マルコ16:1-8

  約束のことば

 申命記『21:22 ある人が死刑に当たる罪を犯して処刑され、あなたがその人を木にかけるならば、21:23 死体を木にかけたまま夜を過ごすことなく、必ずその日のうちに埋めねばならない。木にかけられた死体は、神に呪われたものだからである。あなたは、あなたの神、主が嗣業として与えられる土地を汚してはならない。』

 この律法によれば、日没前に埋葬する事になります。

 過ぎ越しの祭りの前の日に十字架に掛かけられたイエス様は、過ぎ越しの祭りが始まる金曜日の日没前に、墓に入れられました。ユダヤ人は、葬儀と埋葬は亡くなったその日のうちに済ませる習慣があります。(とは、言いながら現代では1日から2日埋葬に時間がかかることは、やむを得ないとされるようです。)イエス様の時代は、日没までに埋葬するのが大原則です。しかし、日没直前に亡くなった場合などは、朝になる前に埋葬まで終わらせました。ところが、イエス様が十字架で死なれた日は安息日の前の日です。安息日には、葬りの準備ができません。その関係で、時間が足りなかったのでしょう。本来遺体を墓に置く前に油や香料を塗るなどの遺体を清めますが、そこまではできませんでした。このとき、どのような葬りの準備をしたのかと聖書をみますと、ヨハネによる福音書に書かれています。

ヨハネ『19:39 そこへ、かつてある夜、イエスのもとに来たことのあるニコデモも、没薬と沈香を混ぜた物を百リトラばかり持って来た。19:40 彼らはイエスの遺体を受け取り、ユダヤ人の埋葬の習慣に従い、香料を添えて亜麻布で包んだ。』

 この記事を見ますと、大急ぎでなんとかユダヤの習慣に従って墓に入れるまではできたようです。しかし、時間は足りませんでした。その残ってしまった香油で清める作業は、安息日が明けてからということで、あわただしく安息日に入ったのだと思われます。安息日になるとお店はやっていませんから、香料などは買えません。土曜の日没になるとようやく香料を手にすることができます。ですが、もう夜ですから、次の日の日曜日の朝にその準備をするために、婦人たちは墓に向かいます。

1.復活する

  墓に向かった夫人たちはマグダラのマリアとゼベダイの子ヤコブとヨセフの母マリア、そしてサロメです。サロメは、聖書の中ではこのマルコにしか出てきませんが、イエス様と行動を共にしてきたご婦人の一人です。この3人は、特にイエス様と近い弟子だったことが伺われます。日の出とともに、彼女らは墓に向かいました。そして心配なのは、墓の入口に蓋をしている大きな円盤状の石です。車輪のように円盤が立てて置かれているので、転がせば動くのですが、婦人3人で動かせるような代物ではないからです。しかし行ってみると、石はすでに動かされていました。金曜日の日没から土曜の日没までの安息日に、石を動かす人がいるわけもありませんし、夜に墓に来る人もいるわけがありません。日曜日の朝、真っ先にこの墓に来た、ご婦人3人の前に誰も来ているはずがないのにです。

『16:5 墓の中に入ると、白い長い衣を着た若者が右手に座っているのが見えたので、婦人たちはひどく驚いた。』 ・・・とあります。

その驚きはすぐに、恐ろしさに変わり、逃げ出してしまいます。その若者は、このように言ったからです。

『驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレのイエスを捜しているが、あの方は復活なさって、ここにはおられない。御覧なさい。お納めした場所である。16:7 さあ、行って、弟子たちとペトロに告げなさい。『あの方は、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて言われたとおり、そこでお目にかかれる』

 この青年は、大事な話をしていますが、恐ろしいと感じた婦人たちは「イエス様が復活した」ことも、「ガリラヤに行くように」との指示についても、誰にも話しませんでした。

 この婦人たちも、イエス様が十字架にかかって、復活することを知っていたと思われます。現実にその時を迎えると、イエス様の死を受け止めて、葬りの準備を続けようとしていました。しかし、イエス様の復活については心の準備ができていなかったのです。また、イエス様の復活した姿を見たわけではありません。見も知らぬ若者に言われたことは、その時は仲間に伝えませんでした。

2.復活を信じない弟子たちと、その後

◆マグダラのマリアに現れる(16:9-11)

イエス様は、復活した朝、マグダラのマリアの前に現れました。マリアは、イエスと一緒にいた人々が泣き悲しんでいるところへ行って、このことを知らせましたが、イエスが生きておられること、そしてマリアがそのイエスを見たことを聞いても、信じませんでした。

◆二人の弟子に現れる(16:12-13)

11弟子以外の弟子が、エルサレムを去ろうとして旅を始めた時(エマオ ルカ23:13)、イエス様は二人の前に現れました。この二人はエルサレムに戻ってそのことを伝えますが、弟子たちは信じませんでした。

◆弟子たちを派遣する(16:14-18)

その後、十一人が食事をしているとき、イエスが現れ、その不信仰とかたくなな心をおとがめになった。復活されたイエスを見た人々の言うことを、信じなかったからである。

復活したイエス様を見た11弟子は、ようやくイエス様の復活を信じたのでした。ですから、イエス様は11弟子に伝道するように命令します。

「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい。~」との祝福の言葉によって、イエス様は弟子たちを送り出しました。

◆天に上げられる(16:19-20)

使徒言行録1:9-12によれば、復活して40日間イエス様は弟子たちといっしょでした。その後イエス様は、天にあげられます。そして、弟子たちは出かけて行って、至るところで宣教しました。その前に聖霊降臨があるのですが、福音書にその記載はありません。(聖霊降臨は、使徒言行録だけの記事です)