黒猫

黒猫

「黒猫」ってピーター・ローレが出ていなかったっけ?ああ、あれは「黒猫の怨霊」ですか。あっちの方がホントは見たいんだけど。こちらはベラ・ルゴシとボリス・カーロフという二大怪奇スターの共演というのが売り。原作はエドガー・アラン・ポーの短編。残念ながら未入手だけど、死体を壁に塗り込めたのがバレたとか、そんなふうな内容じゃなかったっけ?でもこちらは全然違う内容で、エドガーじゃなくてドコガーって感じ?ちっとも黒猫じゃアランぞ~って感じ?きっとポーも墓の下で驚いたことだろう。さて、オリエント急行の客室。アメリカ人の新婚さんピーターとジョーンは、あなかがすいてない、いやすいてるなどとたわいもない会話をかわしております。ほっとくと今にいやボクが食べちゃいたいのはキミだなんて言い出しそう。そこへ無粋な車掌が顔を出す。どうやらミスがあって二重に予約を入れちゃったらしい。客の中年男は困らせるわけにいかない、自分は通路でもいいなんて遠慮するけど、そんなこと礼儀正しく言われると、じゃあそうしてくださいとも言えない。甘いムードはいっぺんに吹き飛んで、何だか気まずいムード。それにしてもよかったね、相手を食べてるところじゃなくて(←)。さて男は精神科医のヴェルデガスト博士(ルゴシ)。眠っているジョーンの髪をさわったりするので、ピーターも奇異に思うが、彼にはつらい過去があった。18年前、愛する妻と娘を残して戦争へ。この場合は第一次世界大戦だな。シベリアの収容所で地獄のような15年過ごす。大勢死んだが自分は生還した。旧友に会いにくと言うが、明らかに楽しい理由ではなさそう。ありゃ~「黒猫」ってこんな内容だったっけ?違うよね。あたしゃ列車の旅のつれづれに、昔こんな怪事件がありましてな・・なんて博士が話し出すのかと思ってた。そのうち外は雨が降ってくる。じゃあ「オリエント急行殺人事件」みたいに列車が立ち往生して、ますます時間があるから話し出すのかと。でも違いましたわ。列車はちゃんと駅に着いて、ピーターとジョーン、博士とその使用人タマルの四人がバスに乗る。バスと言っても大型のタクシーみたいな感じ。四人目の人物はここで初めてうつる。黙っているし、最初は普通の客だと思ってた。二回目見たらバスに乗る前にちゃんと使用人と言ってる。

黒猫2

そう、一回見て感想書いたけど、何だか心もとなくてもう一度見たのよ。見逃していたところ、勘違いしてたところいっぱいあった。運転手は話好きで、ほとんど前を見ていない。案の定事故を起こし、車は横転。運転手は死亡、ジョーンは気絶、男三人は無傷。博士の目的地である屋敷はすぐ近くなので、ピーター達も一緒に行く。こういう映画だと屋敷は見るからにおどろおどろしい古びた感じになる。それでいて中はゴージャスな家具や装飾品。でもこの映画は違う。中は意外とモダンで現代的(←同じだって!)。細々とした装飾品はなく、すっきりしている。屋敷の主人であるペルツィヒ(カーロフ)をうつす時は、やはりどこかフランケンシュタインの怪物を意識している。と言うか、見る方がそういう目で見てしまう。ベッドから起き上がるが、シルエットになっている。横に女性(娘の方のカレン)が寝ているのだが、一回目はカーロフに気を取られているから気づかなかった。ドアから姿現わす時のうつし方も怪物を意識している(ように見える)。ずっと黙ってるし。前にも書いたがこの映画では二大怪奇スター共演している。あちこちで書かれているが、ルゴシはセリフがないからとフランケンシュタインの怪物役は断ったんだそうな。そでカーロフにこの役が回り、大当たり。そのためルゴシはライバル心を燃やし・・みたいな。まあこの映画を見ると、ルゴシには知的な雰囲気が漂い、怪物役は似合わなそう。やらなくて正解だったのでは・・などと私は思ったけどね。話を戻して博士がここへ来たのは決着をつけるため。昔ここは要塞で、ペルツィヒは指揮官だった。彼の裏切りで大勢が死に、博士は収容所へ。戦争が終わるとぺルツィヒは跡地に屋敷を立てた。彼は本来は建築家らしい。ついでにピーターも自分はミステリー作家だと自己紹介する。あまり売れてない感じで、それはラストでもわかる。そう言えば列車の中での会話で、料理張りぼてで、サラダは使い回しとか言っていた。式には金をかけず、その分新婚旅行に・・って感じだった。話を戻して、決着をつけるにしてもピーターがいたのではまずい。彼が寝て(次はナイアガラにしようとぼやくのがおかしい)、邪魔が入らなくなってから、ペルツィヒは博士を秘密の場所へ案内する。

黒猫3

その前にペルツィヒがその場所を歩き回るシーンがある。博士の妻カレンが生前の姿のまま保存されているのだが、他にも何人かいるように見えた。彼女達が誰で、どうやって保存してるのかは不明。そのうちの一人は死んでいるのに動いていたな。寝ているのと違って静止して立ってるのって難しい。もちろん博士は妻を見て驚き悲しむ。妻は夫が死んだとペルツィヒにだまされ、再婚したものの、二年で病死。娘も死んだと言うが、これもウソ。ところで例の四人目の男は全く出てこない私もあら?と思って前の方のシーン見返したりして。私の記憶違いじゃないよな、ちゃんと車に乗ってるし、ジョーンを運んでるし。屋敷には召使とメイドがいる。だから彼タマルもそっちの方にいたのだろう。列車ではコンパートメントではなく、普通車両に乗っていたんだろう。「魔の家」みたいに嵐の一の間にあれこれあって、朝には太陽が輝き、事件も解決して出発となるかなと思ったが、違った。憲兵達が事情聴取に来るが、こいつら運転手と同じで話好き。話し出すと止まらないアホ連中。ピーターはすぐにでもここから出たいのだが、彼らは自転車で来ているので一緒に連れていってもらうのは無理。ペルツィヒの車を借りようとすると故障していると言われる。電話も通じなくなっている。夜になって列車に乗れるまで待つしかない。もちろんペルツィヒが邪魔しているのは見え見え。彼の狙いはジョーン。話はそのうち彼が悪魔教の司祭で、彼女を儀式の生贄にしようとしているのだとなる。閉じ込められたジョーンの前に、娘の方のカレンが現われる。彼女はペルツィヒと結婚しているのだが、普通義父と結婚するか?彼女はジョーンに父親は生きていて、しかも今ここへ来ていると知らされる。夜になると儀式に参加するため信徒が集まり始める。どこからわいてきたんだ?ピーターは閉じ込められるが、カギはかけてないので抜け出す(おいおい)。彼は銃を持っていたが、それは向こうの召使が持ってる。新婚旅行に銃って・・。ジョーンの方は何かあるとすぐ気絶だ。何度気絶したんだろう。その間に事態は進行してくれる。起きている時は悲鳴をあげる。ピーターは銃を取り返し、悲鳴のせいで勘違いし、博士を撃つ。こらこらジョーンの命の恩人なのに何をやっとる。

黒猫4

儀式は結局どうなったんだっけ?信徒の一人がなぜか悲鳴をあげて倒れ、まわりが気を取られているスキに気絶したジョーンを・・。私はこの女性が娘のカレンだと思っていたけど違った。彼女はいつの間にか死体になってる。ジョーンと会った後で殺されたのかな?ペルツィヒはカレンを博士に会わせたくないのだ。会わせるくらいならいっそ殺してやれということか。それくらい博士を憎んでいるのだ。その博士はペルツィヒを拘束し、皮を剝いでやる~などとなる。何が何やらだ。屋敷の一部は昔の砲塔で、爆薬が仕かけられている。クライマックスが爆発だというのは見え見え。スイッチは博士自ら入れる。ペルツィヒはどうなったんだっけ?ああ、娘の死体を見て逆上した博士がペルツィヒを殺したんだな。はっきり見せないけど。ピーター達は何とか逃げ出し、そこへ運よくバスが通りかかる。何が起きたのかは謎のままだろう。あの憲兵達じゃ解決は無理。ラストは列車の中で新聞を読むピーター。そばにはジョーン。てっきり爆発事件の記事・・と思ったら違った。ミステリー作家である彼の新作「三重殺人」の書評が載っているのだ。ところが現実ではありえない話とかけなされていてガッカリ。でもくよくよしない。二人でいられるだけで幸せ。う~ん、何でこんなラストにしたんだろう。私は事件から何ヶ月もたって、自分の体験を元にミステリーを書き上げ、自信満々だったのに~と、そういうのだと思ってた。列車が走ってるのはアメリカ国内で、さんざんだった新婚旅行のやり直し・・って。でもブダペスト行きとか言ってる。じゃあ事件の直後なんだ。でも、ハンガリーあたりで読む新聞に、何で有名でもないアメリカ人の新作の書評が載るんだ?取り寄せたの?まあ、いいか。取ってつけたようなラストってのはこの映画に始まったことじゃない。ところで黒猫だが、博士が極度の黒猫恐怖症というだけの話。見ただけで錯乱し、ナイフか何かを投げて殺しちゃったしかも(ルゴシなので)十字架やニンニクを前にしたドラキュラに見えちゃうのがおかしい。カーロフの方をみんなほめてるけど、私はルゴシの方がよかったな。堂々としていて。あと、死ぬまで主人に忠節を尽くすタマルもよかった。さてこの映画実は64分しかない。でちゃんと80分くらい見た気分にさせられる。長けりゃいいってものではないのだ。