

 

ペトロは、シモンを叱りました。とても、神様を信じているための発言と思えなかったからです。悪魔に心を売ってしまっているのでしょうか?神様の力を手に入れて自分のために利用しようとした悪事をおこなおうとしたのです。ペトロは、シモンの心の悪さを指摘したのです。そして、魔術師シモンを切り捨てるのではなく、それでも「祈りなさい」と勧めます。神様は、このような罪深い者を赦してくださるからです。

 

『「この金は、お前と一緒に滅びてしまうがよい。神の賜物を金で手に入れられると思っているからだ。8:21 お前はこのことに何のかかわりもなければ、権利もない。お前の心が神の前に正しくないからだ。8:22 この悪事を悔い改め、主に祈れ。そのような心の思いでも、赦していただけるかもしれないからだ。8:23 お前は腹黒い者であり、悪の縄目に縛られていることが、わたしには分かっている。」』

 

シモンは、ペトロのお勧めを受け入れました。

「おっしゃったことが何一つわたしの身に起こらないように、主に祈ってください。」

 

ペトロとヨハネはサマリアで力強く伝道したので、エルサレムを出て伝道する道筋が出来ました。