ザ・フライシリーズ

ザ・フライ

大昔に見たのよね、「ハエ男の恐怖(恐怖のハエ人間)」。あれは最後が怖かったな。あっちは蝿の顔と人間の体、人間の顔と蝿の体の二つに分かれたけど、今回のはDNAレベルで結合しちゃう。どんどん体が昆虫っぽくなって、虫だから短命かと思っていたらそんなことなくて。で、最後には・・。これを見た時、「エイリアン4」を思い出した。これでもかというくらい不快感を突いてくる。技術で何でも見せることができるようになって、節度というブレーキがきかなくなったら、そこにあるものは愚劣だけだ。お客が来ればよい。喜ぼうが気分が悪くなろうが、とにかく一回見に来てくれればそれでいい。旧作にあったような謎解きのおもしろさ(確か冒頭で奥さんが死んだ亭主のそばにいて・・というシーンから始まったのだと記憶している)も、蝿になってしまった主人公のあせりや恐怖(確か蜘蛛の巣に引っかかって食べられるのがラストシーンだったような。あれは怖い)も、この作品にはなかった。ただひたすら不快感を増すような作りになっていた。ヒロインがウジを産む悪夢のシーンと、人間の殻を破って怪物が出てくるシーンが一番ひどく、特に前者は「ここまでやるか?」という感じ。映画館でやった時はどうだったんだろう。怖がるというより爆笑したんじゃないかしら。まあせっかく見始めたのだからと思って最後まで見た。ジェフ・ゴールドブラムは最初出てきた時はハッとするくらい魅力的だった。背が高くてヒョロっとしていて、髪がモジャモジャで、目はギョロギョロしていて、ハンサムじゃないんだけど、出てくると目が釘づけになってしまうというか。世俗とかけ離れた、別の世界に住んでいるような人。頭を悩まさなくていいように、服も靴も同じものを持っていて、はたから見ると着たきり雀のようで不潔なんじゃないかと思えるけど、実は同じものを順繰りに着ているのだとわかるところがよい。ただそうやって魅力的に見えるのは最初の方だけである。20歳でノーベル賞の候補になったというセリフが出てくるが、そんなに若い人は候補にならないでしょ。・・これを書いたのはブログを始める前だから20年以上たってる。かなりけなしているが、その後ウゲゲな映画もたくさん見たので、だいぶ耐性もできた。今じゃこれくらいへっちゃら。

ザ・フライ2

1958年版はテレビで見た。その後原作も読んだ。あっちの方が原作に近かった気がする。こちらでは遺伝子レベルで融合してしまうため、人間の頭をした蝿は出てこない。ラストの恐怖の表情が一番怖くて印象に残っているのだが。こちらではパーティでセス(ゴールドブラム)がヴェロニカ(ジーナ・デイヴィス)をナンパするところから始まる。気乗りしないヴェロニカだが、実験を見せられて興味を持つ。記者なので特ダネが欲しい。記者と知って困惑するセス。だったら初めから見せるなよ。編集長ステイシス(ジョン・ゲッツ)は鼻で笑ったくせに、セスの経歴をると乗り気になる。ヴェロニカと彼のくされ縁みたいなものが興味深い。ステイシスの言動は不快だが、ヴェロニカのことが好きなのについついいじめてしまうのだ。ヴェロニカからすると愛想も尽きるとなるのだが、嫌われるとわかっていてもやめられない。素直になれない。ヴェロニカの方は大学で彼に指導を受け、就職でも世話になっていて恩ある。彼のことは好きじゃないが、一緒にいれば利益になることも。女性ジャーナリストとして自立するのは容易ではない。だからこそものにとらわれないセスが魅力的に思えたのだが。この映画ではセスに研究資金を出している会社のことは描かれない。「2」と違うのははっきりした悪役がいないこと。「2」では社長のバルトーク、博士達、警備員達が悪役だった。報いを受けても当然に思えた。でもこちらでは・・。ちょっとした不運な偶然のせいで惨事が起きるはめに。セスは自分が超人になったと勘違いし、ヴェロニカにも装置に入るよう強要する。ヴェロニカの方は妊娠を知って思い悩む。いつもこういう負担を負わされるのは女性。と言うか、セスと関係を持ったもう一人の女性は大丈夫だったのだろうか。そうこうするうちにセスの状態は悪化し、ヴェロニカもどうしていいかわからなくなる。中絶しに病院へ行くが邪魔される。最後の方の彼女はこういう映画ではよくある悲鳴を上げ、恐怖にふるえるヒロイン。最初出てきた時の彼女は気丈なタイプに思えたが時間の経過につれて普通のヒロインになってしまった。とは言え最後はセスに乞われて射殺し、エンド。というわけで、映画を見ていて目が行ったのは特撮よりも人間模様。これも年のせいか。

ザ・フライ2 二世誕生

これは最初「午後のロードショー」でやったのを録画したが、見ずにほったらかし。その後ザ・シネマでやって、こちらはノーカットだから録画して、やっぱり見ずにほったらかし。見るのをためらったのは・・いちおうエリック・ストルツ好きだし、その彼がおぞましい姿になるのはわかっているので・・そのせい。何しろ一作目がアレだったから。さて、映画は冒頭から騒々しい。出産だから仕方ないけど、何が出てくるか。ん?怪物?いや、卵の状態ってこと?切開して中から出てきたのは人間の赤ん坊でした、ホッ。ヴェロニカは急死。心臓が持たなかったのか。できればここは会社側の手が伸びていたからとか、そういうのでもよかった。薬とか。なぜって会社・・この場合社長のバルトークだけど・・にとっては、母親はいない方がいいわけで。このコは私のコです、私が育てますなんて言われたら困るわけで。だから死んでくれて手間が省けたと思ったはず。赤ん坊はマーティンと名付けられるが、成長が異常に速い。夜は眠らないしものすごく頭がいい。外へは出られず、毎日注射やテストばかり。ここで印象的なのは、まわりの博士連中の態度。マーティンは研究対象と言ってもまだ子供だし、生まれた時から育てているのだから、普通なら少しは愛情もくはず。でも一番愛情抱きそうな女性のジェインウェイが、好きになれないみたいなこと言うので、よっぽど醜いとか根性悪なんだと思ったらそうでもない。ごく普通の男の子。やはり蝿の遺伝子持っていて、将来はおぞましい姿に・・と想像するからか。でもそれならいっそう彼を気の毒に思って親切にするだろうに。マーティンはここの生活しか知らず、他の人に会ったこともないので、これが普通なのだと思っている。それだけに自分のことを気にかけてくれるバルトーク(リー・リチャードソン)を慕い始める。また、一匹の犬と心を通わせ始める。その犬は実験用に飼われていて、ある日こっそりエサを持っていったら、いなくなってる。妙な装置があって、その片方に犬が入れられ・・。その時見た光景は彼に大きなショックを与える。五年後、マーティン(ストルツ)はもう青年になっている。初めて外に出た。社員として働くことになった。自分の家が持てた。何もかもバルトークのおかげ。彼にとっては父親のような存在。

ザ・フライ2 二世誕生

セスの研究を彼は引き継ぐ。セスは資料を残さず死んだため、トリンブル博士らはあの装置・・テレポッド・・を使いこなせない。実験は失敗続き。マーティンは犬のことがあって、この装置が好きになれない。でも成功すれば人類の役に立つし、バルトークに恩を返せる。そのうち彼は夜勤のベス(ダフネ・ズニーガ)と知り合う。何しろ彼はほとんど眠らないので、夜も残って研究しているのだ。この後はお定まりの流れ。べスに研究を手伝ってもらう。ダンスをする。バックに歌が流れる。あ~80年代だしな。ある日パーティに誘われる。そこで耳にはさんだのが標本部の連中の話。こっそり調べるとあのワンコがバケモノみたいな姿で生き長らえていた。最初は攻撃してきたけど、そのうちマーティンだと気づいたようで。まあここらへんはねえ・・人間の手でバケモノにされて、死ぬこともできずただ生きてる。連中にとっては標本だけど、それじゃああんまりだな。マーティンはワンコを安楽死させたのかな。とっても悲しいシーンで、何と言うか、ただのどぎついホラー映画じゃないのだ・・と感じ始め。マーティンは珍しい病気・・過成長症候群なのだとまわりからは言われている。他の人より早く死んでしまうのだということを理解している。そのための薬や注射なのだと。自分の持っている蝿の遺伝子はどうやったら取り除けるのだろう。コンピューターが出した答は、彼を失望させる。誰か別の人間を犠牲にするわけにはいかないからだ。私はこの時点で、自分が生き延びるために誰かを犠牲にする方向へ行くのかなと思っていた。例えば「エンブリヨ」みたいに。でもそうならなかったな。物質の転送には成功したようで、片方に子猫を入れ、尻込みするベスにスイッチを押させる。子猫は何事もなく転送され、ベスは安心する。その夜二人は結ばれる。マーティンは夜眠れるようになったのか。二人は幸せ気分に浸るが、マーティンの腕には妙な傷が・・。見ている方は体に異変が・・と思う。「エンブリヨ」みたいにセックスが引き金になったのか。それともそういう時期に来ていたのか。バルトーク達にとっては待ちに待った時が近づいてきている。邪魔なベスは他の部署へ飛ばす。抗議するとビデオテープを渡される。

ザ・フライ2 二世誕生3

何と監視カメラで二人の様子が録画されていたのだ。それを知ってマーティンは激怒。ベスとのことだけでなく、この家を与えられてからのすべてが監視され、記録されていたのだ。警備員達は愛をわす二人を見ておもしろがっていた。それだけでなく今まで病気の治療と称してされていた注射のなかみはただの水、父と慕っていたバルトークだが、愛情なんかゼロ、すべては見せかけ。こうなるとこの後彼らがどうなろうと誰も同情しません。ひどい、ひどすぎる!マーティンは社から逃亡。あとに残されたコンピューターにはロックがかかっていて、パスワードなしには侵入できない。しかも間違ったパスワードを一回入れただけで破壊されてしまう。せっかく転送に成功したらしいのに、これじゃあお手上げ。パスワードのヒントは”魔法の言葉”で、見ている人は全員それは”アブラカダブラ”だろうと思う。ベスへの手紙にそう書いてあったから。万一間違っていたらと恐れたバルトークは、結局コンピューターへの侵入はあきらめる。マーティンはまずベスのところへ。その後二人で、ビデオで見たステイシスのところへ。彼はセスに恨みがあるから態度は冷たい。でもあのテレポッドを使えば何とかなるとほのめかす。マーティンにはそれができないから、そこで行き詰まってしまうのだが。ほとんど力になれなかったステイシスだが、それでもベスに自分の車を使うよう言う。ベスの車じゃすぐ追っ手に・・ということか。不親切に見えて意外と・・。二人は取りあえずモーテルへ。もうテレビのニュースで二人の顔が流れている。二人ともどうしていいかわからず、途方に暮れる。朝になるとマーティンは変態が進み、とうとうベスはバルトークへ連絡するしか方法がなくなる。運び込まれたマーティンはさなぎ状態か。ジェインウェイは一週間くらいかかると予想するが、もちろんもっと早く殻を破って出てくる。近くで仕事している彼女はずっと背を向けたままだ。視野に入れとかなくて不安にならないのか。何と言うか完全に蝿人間になった時どう対処するかの手順が全く周知されてないと言うか。五年もあったのに。案の定彼女は襲われ・・。警備員が犬を放すが廊下の奥は吹き出す蒸気でよく見えない。犬の吠え声がそのうち悲鳴に変わるぞ・・と思ったら。

ザ・フライ2 二世誕生4

蝿人間は犬の頭をなでていて、何もしない。つまり彼にはあの時の犬の記憶が残っているのだ。この時の犬の演技が見事。怪しい奴だワンワン。それが黙ってしまい、きょとんとした目になる。ありゃ?何じゃこりゃ。ウッヒャ~何かちょっと怖いかも。でも頭なでられてアラ?やさしくしてくれるじゃん、だったらボクも大人しくしよ~っと。犬の方がよっぽどお利口。さて、バルトークは傷つけるなけ捕りにしろと命令するけど、警備員達は次々にやられ、残ったスクービーはけ捕りなんてやってられるか殺さなきゃ・・と、頭に血が上る。間違ってトリンブル殺したあげく、自分もやられる。残ったのはバルトークだけ。こうなったらけ捕りはあきらめるしかなく、銃で撃たれた蝿人間は死んでしまうのか。結局テレポッドにバルトークと二人で入り、ベスに転送スイッチ押してもらう。この時の・・パスワードが”ダディ(パパ)”というのが泣かせますな。それくらい慕っていたのだ。ところで転送時には全裸というのがお約束。何しろ遺伝子レベルまで分解され、再構築されるわけですから。バルトークは服着てるし腕時計もしてる、靴もいてる。マーティンの体内には銃弾があるはず。そんな状態で大丈夫なのかと思うが、悪いものはみ~んなバルトークの方へ移り、マーティンは人間100パーセントになりました。たぶん改良を加えて無機物は除けるようにしたのだろう。ラストはあの犬がいた場所でバケモノのような姿で生き長らえるバルトークのおぞましい姿。そばには一匹の蝿。たぶんこの図をとりたかったんだろうな。バルトークを見下ろしているのは研究者達か。普通なら社のおぞましい計画が明るみに出て調査の手が入るとか。マーティンはデータをすべて破壊してベスと共にどこへともなく姿を消すとか。そうなればハッピーエンドだけど、二人がどうなったのかは描写されない。たぶん見ている人全員ベスが妊娠してないか心配したことだろう。まあ私はたぶんマーティンは死んでしまうだろうと思って見ていたので、生き延びたらしいのは意外でもあり、ホッとした。と言うことで、バルトークをあそこまですることないのにとかいう声はあるけど、あそこまでされるほど彼はひどいことをしていたのだとも言える。他人を犠牲にするわけにはいかないと苦悩していたマーティンとはえらい違いで。