主任警部モース1 ジェリコ街の女
モースの記念すべき一作目。ポアロの「ダベンハイム失そう事件」などもそうだが、替え玉とか二役のような設定は、小説では何とかなっても映像化は難しい。だから今回はどうするのかなと思いながら見ていた。まあうまくごまかしてあったけど。原作はざっと読み返した。読んだはしから忘れると言うか、モース物とウェクスフォード物がごっちゃになってしまうのだ。主役の二人はごっちゃにならないけど、事件がね。原作ではモースはアンとパーティで出会って意気投合するが、つまらない事件が起きてモースが呼び出されたせいで、何事もなく終わる。その時はその気になっても、明るくなってアルコールも抜ければ、それほどでもなくなる。と言って忘れたわけではなく、時々彼女のことを思い出す。そのまま六ヶ月たって、ふと彼女を訪ねてみようという気になる。ところがカギは開いてるのに呼んでも応答はなし。仕方なく立ち去る。テレビでは聖歌隊で一緒に歌う間柄。何度か彼女を家まで送る。最初家へ行った時、ネッドという若者がいたので気まずい思いをする。息子でもないのに同居してるとなれば、若い恋人としか思えない。それでも聖歌隊の公演の後どこかへ出かけようなんて約束して、迎えに行ったけど、カギは開いてるのに呼んでも応答なし。公演も欠席したし、いったいどうしたのだろうと思っていると、パトカーが追い越していく。ベル警部の担当なので邪魔者扱いされるが、アンが自殺したらしいのにショックを受ける。原作ではベル警部とウォルターズ刑事がアンの件を担当し、ルイスは前半はほとんど出てこない。途中でベルが警視に昇進。モースは追い抜かれてしまう。事件の捜査は彼が引き継ぎ、ルイスは彼につくことになる。モースとルイスのコンビ誕生だ。アンの向かいに住むジャクソンは、近所のいろんな仕事を引き受けている・・つまり何でも屋。今もアンの家の壁塗りが終わったところ。仕事の間は自由に出入りできるよう合鍵を渡されている。ネッドは大学の寮にいるようだが、ここに出入りするのにカギを持っているだろう。ジャクソンはせっせとアンを覗き見する。入口は目の前で、話し声もよく聞こえる。
ジェリコ街の女2
二階の窓からは彼女の寝室が見える。ルイスが聞き込みに来た時、ジャクソンはモースが出入りしていたことを話す。ルイスはびっくり。その後アンの家の中や外を嗅ぎ回っているモースをつかまえるが、原作ではこの部分はルイスではなくウォルターズである。モースは偏屈な性格なので素直に事情を話すわけではない。アンの死因には異常なところはなく、ただ遺書がないのは妙だった。その後彼女が妊娠していたことがわかる。その後彼女がお膳立てした講演会が追悼の意味も込めて開かれ、モースも出席する。講師として招かれたのはアラン・リチャーズ。原作では出版社だが、こちらでは音楽機器関係。その後すぐモースはアランを容疑者扱いしていたが、彼の車を見て、あの日アンの家の前に止めてあった車と同じだと気づいたからかな。その車は駐車違反の切符を切られていたから、記録が残っているはずだ。ジャクソンが殺されたが、アランはモースの目の前で講演の最中だったから、犯人じゃない。でもアンの時は・・。アランにはミルズ夫人と一緒・・つまり浮気していたというアリバイがあったが、自分ではやらず、誰かに車を貸したのかも。今回だって自分の確実なアリバイ作っておいて、誰かにジャクソンを殺させたのかも。アンは以前彼の会社で働いていて不倫の関係になったが、退職した今も時々会っているのでは。おなかの子の父親はアランかも。何とかしてくれと泣きつかれ、それで自殺に見せかけて殺したのかも。ジャクソンはアランをゆすり、それが元で殺されたのかも。しかしアランの妻アデルが現われ、自分が行った時にはもうアンは首を吊っていたと証言する。原作ではチャールズと弟コンラッドの兄弟、チャールズの妻シーリア・・この三人とも名前がCで始まる。サインする時はC・リチャーズとなって、駐車違反の罰則金を小切手で支払ったのがシーリアだとルイスは思い込んだけど実はコンラッドだったとか、そんな描写がある。テレビではなぜかアランと妻アデルになってる。アランの弟はトニーだが、これもアンソニーかもしれないから、三人とも名前はAで始まることに。サインはA・リチャーズとなって、原作通りにルイスの勘違いがあるのかな・・と思っていたら・・それはなかったな。何で?
ジェリコ街の女3
シーリアが二階にいたらモースが来て、アンを呼ぶので生きた心地がしなかったという原作の描写もなし。何で?これがあればアデルの証言が真実味をおびるのに。もう一つ気になったのはアランのところへ来た脅迫の手紙と、ジャクソンがかけた電話。原作には何通か手紙が出てきてややこしいんだけど、妊娠を知ったアンはチャールズに助けを求める手紙を出す。しかしシーリアがもみ潰したためチャールズには届かず、アンは絶望して自殺する。シーリアがあの時二階にいたのは、チャールズからの手紙を取り返そうと捜していたからだ。テレビでは手紙ではなくじかにアランに電話している。はかばかしい答が返ってこなかったので、それで絶望したのか。原作で1000ポンド払わないと奥さんにばらすぞという手紙をチャールズに送ったのはマイケルとエドワードの兄弟。いたずら半分だから、送っただけであとは何もしていない。一方ジャクソンはチャールズをゆすろうと、電話をかける。電話では脅迫状のことは言ってないはずだ。送ったのはマイケル達なのだから。それにジャクソンは文盲なので、手紙は書けない。チャールズは手紙を受け取った後なので、てっきり脅迫主からの電話だと思い込む。ジャクソンが何も言わないでも受け渡しの方法など言い出す。ジャクソンは会話に噛み合わないところがあると思ったはずだが、相手の勘違いをいいことにまんまと金を手に入れる。テレビの方ではジャクソンは電話をかけた時、自分が手紙を送ったと言っている。じゃあ文盲じゃないのかと思ったら、後で手紙はネッドが書いたもの・・となる。でもそれじゃあ脅迫状が二通あったことになるぞ。テレビではネッドにマイケルとエドワード二人分のキャラが詰め込まれている。モースがとんでもない推理を展開するのは原作と同じ。つまりネッドはアンの最初の結婚でできた、養子に出した子で、実の子であると気づかず関係を持ってしまったこと。アンの別れた夫は交通事故で死んだが、事故の相手はネッドであり、つまり彼は実の父親を死なせてしまったこと。ネッドはアンから金を盗んでは麻薬をやっていたが、自分で自分の目を潰してしまったこと。これらが「オイディプス」と同じだという分析。
ジェリコ街の女4
実際は多くが勘違いで、例えばネッドはゲイなのでアンとは何もないとか。何でこんな設定にしたのかなと思うが、親子ほども年が違うからまずいと思ったのかな。原作でもアンはチャールズとしか関係していないことになってる。だからおなかの子の父親はチャールズに間違いないと。原作ではとかテレビではとかいちいち書かなくたっていいんだけどね、なまじ原作読んでるから違いが気になる。ジャクソン殺害はそんなの無理でしょと思ってしまう。綱渡りすぎる。会社はうまくいってるけど、アランとトニーの兄弟はみんなに顔を知られている有名人てわけでもない。モースはアランに会い、ルイスはトニーに会うが、アランと名乗っている男は実はトニーで、トニーとされている男が実はアランで。トニーがアランのふりして講演をしている間に、アランはジャクソンを殺す。場合によってはアデルはトニーと夫婦のふりをする。でもこんなのは一卵性の双子なら何とかなるけど、モースとルイス、アランとトニーの四人が一緒になればばれてしまう。原作を読んでいて思うのはアンの心理である。たぶん30代後半で、若くはないにしても顔立ち、体つき、ふるまいが魅力的で男達をそそる。現にモースも。アランの会社に勤めている時に愛人関係になったが、退職してからも続いている。それでいて何も対策取っていなかったのか。妊娠してからあわてるなんて子供じゃあるまいし。しかもやんわりとだけどアランを脅迫している。モースから見るとアンは悲劇のヒロインで、美化されすぎ。他の人から見れば迷惑な女性だったかも。着替えをジャクソンに覗かれたりするが、スキがあると言うか、だらしないと言うか。これが原作だと、寝室の窓にカーテンをつけてなかったりエドワードの前で着替えをしたりと無頓着。ジャクソンが隠していたモースあての手紙では、同封のチャールズへの手紙(アンの遺書)を必ず本人に渡してくれと頼んでいる。一度会って数時間話をしただけの相手に、しかも警部に、しかも明らかに自分に好意持ってる相手に。それだけせっぱつまっていたと言いたいのかもしれないが、何だかねえ。
ジェリコ街の女5
テレビでは見つかった手紙には自分のことは何も書いてなくて、モースは失望する。原作みたいに会ってから六ヶ月も過ぎてるならともかく、直前まで何度か会って積極的にアプローチしてたんだから期待して当然だけどね。アン役はジェマ・ジョーンズ。目が大きくて老けた感じ。アラン・・実はトニー役の人はビリー・ボブ・ソーントンによく似ている。ジャクソン役パトリック・トラフトンには見覚えがある。「オーメン」のブレナン神父・・串刺しになった人かな。釣り竿を家に持ち帰っていたことがわかってモースに怒られる警官役の人はアダム・モリスとかいう人。背が高くて若い。顔が長くて目が細いが、モースやルイスと一緒だとハンサムに見える。さてここからはどうでもいいことをくどくど書く。ここで終わらせたっていいのだが、どうもぴんとこないところがいろいろあって納得できないのだ。上に書いたのと重複するところもあるが、原作の流れをはっきりさせておく。最初の手紙は、封はしてないが、切手を貼って投函するばかりになっていた、チャールズあてのもの。これをエドワードが盗み読みする。内容は妊娠を告げ、相手はチャールズであること、助けて欲しいこと、もし助けてくれないのならチャールズからの手紙を(脅しに)使う(かもしれない)というもの。これは自宅ではなく会社あてだったが、運悪くシーリアが読んでしまう。と言うのもチャールズはインフルエンザにかかり、代わりに出てきたシーリアが見つけてしまったのだ。彼女は手紙を破り捨て、アンの家へ。呼んでも応答がないが、カギは開いていたのですぐ二階の寝室へ直行。チャールズの手紙を捜している時にモースが来たので生きた心地もしなかったが、幸いすぐいなくなった。彼女が家捜ししている時にはすでにアンは台所で首を吊っていたのだが、シーリアは全く知らない。持ち帰った手紙は読まずに全部燃やした。エドワードはアンの自殺の後、手紙のことをマイケルに話す。それというのも、アンとの仲を自慢する兄にヤキモチを焼いていたからだ。手紙を読んで、マイケルとは何でもなかったことがわかる。彼はウソをついていたのだ。
ジェリコ街の女6
一方マイケルはエドワードに手紙の内容や宛名を思い出させ、脅迫状を送ってやれ・・ということになる。こちらはチャールズに届くが、彼はシーリアが彼の手紙を取り返して燃やしたことも、アンの脅しめいた手紙のことも知らない。マイケル達は手紙を送った後は何もしていない。ゆする材料となる手紙は持っていないし、その後マイケルは麻薬のせいで自分で目を傷つけて入院。エドワードは怖くなってしまう。一方ジャクソンはアンにカギを返すのを忘れ、届けに行った時に、自殺しているのに気づいたのだろう。ここらへんははっきり書いてないが、そばに遺書らしきものがあるのを見つけ、持ってきたのだろう。しかし彼は文盲なので、何が書いてあるかわからない。近所のパービスという老婦人に手間賃を値引きするからと言って読んでもらう。半分くらい読んだところで老女もうすうす気づくが、ジャクソンは手紙を取り上げ、口止めする。で、彼は電話番号の調べ方を教えてもらって、チャールズに電話をかける。チャールズはすでにマイケルからの手紙を受け取って頭にきているから、電話を手紙の主からのものと勘違いする。ジャクソンが多くを言わなくてもチャールズの方で先へ先へと話を進めてしまう。テレビではジャクソンが電話をかけているところがうつるが、原作では電話を受けるチャールズが描かれる。テレビではアランの顔はうつせない。声も聞かせられない。視聴者にからくりがばれてしまう。この頃にはチャールズ、コンラッド、シーリアの三人はお互い相談し合って対策を立てている。チャールズはジャクソンの家を突き止め、遺書を取り返そうとするが、はずみで殺してしまった。後で遺書は釣り竿の中から見つかる。それはモースあてで、同封のチャールズあての手紙を必ず本人に渡して欲しいというもの。つまりジャクソンは同封されていた手紙の方を老女に読んでもらったわけだ。モースあての方を読んでもらっていたら、さぞあわてたことだろう。モースはチャールズあての方を本人に渡すようルイスに言う。モースもルイスもアンの遺書は(すでに開封されてるとは言え)読む気にはなれない。・・以上が原作の流れ。
ジェリコ街の女7
テレビの方は・・ネッドはクスリを買う金欲しさにアンのバッグをあさったりするが、その時に手紙を見つける。内容はわからないが、一枚の紙に数行しか書かれていない。アンの死体が見つかり、騒ぎになっている時ジャクソンが持っているのはその手紙だ。モースが会社を(違法に)捜索した時に見つけた脅迫状はネッドが書いたものだ。アンが書いた方はジャクソンの釣り竿に隠してあった。だから原作にあるような一通目の手紙はこちらではなし。代わりにアンはアランに電話している。アデルがアンの家へ行ったのは、この電話を盗み聞きしたからか。彼女はアンが死んでいるのを見つけるが、通報はせず、アランの手紙を捜す。モースが暖炉をつつくシーンがあるが、たぶんここで手紙を燃やしたのだろう。アデルが傘を車の中に置くシーンがあるが、モースがアンを訪ねた時階段にあった傘だから、あの時アデルがアンの家にいたことがわかる。一番最初にアンを見つけたのはたぶんネッドだろう。朝早くと言っていたから。彼も通報はしなかった。クスリが切れてパニックになっていたので、アンの金だけ持って出ていく。その金でクスリを手に入れ、ついでに自分の目も片方潰す。原作だとマイケルがどこからクスリの金を手に入れたのか不明だが、テレビの方ははっきりさせている。アンのそばに遺書があったとしても、ネッドは気づかなかっただろう。アデルが来た時には遺書はもうなかったのだろう。だからあの日はネッド、ジャクソン、アデル、モースの順に来たのだろう。ジャクソンが電話で言う「手紙を送った」は一番の謎。テレビではジャクソンは文盲という設定にはなっていないようだから、自分で書いたのか。アデル、アラン、トニーを呼んでのモースの計画は見切り発車と言うか。まだちゃんと裏づけができてないのにやろうとするから、たちまち行き詰まる。失敗だとなって解散を宣言するが、ルイスが偶然発した言葉で、トニーこそアランだと判明する。あの時ルイスがあいさつしなかったら・・。と言うか、こういう入れ替わり作戦そのものが綱渡りすぎてありえないんだけどね。釣り竿から見つかった手紙を読んだモースは失望する。アランへの恨みしか書いてない。その前にネッドに聞いた時も、アンはモースのことは何も言っていなかったと聞き、失望していたっけ。自分ではモテると思ってるから、プライドを傷つけられたのかな。
主任警部モース2 ニコラス・クレインの静かな世界
今回のは原作読んだばかりだから何とかついて行けるが、見終わってもしっくりこない。まず海外学力検定試験評議会というのがある。その国で試験問題作ればいいじゃないかとなるところだが、オックスフォードで作ったとなるとハクがつくのだ。試験の合否が人生を左右するというのはどこの国も同じ。金にものを言わせてずるをしようとする者がいるのも同じ。この場合アラブ某国の首長。問題が漏えいしないよう対策は取られているが、金で転ぶやつはどこにでもいる。冒頭のパーティでコリン・デクスターがうつる。いつものことだがわざとらしくて興をそがれる。クインが評議員になってまだ三ヶ月。難聴で読唇術ができる彼は、ある人物の唇を読んで漏えいに気づき、副会長のオグルビーに相談する。クインは会長のバートレットが犯人だと思い込むが、実は違っていた。つまり読唇術は間違いも多いのだ。PなのかBなのかMなのか。TなのかDなのか。ループの怪しい行動も最初から見せる。防火訓練の騒ぎにまぎれてクインが殺され、彼の車のトランクに入れられる。クインだと思われた人物がループだというのは予想がつく。その後オグルビーも殺される。不倫やら何やらが絡んで、結局はマーティンが犯人でした・・となる。何で彼なのか皆さん納得できました?マーティンとループの関係はわかりましたか?モースは仕事がたまっていると嘘をついて、家でクロスワードパズルやってる。彼はろくな裏づけもないのにループやバートレットを逮捕する。しかもわざわざ大勢の人の前で。後で間違いとわかっても、人々はその時のことを忘れない。バートレット達にとっては大変な恥辱だ。モースはなぜ平気でいられるのだろう。今度は気をつけようとか反省しないから、次にまた同じことをする。映画館でかかっているのが「ラスト・タンゴ・イン・パリ」。事件後モースが行ったら「101匹わんちゃん」に変わっていて。モースはがっかりだが、ルイスは家族で来ようと喜ぶ。正常なルイスにはいつもホッとさせられる。オグルビー役はマイケル・ガフ。ベネディクト・カンバーバッチが年を取るとこういう感じになるんだろうな。ループ役の人はハンサム。
主任警部モース3 死者たちの礼拝
これは原作を読んであったので、どういうふうに映像化されてるのかと楽しみにしていたのだが・・。礼拝の最中、教区委員のハリーが殺される。妙なことに彼は致死量のモルヒネを飲まされ、しかもペーパーナイフで刺殺されていた。ハリーの妻ブレンダはオルガン奏者ポールと浮気している。モースは牧師のライオネルが少年愛好者ではないかと疑う。その一方で教会の清掃の奉仕をしているルースに好意を抱く。浮浪者スワンポールの行方がわからず、ルイスは彼が犯人だと思っている。そのうちスワンポールが牧師の弟らしいという情報が。牧師は自殺し、ポールとその息子ピーター、ブレンダも殺される。原作ではモースは休暇中で、ふと教会に入ってルースに会い、事件を聞いて興味を持つという流れ。担当はベルで、ハリーと牧師の死からは数ヶ月たっている。ポール親子の行方はわからず、ブレンダもオックスフォードを離れている。映画では最初からモースが事件を担当し、何ヶ月もたったりしない。ルースは例によって四角い顔立ちで、いかつい体つき。美人とは言えず、若くもないが、落ち着いた雰囲気。これがモースの好みのタイプなのだ。彼女には体が不自由な母親がいて、自由がなく、将来の見通しも立たない。モースには心がときめくが、誘われても断るしかない。それに彼女には男がいた。・・誰かが殺され、容疑者はいるけど足取りが全くつかめないという場合、殺されたのは容疑者自身・・というのが定番だ。文章ならいくらでも書きようがあるが、映像にしてしまうと、ごまかすのは難しい。この映画の場合、殺されたハリーの顔をはっきりうつさない。ルースの相手の男の顔もはっきりうつさない。当然のことながら原作に書かれているあれこれは省略される。ただ筋をなぞっているだけに見える。強調されるのは引かれ合うモースとルース。彼の誘いをルースは母の世話を口実に断る。でもモースはルイスと入ったパブで、他の男と一緒のルースを見かける。彼女はウソをついたのだ。それなのに彼はルースに引かれ続ける。と言うか、彼女が男と出歩くこと自体ありえないのだが。知ってる人に出会ったらどうするのか。ルースは男をフラットの二階に住まわせる。なぜ彼女の母親は上に誰かいることに気づかないのか。一番呆れるのは、ルースの罪を軽くするためモースが偽証すること。たぶんそこが彼の魅力なのだろう!
主任警部モース4 消えた装身具
今回はすごくびっくり。犯人が変更されてる~!ツアー客がホテルに落ち着き、やれやれという時、ローラが死んでいるのが見つかる。彼女は亡くなった前夫から受け継いだ”ウルバーコートの留め具”を博物館に寄贈することになっていたが、それがなくなっていた。心臓マヒによる自然死としか思えないが、モースは殺人だと思い込んでいる。医師のスウェインにさんざん文句をつけ、やり込めて笑い者にしているのが見ていて不快。ルイスまで笑っているのが残念だった。今回ルイスはモースにこき使われ、あくびばかりしていて魅力なし。少しは自分の意思も通し、睡眠を取らないと。ローラの死で疑われるのは夫のエディだが、彼には妻の遺産は入ってこない。留め具を売るのは難しいが、盗難保険をかけてあれば・・。そのエディはなぜか姿をくらましてしまうが、後で隠し子に会っていたとわかる。彼が発見した時にはローラはすでに死んでいた。保険金が入れば娘と暮らせる・・と、留め具を盗み、川にほうり込んだのだ。金をだまし取ろうとしたのは犯罪行為だが、その後どうなったかの描写はなし。隠し子は原作にはなし。次に留め具の件で尽力していたケンプが殺される。彼は女たらしで、添乗員のシーラに別れ話を持ち出したばかり。妻マリオンはケンプが起こした事故のせいで下半身不随に。この交通事故が原作では重要な意味を持つのだが、テレビではばっさりカット。したがってケンプ殺しの犯人も変更。ツアー客の中に文句ばっかり言ってて殺してやりたいくらい憎たらしい老婆ジャネットがいるのだが、原作では彼女と夫のフィルが犯人。それというのもケンプの酔っ払い運転のせいで彼らの娘フィリッパは死亡。彼らが夫を殺すのをマリオンは見ていて、それというのも憎しみのせいなのだが、その後自殺する。かなり凄まじい展開なのだが、テレビではダウンズが妻ルーシーとケンプの不倫現場に出くわし・・と平凡な流れ。原作では死なないルーシーも殺され、見ていて説得力がないと言うか、物足りないと言うか。留め具とバックルが揃ったらどういうふうになるかという展示はなかなかよかった。これだけは文章で読んでいても何も思い浮かばないから。
主任警部モース5 日の沈む時
何とNHKBSで放映し始めた。でも、吹き替えなんだな。モースは・・横内正氏か・・どうもなじめないな。ずっと聞いてれば慣れるんだろうけど。モースはどこまで見たっけ・・と、ザ・シネマで録画したのを引っ張り出す。モースも見なくちゃ、ルイスも見なくちゃと思いつつ、月日がたっていく。何しろ一本の映画と同じ。しかも複雑に入り組んだ内容。時間、体力、気力のある時でないと無理。さて言い訳はこれくらいにしてと。今回は日本人にはやや不快な部分も。戦時中の恨みがまだ残っている。オックスフォードに夏期講習の受講者達が到着する。バスの中ではモースの作ったクロスワードパズルを解かせ、一番だった者には夕食の席で賞品を。途中で体調を崩したらしい日本人ユキオ・リーが退席。ジェニーが門衛に様子を見に行かせると、殺されていた。口は耳まで斬られ、舌を切り取られ、心臓にはナイフ。一見キリストの磔のように見える。モースはジェニーに気があるらしく、半分口説いているように見える。彼女は牧師の父親をなくしたばかり。病死だが、手のひらに傷があったことが強調される。また、戦時中拷問も受けたらしい。会計係ウォールバットの部屋の写真には、シンガポール、1940と書かれている。彼女も戦時中何かあったようで。受講者の中で怪しいのはフリードマン。ドイツ人のフリをしているが、そうは思えない。そのうち彼は行方不明に。バスの中を捜索し、ユキオが麻薬の売人だったらしいことがわかる。そうなるとロンドンからデュワー警視が出張ってきて、モース達を邪魔者扱いする。モースはジェニーがおびえているのが不可解だが、やっぱり半分は口説いているように見える。彼はこういう・・さほど美人でもなく若くもないが、知的な女性が好きなのだ。でも「あなたのことは何とも」とはっきり言われちゃう。そのうち講習の世話係グレアムが殺される。さらにフリードマン・・実はジェニーの兄マイケル・・も、死体で見つかる。グレアムは学寮長ウィルフレッドの息子ジェレミーの友人だった。ジェニーの話すことは全部が真実とは限らないし、モースの推理も当たっているとは限らない。したがって・・見ていても何が何だかわからない。半分あきらめの境地で見ている。マックスが、ユキオの死体におかしなところがいくつかあると言うのが、大きなヒントである。口を斬ったのはさるぐつわのあとを隠すため、手首の傷は縛られていたことを隠すため。何よりも心臓を刺されたのに血の量が少なすぎる。刺された時にはすでに死んでいたのでは?
日の沈む時2
ジェニーの告白のあたりは、「はあ~何だって~?」状態。仕方ないから後でまた見直す。まず・・動機は父の復讐。戦時中父親を使って生体実験をし、拷問したのがユキオの父。しかし彼は実験データが欲しいアメリカによって守られていて、ジェニー達には手が出せない。そこで目をつけたのが息子のユキオ。彼は去年も講習に来ており、彼の素性を教えてくれたのはウィルフレッド。彼は陸軍にいて、日本にも駐留していたのか。マイケルとジェニーは、ユキオを麻薬の売人に仕立てようとあれこれ細工する。実際はユキオの服に麻薬の痕跡があるだけなのだが、それで十分。ジェレミーも麻薬に手を出し、事故死しているからウィルフレッドに容疑がかかるよう仕向ける。要するに捜査を混乱させるため、手の込んだお膳立てをする。ユキオの替え玉を用意し、夕食の席で芝居をさせる。彼が退席し、死体が見つかるまでの時間、ジェニーやマイケル、グレアム(実はマイケルの息子)には確固としたアリバイがある。何しろモースがその場にいたのだから。つまりモースは証人として利用されたわけ。ジェニーに頼まれ、疑いもせずホイホイと、クロスワードまで作って・・。本物のユキオは、来てすぐ拘束され、替え玉が受講者一同と行動を共にする・・はずだった。ところが本物が替え玉を拘束し、ジェニー達は入れ替わってるとも知らず・・。ここは都合よく、ユキオは武道の達人で・・ということにしてある。ユキオ・・実は替え玉・・が死んだのは事故だとジェニー達は思っている。恥辱を与えるくらいにしておくつもりだったのに。彼女がおびえていたのはそのせい。また、ユキオが本物の麻薬の売人だったことも、モースに聞かされるまで知らなかった。本物のユキオは、替え玉だと思われているのを利用し、グレアム、マイケルを殺し、さらにはジェニーまで殺そうとする。彼には麻薬の件で捜査の手が伸びてきているから、自分が死んだことにできる替え玉の存在は渡りに船だったことだろう。その彼を殺したのは・・日本人を憎むウォールバット。まあ全体的に無理のある話で、呆れるしかない。都合よくユキオのそっくりさんが見つかるか?入れ替わってることも知らないくらい日本人はみんな同じ顔に見えるのか?父親がだめなら息子で・・って、そうなるか?ジェニー役はアンナ・カルダー・マーシャル。ユキオ役は楠原映二(栄治)氏。ジミー・ウォングに似ていたな。
主任警部モース6 キドリントンから消えた娘
これは原作とはだいぶ違う。犯人を変更してある。原作は何が何だかわからん。ちゃんとした説明のないまま終わってしまう。モースの間違った推理をいくつも読まされ、あげくの果てほっぽり出される。たくさんの推理に出てくる名前を、他の誰かに置き換えて繋げれば謎解きになるのか。普通そんな面倒くさいこと読者にやらせるか?モースはヴァレリーという少女の失踪事件を調べるようストレンジに言われるが、気が進まない。彼は殺人事件でなければ興味がわかないのだ。後でヴァレリーの父親ジョージに、親が子供を思う気持ちがわからんのかと怒られたりする。原作では失踪から二年たっているが、こちらでは六ヶ月。ジョージも金持ちに変更してある。また、ヴァレリーが通っていた学校の校長フィリップソンは、ヴァレリーではなく、母親グレースと不倫している。教頭べインズは女性に、しかもレズに変更。原作だとべインズはフィリップソンをゆするなど卑劣なやつだが、こちらでは女生徒に慕われる存在。ヴァレリーが失踪したのは中絶手術のためだが、こちらでは父親はエイカムではなくマグワイアに変えてある。原作だと、エイカムの妻はどうなったの?という疑問が残るが、こちらでは、じゃあ何でヴァレリーはエイカムと暮らしているの?となる。両親もエイカムも妊娠中絶には気づいていないことになってる。それとフィリップソンは何でべインズを殺したんだっけ?こちらではゆすりはないし、男性に興味がないのが気に食わんくらいじゃ動機が弱い。原作ではヴァレリーが犯人のようだが、こちらではフィリップソン。かなり卑劣なやつに変更されている。演じているピーター・マッケナリーは「獲物の分け前」などに出ている。私は見たことはないが、「スクリーン」等で見て、名前だけは知ってる。若い頃はステキだったが、こちらでは目が垂れていて、変な顔。グレース役の人はヒラリー・スワンクとロリータ・ダヴィドヴィッチのミックス、シーラ役のフィオナ・モリソンはリー・グラントとケイト・ブランシェットのミックス風味。モースが図書館にいるシーラに話を聞き、その後警察で話を聞くという流れは、重複するようでよくない。あと、ヴァレリーのクラスメイトでべインズに憧れているジュリアやってるのが何とエリザベス・ハーレー。今と全然感じが違う。エイカム役の人はハンサム。
主任警部モース7 ウッドストック行最終バス
感想を書くためもう一度読み返した。それでずいぶんいろんなところが変更されてるとわかった。テレビでは雨が降っていて、ヒッチハイクしようとした二人のうち、一人はなぜか車に乗らず、バスに乗り込む。数時間後、酒場の駐車場で若い女性の死体が見つかる。見つけたのはジョンという青年で、知り合ったばかりのシルビアとここで待ち合わせしていたという。死体がそのシルビアなのだが、なぜか彼女のハンドバッグにはジェニファーあての手紙が入っていた。シルビアは保険会社のタイピストで、ジェニファーは秘書室の室長。郵便の係のジミーによると、その封筒には厚みがあったそうで、モースは金が入っていたのだろうと推測する。シルビアは手癖が悪く、金目当てで手紙を盗んだのだろう。後で金は、死体を見つけたジョンが抜き取っていたとわかる。彼は金の一部でキューを買い、プールバーでジミーと賭けをして負けて殴られる。翌朝遅刻し、勤め先の店主にクビを言い渡される。それで頭にきて暴れ、警察へしょっぴかれたところをモースとルイスが見かけ・・。これらの部分は原作にはなし。雨は降ってないしジミーもプールバーもなし。金もなし。ジョンを見ていると、どんどん道を踏みはずし、何を考えているのかと首を傾げてしまう。もっとも原作のジョンは死んでいるシルビアにいたずらするなど異常な性格。今ならDNA検査でジョンの仕業とわかってしまうが、1970年代じゃ無理か。原作でのシルビアは両親と同居しているが、テレビでは母親が海兵とゆきずりの関係を結び、できたことになっている。原作のシルビアはかなりしたたかな感じだが、テレビでは18歳で若い命を絶たれたとか、母親の悲しみとか、見る者に同情させようとしている。事件の後モースはテレビに出て情報提供を呼びかける。それにこたえてジャーマン夫人が連絡してくる。バス停に女性が二人いたことがわかったのは彼女のおかげ。片方だけ・・シルビアだけ車に乗ったのだ。普通ならもう一人の女性は名乗り出てくるはずだ。「また明日」と言葉をかわしていたのだから、知り合いのはず。
ウッドストック行最終バス2
名乗り出てこないということは、それなりの理由があるのか。その女性はジェニファーではないのか。手紙はジェニファーの手に入る前に盗まれたから、彼女は手紙の内容は知らないはずだ。手紙が来たことも知らないかも。手紙のなかみは採用通知だったが、モースはそれが見せかけで、実際は暗号になっているのに気づく。ちなみにテレビと原作では暗号文も違っている。モースが気になったのは、ジェニファーが犯行時刻のアリバイでウソをついたこと。これは実は職場のボス、パーマーとの不倫を隠すためなのだが、そのせいでかえって疑われることに。ジェニファーに限らずみんなウソばかりつくので、モースはうんざりだ。その度に「正直に言ってくれれば余計な手間が省けるんですがねえ」とくり返すことに。妻子持ちのパーマーはジェニファーと別れることを考え始める。ジェニファーは「捨てようたってそうはいかない」とか「奥さんにばらす」とか醜態をさらす。知的で分別のある美しい女性というイメージがガラガラと崩れる。第一パーマーがそんなふうに執着するほどの価値のある男にも見えん。モースはたぶんジェニファーのようなタイプが好みだ。でも不倫とかそういうのがわかると熱もすぐさめるのはいつものこと。モース好みの女性として出てくるのは、たいてい30代なかばくらいの、音楽や文学の素養のある落ち着いた感じの女性。いかにもイギリス風の、やや四角張った顔立ちの・・ヴァネッサ・レッドグレーブタイプの女性が多い。原作ではモースは20は年が下の看護師のスウに一目ぼれする。彼女には婚約者がいるが、バーナードと不倫している。おまけに今度はモースに一目ぼれ。いったいどうなってるんだ?テレビでは名前はメアリーに変えられ、婚約者はなし。モースとの恋もなし。バーナード一筋にして、見る者の同情が集まるようにしてある。ジェニファーはこのメアリーと、もう一人学生のアンジーとの三人暮らし。アンジーは講師のニューラブに襲われそうになる。オックスフォードの講師や教授、学長、寮長はこんなにも汚職やセクハラ、不倫や嫉妬、殺人にまみれているんだろうか。
ウッドストック行最終バス3
もちろんそんなのはフィクションだろうが、「モース」や「ルイス」のせいでそんなありがたくないイメージが定着したのでは?ジミーやジョン、ニューラブ達はいかにも怪しく描かれるが、シルビア殺しには無関係。バーナードとマーガレットの夫婦も原作とはだいぶ違う。バーナードが教授に昇進しそうなので、マーガレットはピリピリしている。スキャンダルは絶対に起こさないようにしなくちゃ。彼女は検視医のマックスの姪という設定なので、いつもよりマックスの出番は多い。バーナードはわりと簡単にシルビア殺しを認める。あの時シルビアを乗せたのは彼。メアリーが乗らなかったのは、運転手がバーナードだと気づいたから。とは言えシルビアは二人の関係は知らないのだから、別に乗ったってかまわないのでは?シルビアはジョンに会いにいくところだったんだし。バーナードがなぜシルビアに迫ったのかは不明。メアリーがいるのに・・。でもそうなったのも無理はないと思わせるためにマーガレットをああいう性格にしたのかね。バーナードはシルビアを殺すつもりなんかなく、駐車場を出る時タイヤが縁石にぶつかったと思っていたのが、実はシルビアをひいてしまったのだとニュースで知って・・。事故だと言っても信じてくれるかどうか。一方マーガレットは告白を聞くと、バーナードをせき立てて車の掃除をし、タイヤを山奥へ捨てに行く。ところが不法投棄をしていると思われ、逃げようとしてバーナードが心臓発作を起こす。ここらへんはやや喜劇っぽい。原作では二人とも死んでしまうが、それだと悲劇的すぎるので、少しは救いのある感じにしたのか。たいてい映像化されると死者の数が増えるが、こちらでは減ってる。そこは珍しい。テレビのバーナードはどう見ても60歳くらいで、今頃になってやっと教授?と不自然だが、原作は41歳で子供は二人。原作のマーガレットは美人で、仕事も家事も見た目は普通にこなしているが、実際には精神的にギリギリまで追いつめられている。もう終わりにしたいと思っている。夫や子供達は週末はゆっくりするのが当然だと思っている。
ウッドストック行最終バス4
でもマーガレットもゆっくりするのが当然とは思わない。彼女は平日も忙しいのに休日も家事に追われる。彼らは当然のごとく「朝食は」「夕食は」と聞いてくる。何か作ると「また同じもの?」と言われる。これを読んで深く共感する女性達は多いと思う。夫や子供にとって母親、妻は人間ではない。何でも文句を言ってかまわない召使、疲れを知らない・・休む必要も眠る必要もないロボットだと思っている。病気にならないし、死なないと思っている。マーガレットはある日自分を終わりにする。夫のあとをつけて駐車場まで行き、不倫の証拠を握る。それでいてさえシルビア殺しは自分と告白文を残し、夫をかばう。一方バーナードはマーガレットがシルビアを殺したのではと思っている。テレビと違って、シルビアを誤ってひいてしまった・・はなし。彼は自分が車を出した後、駐車場で何が起きたのかは知らない。でももしあそこにマーガレットがいたとしたら・・。入院して死を悟ると、殺したのは自分と言い残す。お互いに相手をかばう。もう愛情もなくなってるのになぜかかばい合う。おまけに二人とも思い違いをしている!真犯人が別にいるなんて思いもしない。テレビの方はそういうややこしいことは抜きにしてある。こういうドロドロから距離を置き、静かで着実な生活を送っているのがジャーマン夫人。彼女は原作よりも少し多めに活躍する。あの時の車を見つけたと連絡してくる。ナンバーも控えてある。そんな偶然あるわけないと、モースやルイスは半信半疑だが、ジャーマン夫人には自信がある。ちょっと出来過ぎな感じだが、活発な老女を見るのは微笑ましくていい。モースやルイスのこと全然書いてないけど、あまり印象に残らないのだ。それだけ事件が中心になっているのだから、いいことでもある。原作もテレビも女性達のそれぞれの境遇をよく描いていると思う。ちょっと悲劇的な傾向が強いけど。あ、そうそうコリン・デクスターが講演の時、モースの後ろに(わざとらしく)座っていたな。一度ちらっとうつって、それで終わりならまだ奥ゆかしいが、何度もうつるのはちょっとねえ・・。
主任警部モース8 ハンベリー・ハウスの殺人
カレッジでは次期学寮長選びが行なわれているが、接戦。後でわかるが、同点だった。立候補しているのは元外交官のサー・ジュリアスと、学問一筋のウルマン。二人は仲が悪かった。モースはロンドンから帰ってくる。オペラの「トスカ」を聴きに行ってきたのだ。同じ列車にはジュリアスの妻、レディ・ハンベリー(パトリシア・ホッジ)が乗っていた。翌朝、ハンベリー・ハウスでは絵が盗まれていることがわかり、モースとルイスが調べに来る。ジュリアスの姿が見えないが、誰もあまり気にしていない。一族の墓でジュリアスの撲殺死体が見つかる。検視官マックスは発作を起こしたとかで、代わりにラッセルが来る。モースは「いい子だ」などと言って、彼女を怒らせ、わびたりする。ルイスがお茶を飲んでいても、昼食のパイを食べている途中でも(自分は食べないから)急き立てる。自分勝手なやつだ。ルイスが食べていたのはポテトパイかな。熱そうだったな。最初はジュリアスとウルマンの学寮長の座をめぐる争いに思えたが、違った。ウルマンはライバルがいなくなると候補を取り下げ、現学寮長は、引退が一年延びてしまったと怒る。途中でモースは、ジュリアスは自殺したのだと気づく。自殺だと保険金が下りず、また一族の不名誉でもあるので、殺人に偽装したのだ。しかしこれも後で引っくり返る。ジュリアスは妻をほったらかしにし、子守りのミシェルのヌード写真をとるなどしていた。ミシェルは恋人のロジャーと組み、その写真をネタにジュリアスをゆする。結婚資金が欲しかったからだ。最初はそのせいでジュリアスは自殺したのだと思われた。しかし結局はレディ・ハンベリーがミシェルの件を怒り、ジュリアスを殺してしまったと。正当防衛だったと。後始末は庭師のジョンに手伝わせ、家政婦も口裏を合わせる。彼女は、夫にかまってもらえず苦しむレディ・ハンベリーに同情していたようで。レディ・ハンベリーは今ではジョンと愛し合ってる。彼らにはそれなりの言い分があるのだが、モースから見れば、自分だけは特別と思い上がっているようにしか思えない。いやモース、あんただって思い上がってますぜ。他の人の前でルイス叱りつけて恥かかせてたじゃん。ところで・・ロジャー殺す必要あったのかね。彼のゆすりは、ジュリアスの自殺のいい理由になったと思うが。保険金はもらえないだろうけど、少なくともジョンは殺人犯にならずにすんだ。
主任警部モース9 最後の敵
主任警部モース10 欺かれた過去