狂恋

狂恋(1935)

高名な外科医ゴーゴ(ピーター・ローレ)は、毎晩イヴォンヌ(フランセス・ドレイク)の舞台に通っている。花を贈り、特等席で魅入られたように舞台を見つめる。要するに大ファン。舞台ではイヴォンヌが拷問され・・何だか安っぽいメロドラマ。どうせならこの後ギロチンとなればいいのに、「パリの連続殺人」の冒頭みたいに。実は公演は今晩で終わり。ラジオではスティーブン(コリン・クライヴ)のピアノコンサートが流れている。イヴォンヌは舞台よりそっちの方が気になる。二人は結婚して一年だが、舞台のせいでなかなか一緒にいられない。引退したら二人で英国へ行くのだ。ちょっと遅くなったけど、それが新婚旅行。楽屋にゴーゴが訪ねてくる。お得意さんだからていねいにもてなす。彼は彼女が結婚しているとは知らなくて、引退と聞いてショックを受ける。彼女の等身大の蝋人形が運ばれるのを見て、買い取る。その後、スティーブンの乗った急行が事故を起こす。これにはナイフ投げのアパッチ・・じゃない、殺人犯ロロも乗っていて。さて、スティーブンは命は助かったものの、両手は押しつぶされ、切断しなけりゃならない。イヴォンヌはゴーゴなら何とかしてくれるかもしれない(私にほの字だし・・)と都合のいい・・じゃない、わらにもすがる思いで、スティーブンをゴーゴのところへ運ぶ。が見てもスティーブンの手は切断するしかないが、ふと処刑されたロロのことを思い出す。で、遺体を取り寄せ(←?)、難しい移植手術にチャレンジ。殺人犯の手というのは内緒。手術は成功するが、その後の治療には時間もお金もかかる。家計は火の車に。ここらへんまではゴーゴも何とか愛する人の役に立ちたいと思っている。医師としての彼は子供にやさしく、貧しい者からは金も取らずに手術する。多少変わったところがあるとは言え、他の医師や看護師からも信頼されている。ちなみにウォン医師役ケイ・ルークは「燃えよ!カンフー」の盲目の老師。スティーブンは手に違和感を持つ。元のような演奏ができず、あせる。宝石商を営む継父に金の無心を頼むが断られ、バカにされる。スティーブンは自分がナイフを投げたり、殺人の衝動を感じることに恐怖を覚え始める。

狂恋2

ゴーゴはイヴォンヌに呼ばれ喜ぶが、話はスティーブンのことばかり。これじゃあが怒るのも無理ないね。まあ私はローレのファンなので、どうしてもゴーゴの味方したくなりますけど。困った時だけ頼って、しかも愛情はお断り。友人としてならいいわよなんてムシのいい話。スティーブンの悩みについてはゴーゴも予想外だったようで。いくら殺人犯の手を移植したからって、勝手にナイフ投げたり、人を殺したくなったりなんてありえない。それでなくてもピアノがうまく弾けないとあせってるし、治療費で妻に迷惑かけてるのも精神的な負担に。ところで家計が苦しいと言いつつ、何でイヴォンヌは働かないのかね。ゴーゴは、スティーブンはしばらく一人になった方がいいとイヴォンヌに勧めたりするが、下心を見透かされて、きっぱり拒絶されてしまう。たぶんこの時ゴーゴの中で何かが壊れたんでしょうなあ。彼女投げつけられた言葉が何度となく蘇り、そのせいでその後の彼は手術もできない。その後宝石商が殺される。少し前金のことで口論し、ナイフ投げつけたのを店員が見ていたから、そのことを証言。スティーブンは指名手配される。そのスティーブンは男に呼び出され、自分が他人の手を移植されたのを知る。継父を殺したのは自分かも・・と、警察にも大人しくつかまる。この謎の男はゴーゴの変装。うまくいったと大笑いしながら自宅へ帰ってくるが、家の中にいたのはイヴォンヌ。もちろんゴーゴは蝋人形だと思い込んでいて。彼がみんなしゃべっちゃったため、彼の企み全部わかっちゃった。子供の患者、酒好きな家政婦、その肩にとまったオウム、取材のためウロチョロするアメリカ人記者など脇役がいい。クライマックスではスティーブンの投げたナイフがゴーゴめがけて飛び、イヴォンヌの命を救う。頭のおかしくなったゴーゴの幻覚の中で、他者のために生きるのはもうやめろとか言っていたけど、きっと彼は患者を助けようと力を尽くし、自分の欲望を押さえつけながら生きてきたのだろうなあ。あの後スティーブンはどうなったのかな。ピアニストとして再起できたのだろうか。作曲など別の道を見つけて生きていくような気がする。