陰陽師0
早いもので「陰陽師」二作から20年以上たってしまった。今回はあの時よりももっと前の、若い頃の晴明と博雅。徽子が叔父の村上天皇に入内したのは948年だから、その頃。村上帝の次が冷泉帝、その次が「光る君へ」に出てくる円融帝。晴明は921年生まれ、紫式部は970年頃という説があるから、ちょうど50年ほどずれていることになる。博雅は922年生まれで、1005年に85歳という高齢で死亡した晴明と違い、980年に59歳で死亡。徽子は985年に57歳で死亡。博雅と徽子はいとこ。つまり親が兄妹だった。その兄妹の中には村上帝の他に源高明がいる。この高明の娘が「光る君へ」にも出ていた明子。映画の最初の方に出てくる寛朝も実在の人。さて、映画の晴明はまだ陰陽師ではなく学生(がくしょう)。陰陽寮ではその学生達が様々なことを学ぶ。いろいろなことをずらずらっとわかりやすく見せ、説明してくれて、それはいいのだが、なぜか陰陽師の一番大切な仕事である天体観測のことが省かれていたのが気になった。次に気になったのが女性達の衣装。我々が平安朝と聞いて思い浮かべるものとは違っている。いつもそんなにきちんとしていたわけではなく、着崩していたはず・・ということでそうなったらしいが、違和感ありすぎ。中国か朝鮮の衣装みたい。と言うか私には金太郎腹巻きしてるようにしか見えなくて・・。晴明役は山﨑賢人氏。たぶん見るの初めて。比べちゃいけないと思いつつもやっぱり野村萬斎氏と比べてしまう。山﨑氏の晴明も染谷将太氏の博雅も適役と、皆様これっぽちも疑ってないようですけど・・。私はずっと晴明は染谷氏の方がよかったんじゃないの?と思いっぱなし。見てる間ずっとこれが染谷氏だったら、これが染谷氏だったら・・の連続。彼は丸顔で、コミカルでかわいい感じで、晴明に振り回されっぱなしで、それはそれでいいんだけど、「怪物の木こり」がそうだったけど彼には不気味なムードも似合うと思うのよ。顔から表情をなくして、目がすわった感じにして、すーっと立ってるとか。まわりから盛んにキツネの子、キツネの子と言われていたけど、それも無理はないな・・と思わせるような。山﨑氏だと不気味な感じはなくて、口がへの字になってることもあって、世をすねてるような感じしかしないわけ。笛を吹いたり、徽子に思いを寄せたりといった人間くさい博雅やれば、あの長身もハンサムな顔立ちも引き立ったと思う。それにも増して残念だったのは、晴明がすでに陰陽師として一流と言うか、もう完成してしまっていること。
陰陽師0 2
授業に出なくても、いろんなことをサボっていても平気。薄暗い書庫に一人こもって、何となく書物広げているだけでオッケー。これじゃあ”若い時”と設定した意味がない。努力しなくても超一流・・じゃ見ていてもおもしろくないわけよ。いや、どこかで努力はしているのかもしれないけどさ。さて、ここでの晴明は両親を殺されており、犯人を見つけて復讐したいと思っている。今は思い出せないけど、そのうち思い出すことになっている。この時出てくる寛朝役は眞島秀和氏。出番たったこれだけ?一番偉い陰陽頭義輔が小林薫氏、是邦が北村一輝氏。北村氏は中年期の博雅似合いそうだな~と見ながらずっと思ってた(その場合晴明はモチ福山雅治氏ね!)。孤児となった晴明を育て、知識を授けてくれたのが忠行で、國村隼氏。彼の落ち着いたキャラが好もしい。他に嶋田久作氏や安藤政信氏。若い連中が中心で、ともすれば映画が浮きがちなところを、こういったベテラン、中堅が支えてくれている。徽子の屋敷のシーンでは、いつも床に花がばらまいてある。どういう意味なのかな?徽子役は「事故物件」で見たばかりの奈緒さん。得業生の泰家が「バスカヴィル家の犬」に出ていた村上虹郎氏。関係ないけど他の学生達が泰家殺しの手がかり求めて押しかけても門番は追い払ったけど、博雅が行った時はすぐ通してくれた。これって門番が博雅の顔を知っていたと言うより、衣の色を見て上級貴族だと判断したからかね?話を戻して村上帝が板垣李光人氏。村上帝は967年、42歳で崩御。早いね。帝が頭に乗っけている冠もなあ・・子供の工作みたいで。途中で妙ちくりんなアクションがある。普段何の運動もしていなさそうな晴明や学生達が、あっと驚く動きを見せる。正直言って見ていたくなかったけど・・ありえなさすぎて。不自然で。ず~っと後になって、実はこれらは現実の出来事ではなくて深層心理の中での出来事でとか何とか。集団催眠とかこの時代にはありそうにない言葉がフツーに使われるが、最初の方で現代の言葉でいくと、ちゃんと断ってる。でもねえ・・多少わかりにくくても、聞き慣れなくてもできるだけ当時の言葉でやって欲しかった気も。クライマックスは菅原道真の怨霊?彼が失意のうちに亡くなったのは903年だから、まだ50年もたっていない。彼の怨霊が雷と結びついた清涼殿落雷事件に至っては930年、ついこの間の話。現実に戻ってきて、まわりの学生達みんな倒れていて、気絶してるのかなと思ったけど、心の中での死は現実でも死とか言っていて、全員死んじゃったの?ちょっと殺しすぎじゃないの?野村氏版「陰陽師」に比べ、ヒットしなかったようだけど、続編はあるのかしら。何だかんだ書いたけど、作ってくれれば見ますよ。