刑事コロンボ

刑事コロンボ1 殺人処方箋

記念すべき一作目。びっくりしたのはコロンボの格好。髪はきちんとしてるし、ヒゲはきれいに剃ってるし、コートはよれよれじゃない。まだやせてるし、ステキと言ってもいいくらいだ。どこらへんからモジャ髪、よれよれコートになったんだろう。NHKで時々やっていたようだが、全然見てなくて。これでも初放映時はちゃんと見て、ノベライズも何冊か読んで・・。でも最初のうちだけだったな。今回のゲストはジーン・バリー。精神分析医なので、オープニングはロールシャッハテスト?なかなか凝ってる。レイ(バリー)は妻キャロルを殺害。若く美しい愛人ジョーンができたせい・・と言うより財産目当てか。ジョーンは無名とは言え女優なので、キャロルに変装し、レイのアリバイ作りに協力。練りに練った計画だし、冷静なレイは尻尾を出さない。とは言え見ていて首を傾げることばかり。犯行時に窓を開けているのが気になる。きちんと閉めるはずだ。夜だから明かりがついてる。カーテンにカゲがうつらないよう気を配るはずだ。強盗に見せかけるためガラスを割るのに使う道具も、もっと適当なものがあるはずだ。キャロルがちゃんと死んでるかどうか確かめないのもおかしい。レイとジョーンが電話であれこれ話すのも危険。と言うかジョーンのようなタイプはレイにとっては命取りだな。「会いたいのすぐ来て」とか呼び出すし、しばらく連絡するなと言っても電話かけてくる。レイじゃなくても始末したくなる(おいおい)。バリーはいやに老けてて、ジョーンが夢中になるかね・・ってくらい魅力なし。同じことを何度もくり返し、相手を追いつめていくコロンボのやり方は、単調なのでそのうち飽きてくる。精神分析医ということで、レイがコロンボを分析してみせたりする。うぬぼれやの彼は、優越感を満足させる機会は逃さない。得意になってるうちにボロが出る。簡単に崩れるかと思われたジョーンだが、意外な抵抗を見せる。ここでのコロンボは本当に嫌なやつで、彼女を応援したくなるほど。でも結局自分を犠牲にしてまで救うほどの価値がレイにはないと知って・・。彼が彼女のことなんか愛してないと知って・・。まあそんな結末より、売れない女優が何でプールつきの豪邸に住めるのか、あたしゃそっちの方が気になりましたが。レイがお金出した?キャロル役の人は雪村いづみさんに似ている。他にウィリアム・ウィンダム。

刑事コロンボ2 死者の身代金

今回の犯人役はリー・グラント。「オーメン2/ダミアン」に出ていた。あの頃で50歳くらい。若さと美貌を保っていたけど、この作品でもそう。夫の名声を利用し、自分も有名弁護士となったレスリー(グラント)。離婚を切り出され、夫ポールを殺害。誘拐されたように細工し、身代金30万ドルを要求。自作自演でうまくFBIをだまし、冷静なので尻尾を出さない。彼女の誤算はコロンボの登場と、まま娘マーガレット(パトリシア・マティック)の帰国。レスリーの特徴は男が絡んでいないこと。普通なら若くてハンサムな助手のマイケル(ジョン・フィンク)と恋仲になり、邪魔な夫を始末、ついでに金も・・となる。しかしマイケルとは全く恋愛感情なし。彼はレスリーを尊敬している。ってことはレスリーは金と名声がすべてなのかな。ちらちらはさまれる仕事ぶり見ると、訴訟に勝つためにはどんな手も使う・・みたいな。でもものすごく汚い手口というわけでもない。悪徳弁護士ならマイケルだってついてこないはず。ポールが離婚切り出したのなら慰謝料とかがっぽり取れるはずで(別に彼女が浮気とかしたわけじゃなし)、殺さなくても・・と思うが、たぶん彼女はプライドを傷つけられたのだ。離婚を切り出すとすれば、それは自分の方からであって、ポールの方から言い出すなんて許せない!・・とか何とか。夫を殺されても気丈にふるまうけなげな女性という評判も欲しかったろう。コロンボ以上に手強い相手がマーガレット。あまりにも生意気なので、そのうちレスリーが気の毒になってくる。彼女は身代金を工面するため、マーガレットが相続するはずの財産まで全部処分。だから彼女は今までのようにのほほんと暮らしている場合じゃない。たぶん見ている人は「おまえも働け!」とか思うはず。身代金は番号を控えてあるから使えない。殺人を黙っているから金を寄こせ、そしたら大人しくスイスの寄宿学校へ戻る・・と言うマーガレットに渡したのはそのお金。スイスで使うから足がつかないとでも?レスリーらしくない誤算。あたしゃてっきり父をなくしたショックでノイローゼになって自殺・・と見せかけてマーガレットを始末。そこをコロンボに押さえられるんだと思ってた。FBIのハモンド(金髪の方)役ポール・カーは、「爆撃命令」等に出ている。

刑事コロンボ3 構想の死角

べストセラーミステリーを出し続けるケン(ジャック・キャシディ)とジム(マーティン・ミルナー)。離婚を切り出したのはジムの方・・って違うがな!コンビ解消。元々作品はジムが一人で書いていて、ケンは宣伝とか交渉を担当。大ゲンカの後ケンが和解を申し込んでくるが、彼はジムの殺害を企んでいた。後でわかるが、二人はお互いを受取人にして生命保険に入っている。解消の理由は、ジムがミステリーではなく、社会派小説を書きたいから。それよりケンが印税ちょろまかしていたとか、浪費家で借金まみれとか、そういう方がわかりやすくていいのに。社会派小説書こうと資料集めていて組織の目にとまり、プロの殺し屋が差し向けられた・・なんていうケンの主張は弱いと思うが・・。ジャックは日本ではデヴィッド・キャシディの父親としか知られていないかも。ジャックが再婚したシャーリー・ジョーンズとデヴィッドは、「人気家族パートリッジ」の出演者としてテレビジョンエイジによく写真が載っていた。シャーリーとの間に生まれたのがショーン・キャシディ。ジャックは「コロンボ」には犯人役で三回出ていて、ガイドブックには名犯人って書いてあるけど・・実際そうなんだろうけど・・どうもしっくりこない。真っ白な歯がやたら目立って、いつも引きつったような笑顔。IMDbでデヴィッドの最近の写真見ると、若い頃はあまり似てなかったのに今ではジャックにそっくりだ。ジャックは自宅の火災で49歳で死亡。晩年はシャーリーとも別れたようで。他にアルコール依存症、精神的な病等あったようで。リリー役バーバラ・コルビー(この作品で一番インパクトあるのは彼女だろう)も、銃で撃たれたか何かで36歳で死亡。ミルナーは「ルート66」はさすがに見てないが、「特捜隊アダム12」(の再放送)は見たことある。ジョアンナ役ローズマリー・フォーサイスは、この頃はミア・ファローに似ている。ジョアンナは夫ジムとの電話中銃声を聞き、心配でいてもたってもいられない。コロンボは同情して彼女を家まで送り、オムレツ(?)を作ろうとする。そうよ、「死者の身代金」のレスリー、ジョアンナみたいにふるまえばコロンボに疑われずにすんだのよ!ラスト、ケンが落ちるところはアッサリしすぎかな。もうちょっと粘ると思ってたから拍子抜け。監督がスティーヴン・スピルバーグということで、いろいろ持ち上げてるけど、さほどおもしろくはない。

刑事コロンボ4 指輪の爪あと

あれは事故だった、殺意はなかったと言い訳する犯人は多いが、今回のブリマー(ロバート・カルプ)は100%言い逃れとも言えなくて。まだ4話しか見てないけど、今までの犯人は前もって計画練ってた。今回の彼は思わずカッとして・・。だからって殺人に変わりはないけど。老人が若い嫁もらうとたいていトラブる。老人が金持ちの場合は特に。ケニカット(レイ・ミランド)は妻レノーラの浮気を疑い、ブリマーに調査を依頼。奥さんは潔白ですという報告にまず思うのは、彼とレノーラの仲。ケニカットの財産目当てに共謀して・・。往年の大スター、ミランドなら被害者にぴったり!でも違った。ブリマーはレノーラに恩を売り、彼女を通して有力者ケニカットから情報引き出したいようだ。今回の調査で彼はブリマーを信頼したから、これからもいい仕事回してくれるはず。それでいいじゃん・・と思うが、彼は野心家、それだけじゃ満足できないらしい。元刑事で、今ははやっている探偵社の社長。最新の設備に一流スタッフ・・金がかかるのだ。レノーラは彼の要求はねつける。浮気のこと正直に話すわ・・だってさ、バカだよねえ。そんなことしたらブリマーがウソの報告したことばれちゃうじゃん。ダンナに告白してからこっち来ればいいのに。最初のうちコロンボには犯人の目星全くつかない。ケニカットは「潔白」の報告信じてるから調査依頼のこと黙ってるし。ところがブリマーの方からのこのこ出てきちゃった。警察とは別にぜひ私どもに調査を・・。彼を見たとたんコロンボがうれしそうになる。突破口が開けたぞ!手相見るふりして指輪してるの確かめ、もう確信(レノーラの顔には不審な傷があった)。不倫相手アーチャー役ブレット・ハルゼーはラテン系の香りのするハンサム。テレビのゲスト出演でよく見かけたが、代表作(たぶん)「蝿男の逆襲」は見てない。ガイドブックによるとノベライズでは彼は口封じのため殺されるらしい。映画ではブリマーがいつも汚い仕事させていると思われるリオを呼び出すので、アーチャーのことが心配になるが、何も描写されない。リオがなぜ呼び出されたのか不明なまま終わってしまうため、すっきりしない。ブリマーの部下デニング役エリック・ジェームズは若くてハンサム。アップでうつして欲しかった!気になったのはレノーラの死体を捨て、ブリマーが車で走り去るシーン。くっきりタイヤの跡が・・。たぶん靴の跡も・・。消さんかい!

刑事コロンボ5 ホリスター将軍のコレクション

退役した英雄ホリスター将軍(エディ・アルバート)の愛用品が展示されることになった。おりもおり、監査が入る・・とあわててやってきたのが海軍大佐ダットン(ジョン・カー)。将軍が経営する会社とダットンとの癒着が明るみに出たら大変。自分はスイスへ逃げる・・とダットンは言うが、小心者なのですぐつかまるだろうし、自分とのこともしゃべってしまうだろう。そう察知した将軍は、迷わずダットンを殺害。偶然それを目撃したのがヨットで沖を走行中のヘレン(スザンヌ・プレシェット)。彼女は離婚して精神が不安定なので、同乗していた母(ケイト・リード)は信じない。ヘレンは発砲事件を見たと警察に通報するが、相手は英雄なので、捜査にはコロンボが差し向けられる。アルバートは「農園天国」に出ていた。確かNHKでやっていたと思う。NHKなら田舎でもうつる。プレシェットは日本人好みの清楚な美女で人気があったが、輝きは一時だけ。この作品の頃だってまだ30代半ばのはずだが、どうも輝きがない。くすんでいるのだ。母親役の人はどこかで見たような・・。「アンドロメダ・・・」のレヴィット役の人だ。プレシェットとは7歳くらいしか違わないので、母娘というのはちときつい。カーは一生「お茶と同情」の・・と言われるのだろう。いいんだか悪いんだか。今回よかったのは、しばらくの間ダットンがどうなったか我々に見せないこと。調べに来たコロンボは手がかりが全くつかめないが、我々も同様。ダットンはどうなったんだろう・・と興味が持続する。結局将軍は自分から墓穴を掘る。勝つには先制攻撃、それと相手をよく知ること。現役時代そのままの彼は、動き回らずにはいられない。ヘレンを見つけ出し、巧みに近づく。彼女は目撃したとは言っても二人の顔は判別できない。将軍が何もしなければ・・でも、それだと映画にならないけど。将軍がヘレンをどうするつもりだったのかは不明。彼の性格から言って、彼女に恋したと言うより、邪魔になりそうなら即始末・・の方が彼らしい。彼らがいくつかは不明だが、アルバートとプレシェットでは30歳以上年が違う。ヘレンがシワシワの将軍によろめくとは思えん。あたしゃてっきり母親の方に接近するかと・・。

刑事コロンボ6 二枚のドガの絵

このエピソードはラストが有名。指紋と手袋。私もここだけは覚えてる。美術評論家デイル(ロス・マーティン)がおじのルディを射殺。美術学生トレイシー(ロザンナ・ハフマン)に協力させ、自分はアリバイばっちり。ルディは著名な絵画コレクター。中でも二枚のドガの絵は非常に値打ちのあるもの。マーティンはテレビの「ワイルド・ウエスト」で知られるが、見たことなし。ハフマンはケイト・ジャクソン似。額や耳を隠す、顔のまわりを囲むような鬱陶しいヘアスタイルに時代を感じる。弁護士フランク役はドン・アメチー。いかにも往年の二枚目風。年を取っても品がある。「コクーン」は見たことなし。デイルのルディ殺しは意図がよくわからないが、そのうちわかってくる。ルディの死後は絵画の管理はデイルに任される・・だって専門家なのだから・・と、誰もが思っていたが、遺言書が書き換えられ、元妻エドナが相続人になる。なぜ?絵には無知だし危なっかしい性格・・と、執事もフランクも当惑する。コロンボはもちろんデイルに目をつけるが、彼がルディを殺したって絵はエドナに行くだけだ。エドナ役キム・ハンターは(素顔でも)「猿の惑星」のジーラとあまり変わらない。目を見開き、落ち着きがなく・・。そのうちエドナは意外なことを話し出す。すばらしい作品は自分だけで楽しむのではなく、多くの人に見てもらうべきだ。秘蔵するのではなく、寄贈することにしたら?エドナの勧めにルディも同意。それで遺言書を書き換えたのだ。それを知ったデイルは・・。ドガの絵をエドナの家に隠し、発見されるよう仕向けるなどいろいろ細工。彼女が逮捕されれば自分がコレクションを相続できる!彼女は陥れるには最適のポワ~ンとした性格。それでいてルディが収集を始めるきっかけを作るなど、決して審美眼ゼロの素人ではなくて。そういう意外なところはよかった。で、有名なラストだが、あの時指紋がつくほどカバンに手を突っ込んでいたっけ?昔と違い、今はすぐ確認できる。ああホントだ、突っ込んでる。でもあの時無理にでも絵を見ていたら・・事件解決していましたけど?コロンボの上司(たぶん)ワイラー課長役でバーニー・フィリップスが出ていたのがうれしかった。「爆撃命令」のカイザー軍医ですよ!

刑事コロンボ7 もう一つの鍵

今回のべスはちょっと気の毒だ。長年兄ブライスから押さえつけられ、鬱屈している。母親も何かというと兄と比較し、ボロクソに言う。二人揃って反対しているのが、ピーターとの交際。ブライスは広告会社社長で、ピーターは会社の法律顧問。絶対財産狙い、それがわからないのか・・と言われたって恋は盲目、べスは聞かない。ブライスはとうとうピーターをクビにすることに。そんなことはさせないわ・・と、べスは兄殺害を決行。泥棒と間違えた・・過失だ・・いろいろ細工し、芝居し、査問会では首尾よく過失ということで片がつく。そこまではよかったが、重しがはずれたべスは暴走し始める。買い物しまくりーの、私が社長よ文句言うやつはクビーの、ピーターを無視ーの。何でもうちょっと慎重に行動しないのか。元々はブライスと母親にピーターを見る目がなかったってのが一番の原因ですな。野心家なのは確かだが、それを丸出しにするほどバカじゃない。常識はわきまえてるし、べスのこと愛してる。会社をクビになっても彼なら他で成功できるし、べスが兄と縁を切り、無一文になったとしても受け入れてくれるだろう。でもべスは自分でも社長は務まると思ってたし、貧乏も嫌だった!兄を悼むそぶりも、自分の過失を悔むそぶりも見せないべス。そりゃコロンボや母親は疑いますわな。ピーターでさえ彼女の変身にはついていけない。彼女には会社経営に必要な慎重さも、他人への配慮もない。コロンボが終わり頃になって持ち出す疑問・・べスとピーターとの証言の食い違いは、今頃になって?という気もする。査問会の時は気づかなかった?べス役スーザン・クラークは「地球爆破作戦」等に出ている。目の色が薄く、顔が角張っていて、あまりセクシーな感じはしないが、いちおう美人。この作品ではいろんなヘアスタイル、ファッションを見せてくれる。ブライス役リチャード・アンダーソンはテレビの「600万ドルの男」や「地上最強の美女!バイオニック・ジェミー」でおなじみ。一番驚くのはピーター役レスリー・ニールセンだろう。どうしても・・いつギャグをかますのか・・と待ちかまえてしまう。でも今回のキャラは分別のある真面目なキャラなのだ(何でブライス達は反対したのだろう)。真面目、知的キャラは「禁断の惑星」でも見てるんだけど、今回の方が印象的。

刑事コロンボ8 死の方程式

今回の犯人役はロディ・マクドウォール。私は彼はもっと長生きすると思ってた。70かそこらで病死なんてもったいない!彼の「フライトナイト」がリメイクされたのにはびっくりだ。主人公チャーリーが「T4」のアントン・イェルチン、ヴァンパイアのジェリーがコリン・ファレル。マクドウォールがやったヴィンセント役はデヴィッド・テナント・・この人は知らないな。特殊メイクとか飛躍的に進歩したもの見せられるんだろうけど、ああ・・でもマクドウォールにも出て欲しかった。CGでもいいから!大企業スタンフォード化学の創始者の忘れ形見ロジャー(マクドウォール)は、研究と称してくだらないことに大金を使い、昔から素行も悪い。義理の叔父で社長のバックナーは、ロジャーの追放を決意。それを知ったロジャーは、先手を打って事故死に見せかけ、叔父を殺害。自分にだって社長は務まる。彼はただの道楽息子ではない。化学の知識は豊富だし(叔父の葉巻ケースに細工して殺害)、弁護士の資格も持ってる。彼はたぶん大した努力もせず、何でもできてしまうのだ。一種の天才なのだ。そのせいで一つのことをじっくりできない。何よりもまわりの者がバカに見えてしまう。誰かの下で真面目に働くなんてまっぴら。社長が自分を追放するなんて許せない。社長秘書ヴァレリー(アン・フランシス)はロジャーに首ったけだが、彼の方は計算ずく。クラブで飲んでいてもダンサーに目をやるので、彼がヴァレリーを愛してない・・利用しているだけなのがわかる。ヴァレリーは利用されたあげく、配置換えになるが、自分がなぜそんな目に会うのかわからない。ロジャーは叔母のドリス(アイダ・ルピノ)もだましまくる。ドリスはしっかりした女性だが、甥には甘い。目が曇り、ころりとだまされる。どちらかと言うと女性の方が簡単にロジャーにだまされるようだ。フランシスを見られるのは懐かしく、うれしいが、この頃40過ぎてる。それでうぶで純情なカマトト秘書というのはちょっと妙な気もするが、ヘアスタイルと言い、服装と言い、それらしく見えるからいいか。それを言うなら同じくとっくに40過ぎたマクドウォールのお坊ちゃまぶりも妙なんだけどさ。コロンボのこと全然書いてないけど印象薄い。他にウィリアム・ウィンダムが出ていた。

刑事コロンボ9 パイルD-3の謎

今回はピーター・フォークが初監督。出来は普通。最初から最後までうつしすぎ~と感じたところがいくつかあった。まあ新人監督にはよくあること。「いつものコロンボと違う」とか何とかガイドブックには書いてあって、まあ・・そうかも。建築家マーカム(パトリック・オニール)は大実業家ウィリアムソン(フォレスト・タッカー)の妻ジェニファー(パメラ・オースティン)に取り入り、”ウィリアムソン・シティー”建設に取りかかる。ところがそれに気づいたウィリアムソンは激怒。中止しろ、金は出さんと宣告。マーカムもマーカムだが、彼も彼。一部の人にはそれこそ殺してやりたいくらい憎まれているのでは?マーカムは天才肌でエネルギッシュ、ウィリアムソンはワンマン。どちらも我が強く、折り合うということがないから、うまくいくはずがない。ウィリアムソンは先妻ゴールディ(ジャニス・ペイジ)とは今でも連絡取り合っている。若い妻ジェニファーはお飾り的存在。夫が仕事で飛び回っているので、パーティ、ショッピング、テニスなどで時間潰すしかない。しかも夫はペースメーカーつけてる老人。マーカムと恋に落ちたって不思議じゃないが、そうならない。彼女はともかく彼の方にその気なし。彼は何よりも自分の夢を実現したい。ジェニファーはただの資金源。オニールを見ていると何となくクリストファー・リー思い出す。顔が似ているわけではないが、オニールもドラキュラ似合いそう。ジェニファーは後半出てこない。血のついた夫の帽子が発見され、ショックを受けたのだ。でもこれは捜索を促すためゴールディが自分の足を傷つけ、血をなすりつけたもの。彼女だけはウィリアムソンに何かあったのだ・・と確信している。で、それはいいのだが、足をひどく傷つけたはずなのに脚線美見せびらかしてるのはおかしくない?ウィリアムソン殺しは描写されないが、マーカムの意図はわかる。わざとコロンボにビルの基礎掘り返すよう仕向け、何もないことを証明した後、そこへ死体を投げ込むつもりなのだ。死体がどこにあるかわからないので、コロンボは猿芝居に付き合ったのだ。工事現場のシーンは非常に大がかり、反対に役所のシーンはちまちま細かい。両方こなしたんだから新人監督としては偉いよな。

刑事コロンボ10 黒のエチュード

指揮者アレックスは楽団のオーナー、リジーの娘ジャニスと結婚しているが、三ヶ月ほど前からピアニストのジェニファーと浮気している。困ったことに彼女は、日蔭の存在はいや、離婚して自分と一緒になってくれと言い出す。築き上げた名声も、財産家の義母の後ろ盾も失うアレックスの気も知らず、才能があるから大丈夫よと無神経。まあ自分によっぽど自信があるんだろうが、自分から棺桶に足突っ込むタイプで、同情する気にもなれん。アレックスはコンサートの直前ジェニファーの家に行き、自殺に見せかけて殺す。流れとしてはいつも通りで、特に目新しいものはない。アレックスは余計なことをしたり、しゃべりすぎたりで墓穴を掘る。ジャニスはジェニファーが騒ぎ立てても、アレックスを見限ったりしないと思う。ハンサムで魅力的なアレックスは、女性の方でほうっておかないとわかってる。アレックスは正直に打ちあければよかったのだ。ウソをついたり人を殺したりするのは、いくらジャニスでも許さない。犯行がばれてから、愛してるなんて長々と弁解するのも潔くない。初期の段階でジャニスは夫がジェニファーの電話番号知っていたのに驚き、不審の念を抱く。だからある程度のことは覚悟していただろう。さて今回はいつもより時間が長く、そのぶん余計とも思われるシーンがくっつけられている。若くて美しくて才能もある女性の自殺への疑問、男がいるはずだという確信。アレックスの豪邸に対する嫌味や、質問攻め。ちなみにコロンボの年収は1万1千ドルらしい。アレックスにはしつこく食い下がるが、ジェニファーに捨てられたポールにはあっさり対する。いくらポールが怪しいように見えてもだ。アレックス役ジョン・カサヴェテスは早すぎる死が惜しまれる。リジー役はマーナ・ロイ。ジャニス役はブライス・ダナー。おなかが大きいのかな?と思えるシーンもあるが、グウィネス・パルトロウが入ってたらしい。でもテニスのシーンがあって、その時はおなか大きくないし・・??この頃のダナーは今のグウィネスにそっくり。育ちのいいお嬢さん役がぴったりだ。ジェニファー役アンジャネット・カマーは、浅黒い肌と黒髪が印象的な美女だが、今回は惜しいことにシワが目立つ。ポール役はジェームズ・オルソン、楽団の理事エヴェレットは「ポリアカ」シリーズのジョージ・ゲインズ、他にノリユキ・パット・モリタ。いやホント豪華な顔ぶれだ。

刑事コロンボ11 悪の温室

浪費家で、スキー教師と浮気している妻キャシーだが、夫トニーは別れる気なし。金の力で妻を振り向かせようと、叔父のジャービスと誘拐を仕組み、身代金30万ドルを要求。トニーには父の遺産があるが、ジャービスと銀行が管理しており、自由にならない。そのせいでいつも金欠。彼は悪人ではないが、頭が回る方でも意思が強い方でもない。たぶんジャービスにそそのかされ、計画に乗ってしまったのだろう。ジャービスは温室で高価な蘭を育てている。一鉢1200ドルと聞いて驚くコロンボ。そりゃそうだろう、前回彼は年収1万1千ドルと言っていたし。ジャービスは金持ちだが、それでいて甥の財産狙ってる。無能な甥や浪費家の嫁の手に渡るのが許せないのか。頭のいい彼は毒舌家でもあり、ついついしゃべりすぎてしまう。金の受け渡し場所に現われたトニーは、変装が足りないようだ。今ならストッキングではなく、スキーマスクをかぶるだろう。ジャービスはトニーを殺すのに自分の拳銃・・しかも以前温室に侵入しようとした男を撃ったという過去のある・・を使う。後でトニーの浮気相手(実際はキャシーへの当てつけのための存在で、ただの話し相手)グロリアの話をヒントに、キャシーに罪をなすりつけようとして、かえって墓穴を掘る。全体的に手がかりを残しすぎで、コロンボは手がかりが多すぎるといぶかしむ。ジャービスは自分の頭のよさや行動力に自信持ちすぎ。演じているのはレイ・ミランド。トニー役はブラッドフォード・ディルマン。長めの髪が似合わない。キャシー役サンドラ・スミスは「インターン」でしか見たことないが、「コロンボ」にも出ていたのね。かちっとした知的な感じで、赤やオレンジのハデな服がグリーンの瞳によく映える。浮気相手ケン役ウィリアム・スミスは大柄で、ジョン・コーベット風味。テレビシリーズ「ラレード」に出ていた人だが、見たことなし。キャシーには本気かと思ったら、トニーに5万ドルで別れてくれないかと言われ、承知していたことがわかる。コロンボったらさりげなくばらしちゃって・・。今回コロンボには警察大学出のウィルソンという若手刑事が付く。最新機器を取り入れるなど張り切っているが、コロンボは邪魔にはしないが口実を設けては適当に遠ざける。逆にグローバー刑事などなじみの刑事とはしっかり連携。グローバー刑事役ロバート・カーネスのような渋いタイプは私好み。

刑事コロンボ12 アリバイのダイヤル

ロサンゼルス・・日曜日の午後・・フットボールの試合。チームのオーナー、エリックは酒や女にうつつを抜かすダメ男。やり手のゼネラル・マネージャー、ハンロンは試合の合間にスタジアムを抜け出し、プールにいたエリックを氷で殴り、溺死させる。凶器は溶けてなくなるから、足を滑らせ、頭を打って溺死・・事故死となるはずだった。呼び出されたコロンボは、試合が気になって気もそぞろだが、ささいな点も見逃さないのはさすが。なぜデッキが濡れているのか。誰もがプールの水のはね返りだと気にとめないが、濡らしているのは塩素分のない普通の水だ。今回気になったのはハンロンの動機。フットボールにバスケット、その上今度はホッケーチーム。ハンロンの野望は底なしだが、エリックが相手だから好きなことができるのも確か。最初は反対していても、そのうちめんどくさくなり、君の言う通りにするよ・・となるのが普通。エリックが死ねば妻シャーリーがオーナーになるのだろうが、ハンロンに彼女への恋愛感情があるわけでもない。エリックに内緒で負債を作り、ばれそうになったとか、密かにシャーリーを想ってるとか、エリックが改心してまともになりそうとか、何かしらはっきりした動機があった方がよかった。コロンボが彼に目を付けた理由は何だったのだろう。ラジオのボリュームを下げたとか、試合の大事なところで電話かけたとか、アリバイを崩す時計の時報とか、たぶん今なら決定的な決め手にはならないだろう。人はいつも同じ行動取るとは限らないし、気にかかることがあれば試合の大事なところでも電話かけるし、時計がいつも合ってるとは限らない。電話の盗聴の件はわかりにくいな。ハンロン役はロバート・カルプ。エリック役はディーン・ストックウェル。エリックの弁護士ウォルター役はディーン・ジャガー。シャーリー役スーザン・ハワードはグウィネス・パルトロウ似。ろくでなしのエリックを心から愛していたようだが、あのエリックの様子から見ると説得力に欠ける。イヴ役ヴァレリー・ハーパーは「湖畔殺人事件」のヒロインだな。チームのコーチ、リッゾ役はジェームズ・グレゴリー。コロンボに対する彼の態度を、ハンロンと比べてみるのも一興だ。やましいことのないリッゾは態度も表情も自然。やましいことがあると、どんなに用心していても表に出てしまうものなのだよ、ハンロン君。

刑事コロンボ13 ロンドンの傘

とうとう「コロンボ」も海外ロケ!ロンドンを訪れたコロンボのおのぼりさんぶりが楽しい。「マクベス」の公演前日、誰にも知られずリリー(オナー・ブラックマン)の楽屋を訪れたサー・ロジャー。リリーは夫ニック(リチャード・ベースハート)と共謀してロジャーを誘惑。公演にこぎつけるが、彼はなぜかだまされてることに気づいたようで。いい年こいてリリーのようなウバ桜によろめくロジャーには同情する気も起きない。スポンサーならスポンサーらしく、公演を大成功させ、大儲けすりゃいいのに。二人を追放するのはその後でもできるでしょ。それなのに頭に血が上って公演は中止だの、二度と舞台に立てなくしてやるだの、大根役者だの。役者が一番聞きたくない罵声浴びせる。彼の死は事故だけど、夫妻は死体を家に運び、階段から落ちたように見せかける。その後もあれこれ余計なことしてコロンボの注意を引く。彼は研修のためロンドンを訪れていて。担当のダーク警視正(バーナード・フォックス)がたまたまロジャーの身内で。弔問に同行したコロンボが不審な点に気づいて。夫妻は大事な公演を控えているのだから、それに集中すればよかったのだ。でも棺にすがって泣いてみせたり、記者に演説ぶってみたり、ついついやりすぎてしまう。自分にスポットライトが当たるよう仕向ける役者の性(さが)。そのくせ首飾りが引きちぎれて床にかけらが落ちたのを掃除しない。コロンボはかけらに気づいたのなら、ロジャーの靴の裏調べるはずだが・・。途中で執事のタナーが二人をゆすりに現われた時、たぶんほとんどの人はコロンボの差し金・・と思ったはず。主人の仇を討つため、喜んで一芝居打ったのだろうと。でも・・違った。本当にお金目的で・・でもニックに殺されちゃって、ロジャー殺しの犯人にさせられちゃって。このエピソードで一番印象に残るのはタナー。きちんとした身なり、やわらかな物腰。スキがなく、何も知らないように見えて、みんな知ってる。夜遅く・・寝る前には彼もやはり人間・・寝酒をちびちび。夫妻の突然の訪問にも愛想よく対する。その後でコロンボが来た時にはさすがに・・。あれ?らしくない。これが善人に見えて実は・・の伏線か。タナー役ウィルフリッド・ハイド=ホワイトは知らない人。それにしてもロンドンにいるコロンボには捜査権はないし、夫妻を追いつめる真珠も証拠捏造に当たる。現代ならどうなんでしょ、裁判で勝てます?

刑事コロンボ14 偶像のレクイエム

アン・バクスターは当時いろんなのにゲスト出演していた。彼女とジャネット・リーは、ホントよく見かけたな。子役から大女優に、そして今はテレビで活躍するノーラ(バクスター)。秘書のジーン(ピッパ・スコット)が、ゴシップ記者パークス(メル・ファーラー)と結婚する気なのを知り、大ショック。パークスはダニのような男で、ノーラも過去の秘密をネタにゆすられている。ガソリンをまき、パークスの車を炎上させ、始末完了・・のはずが、死んだのはジーン。まさか車を交換していたとは・・。見ている者全員手違いだと思うが、そのうちノーラが本当に始末したかったのはジーン・・とわかる。難敵に見えるパークスだが、彼なら金で黙らせることができる。と言うか、彼にも妻との離婚とか弱味はある。だからちっとも怖くない。しかしジーン・・恋する女となるとそうはいかない。パークスは以前映画で出した損失を会社におっかぶせたことでノーラをゆすろうとしたが、彼女は撮影所のオーナー、シモンズ(ケヴィン・マッカーシー)に真実を告白。彼も了解ずみなので、パークスがゆすったって無駄。でもノーラが本当に隠しておきたいのは、そのことじゃなかった。ノーラの夫の失踪は12年前。ジーンはそれ以前から・・18年前から秘書をしている。この数字で我々はぴんとくる。そりゃ若い女優に手を出したダンナの方が悪い。殺意があったわけじゃない、はずみで・・。だからジーンは黙っていたのだ。でも18年ということは、彼女ももういい年で。年くってから男にのぼせると何をしゃべるかわからん。何しろ相手は人の弱味でメシ食ってる輩(やから)。いくら忠実なジーンでも信用できるものか。この・・パークスと見せて実はジーンが本命、詐欺と見せて実は殺人の隠蔽が目的という二重構造はよかったと思う。撮影所所長ファロン役はフランク・コンバース。何のために出てくるのかわからないようなキャラ。コンバース自身印象の薄い人。テレビの「コロネット・ブルーの謎」で主役やったけど、あれって今考えても意味不明。意味不明という点では「プリズナーNo.6」と双璧。他に衣装で何度もアカデミー賞とったイーディス・ヘッドが出てくる。

刑事コロンボ15 溶ける糸

医師のメイフィールド(レナード・ニモイ)は新薬を早く発表したいが、ハイデマン(ウィル・ギア)は慎重。ぐずぐずしてると手柄を横取りされてしまうとあせるメイフィールドは、ハイデマンの手術に細工をする。それを看護婦のシャロン(アン・フランシス)に気づかれ・・。心臓外科医が心臓手術を受けるはめになるなんて皮肉だが、それよりもっと皮肉なのは、殺す相手を救うはめになったメイフィールド。さて、シャロンを始末した彼は、彼女のアパートを引っかき回し、警察が調べる時見つかるようモルヒネのビンを置いてくる。シャロンは以前更生施設でボランティアをしており、患者のハリー(ジェイルド・マーティン)と親しかった。メイフィールドは麻薬欲しさのハリーの犯行ということにしたかった。コロンボが思ったように動いてくれないと、今度はハリーを中毒に見せかけて殺す。見ていてもハリーの生死は不明なんだけど。「死んだ」というセリフがあるわけでもない。でも彼のことを過去形で話しているからたぶん・・。今回は標的のハイデマンが生き延びるという珍しい設定だが、私自身は「ハリーの災難」に目が行った。メイフィールドの思惑に乗ったフリして、コロンボが彼を逮捕していれば、少なくとも死なずにすんだ。容疑だってそのうち晴れただろうし。メイフィールドはシリーズ屈指の難敵で、冷静で尻尾を出さない。でも彼はモルヒネだのハリーだのを出してくる必要はなくて。余計なことするという点では他の犯人連中と同じで。シャロンは恋人もいないし、人に尽くすタイプで、誰かに恨まれるはずはない。何も細工しなけりゃ・・新薬の件さえ気づかれなきゃ・・コロンボがいくらつついたって何も出てこないのに。それにしてもセクシー女優のフランシスがこんな地味な役やるのは珍しい。シャロンとハリーは気の毒だったけど、きっと天国で再会してるだろう!一方シャロンとは正反対で、いい男はいないかといつも捜しているルームメイトのマーシャ(ニタ・タルボット)。メイフィールドに呼び出され、チャンス到来!とその気満々なのに、用事(マーシャにハリーの存在を思い出させる)がすむとあっさりフラれる。当てがはずれて不満顔のマーシャがリアルで・・。

刑事コロンボ16 断たれた音

ローレンス・ハーヴェイは、若くして亡くなったため、あまり見たことがない。今こうやって見ると、イアン・マッケランにちょっと似ているな。キーラ・ナイトレイの「ドミノ」という映画があったけど、彼の娘ドミノ・ハーヴェイのことらしい。チェスの世界一を決める試合が組まれる。現在世界一はクレイトン(ハーヴェイ)だが、前チャンピオン、デューディックがカムバックすれば、地位は危うい。試合を組んだリンダは、クレイトンの元婚約者。なぜか彼を憎んでおり、試合でやっつけたいと思っている。クレイトンは耳に障害があり、常に補聴器をつけている。デューディックの方は、たぶん美食のせいだろうが、肥満し、糖尿病を患っている(引退もそのせい)。でも、ホテルを抜け出し、フレンチレストランへ行ったりする。温厚で楽天的な彼に対し、クレイトンは神経質。自分は負けるのでは・・と、悪夢に悩まされる。当時のハーヴェイは胃ガンが進み、撮影の数ヶ月後には亡くなったそうで。やせて骨ばっていて、見ていても痛々しい。そういう裏事情を知ると、感想も書きにくいな。コーチ役ロイド・ボックナーは「スパイ大作戦」とかいろんなのにたいてい悪役で出ていた。レストランの店主役オスカー・何とかという人もいろんなのに出ている。目がギョロッとして唇が分厚くて、たいていナチの将軍とかやってた。ここでの彼は以前より少しやせた感じで、どこか悪かったのかな。この数年後58歳という若さで亡くなっている。リンダ役ハイディ・ブリュールも49歳で亡くなっていて、みんな御愁傷様。コロンボの愛犬が再び出てくる。途中彼のポケベルが鳴り、クレイトンも我々もデューディックの容態が急変したのか・・と身構えるが、獣医から。ま、ここらへんはお約束ですな。「コロンボ」を見ていると、助けられたのにみすみす・・と思うことがよくある。「悪の温室」のトニーはコロンボと話すジャービスの車のトランクにいたし、「溶ける糸」のハリーは、誰かが彼を犯人に仕立て上げようとしていたわけで、当然見張りがつけられるべきだった。今回のデューディックも、せっかく命取りとめたのにみすみす死なせてしまった。再度命を狙われるってわかっていたはずなのに。それにしても現代なら「この犯行は耳の聞こえない人でなければ」というコロンボの主張は・・通りますかね。デューディックの命奪った薬の件だって、コロンボはクレイトンが何かメモしてるのを遠くから見ただけで、じかに見たわけじゃない。

刑事コロンボ17 二つの顔

これは昔テレビで見たのを覚えている。コロンボがテレビの料理ショーに引っ張り出されたり、マーティン・ランドーが二役やって、どっちが犯人かわからないとか。数十年ぶりに見直したが、40年ぶりってことになるのかな。クリフォードは大金持ち。娘ほども年の違うリサとの結婚を控えている。こういうのってトラブルの元。彼が死ねば莫大な財産はリサに行く。甥が二人いて、デクスターはテレビで料理の番組持ってる。社交的でちょっと軽い性格。兄のノーマンは正反対。銀行に勤める堅物だが、実はギャンブル狂で多額の負債を抱えている。一卵性双生児だが、仲が悪く、絶縁状態。でも・・共通の敵が現われれば・・そりゃ団結しますわな。二人はお互いにあいつが犯人だと言い合う。何か証拠があっても、それがどっちのものなのか判別できない。どっちも怪しいが決め手がない。そうやっているうちに迷宮入り・・。でも最初は病死でかたづけられるよう細工していた。疑われないはずだった。何でオフロに入ったままにしておかなかったのかな。動かしたりするから跡が残る。濡れたタオルにコロンボが気づく。家政婦ペック夫人役ジャネット・ノーランは、ジェーン・フォンダによく似ている。きれい好きのペックと、トラブルメーカーのコロンボとのやり取りは、使い古されたギャグ。リサ役はジュリー・ニューマー。大昔「ホクロにご用心」というテレビシリーズがあって。ウォーカー・ブラザーズが出たらしいんだよな。でも・・一生見る機会はないだろうな(ぐすん)。ニューマーはこの頃からすごい顔してる。「三人のエンジェル」に出ていたけど、バケモノみたいだったな。他にマーレイ刑事役でダブニー・コールマン。と言ってもラストのクレジットまで全然気づかなかったけど。弁護士ハサウェイ役ティム・オコーナーは、何となく顔が人形チック。「サンダーバード」や「キャプテン・スカーレット」にそのまままじってもおかしくない。見ていて笑える。クリフォード役ポール・スチュワートも見たことあり。ペックが見るテレビドラマにうつってた若者はマーク・シンガーらしい。まあ・・老富豪が若いのと結婚するのは・・しようとするのは・・ろくな結果を生まないということでよろしかったでしょうか?

刑事コロンボ18 毒のある花

ビューティーマーク社の社長ビべカ(ヴェラ・マイルズ)は、業績不振を一掃するシワ取りクリームがついに完成したと喜んでいたが、開発責任者のマーチソン博士は失敗だと言ってくる。ライバル会社のラング(ヴィンセント・プライス)の秘書シャーリー (シアン・バーバラ・アレン)は、ビべカに情報流している。どうもマーチソンの助手カール(マーティン・シーン)がクリームをすり替え、成功した方をラングに売りつけようとしているらしい。カールとは一時恋人どうしだったが、ビべカが捨てたらしい。何とか丸め込める・・と交渉したが、カールは協同経営者にしろだの何だのと厚かましい。捨てられたことを恨み、復讐する気なのだ。思わず手近にあった顕微鏡で殴り、殺してしまう。カールの死で、分子式はわからずじまい。成功した方のクリームは取り戻したが、分子式がわからないとどうにもならないらしい。開発は中止、ライバルの手に渡らぬよう資料は焼却される。でもその係の仕事ぶりはかなりいいかげん。小物入れにするからビンをくれとコロンボが言うと、簡単に渡す。今回のコロンボは今まで以上にしつこい。他に調べることいっぱいあると思うが(眉墨で書かれた数字とか、ビべカがカールの家から警察にかけた電話とか)。とにかく彼女にべったりくっついて、仕事の邪魔をする。手に入れたビンも結局使わずじまいだ。家宅捜索をされる・・と追いつめられたビべカは、クリームのビンを海へほうり投げる。苦心が水の泡だが、逮捕されるよりはマシだ。見てる人全員その後でコロンボが自分のビン持って現われ、ビべカを観念させる決め手として使うと思ったはず。どうして捨てたんです?カールの家にあったやつでしょ?とか。そしたら何もなくて・・。ラストもあっさりしすぎ。シーンはまだ若く、いかにも生意気そう。マイルズはますます美しい。時々エリザベス・テイラーに見える。プライスはイギリスホラー映画に欠かせない人。この三人に劣らず目を引くのがアレン。代表作は「エリックの青春」だろうが、見たことなし。目がキラキラして、いかにも清純そうだが、野心満々。ビべカの真似をし、自分も女実業家として成功したい。どことなくレズっぽいのが、この時代としては珍しい。

刑事コロンボ19 別れのワイン

シリーズの中でも特に人気のある作品らしい。カッシーニ・ワイナリーのエイドリアン(ドナルド・プレザンス)は、儲けを度外視してワインに入れ込んでいる。亡くなった父親は彼に現金を、腹違いの弟リック(ゲイリー・コンウェイ)にはワイナリーを遺したが、ワインに興味のないリックは兄に任せっぱなし。スポーツマンでプレイボーイ、車や女遊びのせいでいつも金欠。三度目か四度目となるジョーン(ジョイス・ジルソン)との結婚資金にするため、ワイナリーを売り払いたい。幸い買い手も見つかった。それを聞いたエイドリアンは激怒。思わず弟を殴り倒してしまう。その後縛り上げ、ワイン貯蔵庫へ。エアコンを止め、窒息死するよう仕組み、そのままニューヨークへ。一週間ほどして帰ってくると、死体を海に投げ込み、スキューバダイビング中の事故に見せかける。一方リックの失踪を心配したジョーンは警察に届け出る。なぜか担当でない(殺人課の)コロンボが受け付けることになってしまい・・。プレザンスは名作からB級C級ホラーまで、ホントよく見かけたな。100歳まで生きるんじゃないか、不死身なんじゃないかと思っていたけど、普通に死んじゃったな。コンウェイはメイクなしで「猿の惑星」やれそうなくらいすごい顔してる。「巨人の惑星」というテレビシリーズに出ていたけど、見たことなし。エイドリアンの秘書カレン役ジュリー・ハリスは「エデンの東」があまりにも有名。エイドリアンに忠実に仕えるオールドミスで、密かに彼を慕っている。彼が犯人では・・と疑うが、恐れたり避けたりするのではなく、彼に有利な証言をする一方、結婚を迫る。相手に愛がなくても何とかなると思っているのが悲しい。しかしどこまでも自己チューのエイドリアンは、結婚するくらいなら刑務所の方がマシだと思ってる。ジルソンは金髪で白が似合う繊細なタイプ。リックが彼女のためなら・・と心入れ替えたとしてもうなずける。彼女はお金なんかいらなかったのに・・と悲しむが、リックは地道に働くようなタイプじゃない。ワイナリーを売って、手っ取り早く大金つかみ、いいとこ見せようと思ったんでしょうな。元々自分のものだし。さて、私はレストランでエイドリアンがワインのことで怒り出し、コロンボが実はこれはあなたのところのワインで・・とばらして、それで事件解決となるのだと思い込んでいた。今回見たらその後もあったのね。レストランでの支配人とソムリエのパントマイムのようなやり取りが楽しい。

刑事コロンボ20 野望の果て

ヘイワード(ジャッキー・クーパー)は上院へ立候補している。選挙参謀のストーン(ケン・スウォフォード)はやり手で、脅迫受けてることにしようだの何だの手段を選ばない。ヘイワードと妻ヴィクトリアの仲は冷え、彼は妻の秘書リンダ(ティシャ・スターリング)と愛し合ってる。ストーンは彼女と別れろと強要。指図されることにあきあきしたヘイワードは、彼を殺す。脅迫の件を利用し、自分と間違われて殺されたと見せかける。腕時計を壊して犯行時刻を細工。自分は妻の誕生パーティでアリバイを作る。妻とは仲直りし(もちろん偽装)、選挙戦も優勢なまま投票日を迎えるが・・。今回は98分と長め。コロンボのボロ車がハイウェイ・パトロールに止められるところ、仕立屋でのあれこれなど、なくてもいいようなシーンが目立つ。ヘイワードは腕時計を壊したり、自宅から警察に犯行の電話をかけたり、オフィスにリンダと閉じこもってコロンボの不審を招いたり、不注意である。人違いではなく、初めからストーンを狙ったのでは?とコロンボが言い出すと、あくまでも標的は自分・・と、余計なことをする。クライマックスでのコロンボの謎解きはなかなか見事なので、これで前に書いたような余計なエピソードがなけりゃ、引き締まったいい出来なのに・・と残念だった。中心人物であるヘイワードには何の魅力も感じられない。上院議員という地位と愛するリンダと、両方手に入れたいと思っている虫のいいオッサン。かえってすぐ殺されてしまうストーンの方が印象強烈。頑丈そうな体つき、深みのある豊かな声。たぶん彼は自分が殺されたことより、その後の選挙戦に何の支障も出ていないことの方がショックだろう!コロンボの質問のまわりくどさやしつこさには辟易させられるが、その一方で感心させられることも。現場に駆けつけ、ささいな点にも注意を向けること。警官達の「聞いてなかった」「知らない」とは対照的。車の移動に要する時間は、自分で実際に運転して確かめる。エンジンの冷え具合、まわりには公衆電話がない・・など、つじつまの合わないことが出てくる。以前グローバー刑事役で出たロバート・カーンズが、ヴァーノンという名でまた出ている。頭が鋭いわけでも想像力が豊かなわけでもないが、コロンボに言われたことは忠実に実行・・そこがよかった。

刑事コロンボ21 意識の下の映像

ロバート・カルプ三度目の登場。ハンサムだし声はいいし冷静で頭よさそうに見えるから、犯人役に最適!ケプル(カルプ)は販売促進用フィルムを作ったり、本を書いたり。意識調査、分析のスペシャリスト。とにかく頭がよくて自信家。彼はタニアという女性を使ってノリスを誘惑させ、恐喝を働いていたらしい。仕事も順調、著書も多い彼がなぜ恐喝などするのか。たぶん彼は頭がよすぎて他の人はバカに見えるのだ。バカな連中は大いに利用してやれ、金をしぼり取ってやれということなのか。逆に言うと自分に反撃してくるノリスのようなやつは許せない。始末してやる。ガイドブックによると今作品はもっと長尺になるはずが編集カットされたそうで。そのせいかよくわからない部分も。見え見えだったのは映写技師ホワイトの態度。ノリスが殺され、コロンボが話を聞きにきた時点で、すでにケプルの犯行と確信。事件前モニターをいじくってたし。彼はケプルをゆするが、ケプルの方も想定ずみ。もしかしてわざとモニターいじくってるの見せた?彼はホワイトを殺し、ノリスの妻に罪をなすりつける。いつものようにコロンボは第二の殺人防げない。結局彼はケプルのオフィスに入り込み、カメラマンにいっぱい写真をとらせ、試写用フィルムにまぎれ込ませる。サブリミナル効果でケプルを罠にかける。あんなに早く、はっきりと効果が出るものだろうかという気はするが。コロンボは令状もなしに入り込んで・・今なら裁判で負けると思うが。勝手に入ったってことはニセの証拠も持ち込めたってことで。ノリス役ロバート・ミドルトンは太って目がギョロッとして、一度見たら忘れられない。妻役ルイーズ・ラサムは、どんな作品に出ても強い印象を残す人だ。「マーニー」のヒロインの母親役で知られるが、私はやっぱり「ガンスモーク」の「肌のぬくみ」!!ケプルはノリス夫人を犯人に仕立て上げようと、二度も罠にかけるが、コロンボは彼女の無実を信じて疑わない(残念ながら二度目の罠はカットされているらしい)。なぜなら彼女は正直だから。夫の浮気を告げる電話があったこと、電話の指示通りある場所へ出かけ、そのせいでアリバイがないこと。隠さずありのまま話す。犯人やコロンボのウソやら引っかけやらで満ち満ちていることの多い「刑事コロンボ」だが、たまにこういうシーンがあるとホッとするね。

刑事コロンボ22 第三の終章

ミッキー・スピレーンの名前は聞いたことあるけど、作品には興味なし。こういうのに出演しているところをみると、出たがりや、目立ちたがりやか。演技は素人っぽい。ジャック・キャシディが「構想の死角」に続き、二度目の犯人役。グリンリーフ(キャシディ)は出版者社長。売れっ子作家マロリー(スピレーン)が、商売敵ニールの出版者に移るのがおもしろくない。オレが有名にしてやったのに!彼は爆弾マニアのケーン(ジョン・チャンドラー)を、本を出させてやるとだまし、マロリーを殺させる。自分は離れたところでわざとトラブル起こし、駐車場で車をぶつけ、公園で車を止めて寝、パトロール中の警官に突っかかり、一晩ブタ箱に入るという念の入れよう。翌朝コロンボには酒のせいで何も覚えていないと殊勝な態度。そのうち保険会社から車の件で電話が来、アリバイ成立。こういう手の込んだことは、ボロも出やすい。グリンリーフもつい余計なことを言ってしまう。マロリーの部屋のカギのことが盛んに問題になるが、わかりにくい。グリンリーフは作らなくてもいい合鍵作ってボロを出す。ここで気になったのは、マロリーの部屋の錠前をコロンボが勝手に取り替えてしまうこと。元々はグリンリーフがマロリーのために借りた部屋。それを勝手に・・これって犯罪じゃないの?もう一つの決め手は、マロリーの新作小説の結末。エージェントのアイリーン(マリエット・ハートレイ)のアドバイスで結末を変更。マロリーが殺された後で、コロンボによって替えられた錠前の合鍵を、ケーンが持っていたという矛盾。二週間前結末が変更された小説のプロットを、九ヶ月も前にケーンがグリンリーフに送りつけていたという矛盾。まあこんなの文章にしても、見てない人には何が何やらだろうけど。罪をなすりつけられたあげく殺されてしまうケーン役のチャンドラーは、異常な感じで印象強烈。ハートレイは見覚えがある。「原始のマン」でショーン・アスティンの母親役やっていた。犯行時グリンリーフはエンシノという場所にいた。そう言えば「原始のマン」の原題は「エンシノ・マン」。邦題は「げんしの」と「えんしの」のごろ合わせらしい。全然関係ない部分でニヤニヤしてしまった私。

刑事コロンボ23 愛情の計算

人工頭脳学研究所の所長ケーヒル(ホセ・ファーラー)は、同僚のニコルソン(リュー・エアーズ)を殺す。ケーヒルの息子ニール(ロバート・ウォーカー)の論文盗作を告発しようとしたからだ。ニールは父親を失望させまいと、こんなばかなことをしでかしたのだが。悩む彼のセラピーを受け持ってるのがニコルソンの妻マーガレット(ジェシカ・ウォルター)。ニコルソンとは親子ほども年が違い、しかも美人。彼女は盗作のことは知っているが、職業柄コロンボには話せない。もっと自分がニールに告白するよう強く勧めていたら・・夫は殺されずにすんだかも・・と、後悔しているフシがある。ケーヒルのことを疑っているかも。なかなか複雑な人間関係である。今回コロンボが取った手段はかなり汚い。ニールとマーガレットが愛人関係にあり、ニールが邪魔な夫を始末した・・と、でっちあげる。コロンボのシナリオでは、今は無実を主張しているニールも、君でないのならマーガレット(かお父さん)が犯人だ・・と言われれば、罪をかぶろうとするはず。今ここでケーヒルが落ちなくても、そんなニールを見れば落ちるはず。でもそこまで行かず、わりとあっさりケーヒルは罪を認める。もうニールは盗作を公表しちゃったし、ニコルソンを殺した意味なくなっちゃったし。ファーラーは「アラビアのロレンス」、エアーズは「西部戦線異状なし」、ウォルターは「恐怖のメロディ」のストーカー役が印象強烈。彼らに比べるとウォーカーは地味。この頃は名前からジュニアを取っていたようだ。全然有能な科学者に見えないのが惜しい。ただ、マーガレットの方はともかく、ニールは彼女にほのかな愛情いだいていたはず。いかにもマザコン風のウォーカーは適役。コンピューター、ロボット、第三次世界大戦シュミレーション・・と言った時代先取り部分と、愛する者のためには殺人さえもという古典的な部分がうまくかみ合った作品。天才少年の名前がスティーヴ・スペルバーグ(ネズミ映画「ベン」のリー・H・モンゴメリー)だったり、「禁断の惑星」のロビーが出てきたり、お遊びもなかなか。コロンボの同僚だか部下の刑事役ウィリアム・ブラントは「コンバット」等でよく見かけた人。犬の学校を退学させられるコロンボの愛犬のエピソードも楽しい。学長(?)役チャールズ・マコーレイはエド・ビショップに似ている。

刑事コロンボ24 白鳥の歌

カントリー&ウェスタンのスーパースター、ジョニー・キャッシュが犯人役。ブラウン(キャッシュ)は、妻エドナ(アイダ・ルピノ)がやっている「魂の十字軍」の広告塔。彼は数年前、まだ未成年のメアリー・アン(ボニー・ヴァン・ダイク)と関係を持ってしまう。それをネタにエドナにいいようにしぼり取られ、もうがまんできないと二人の殺害を計画。コンサートの終了後、自家用機でロスへ飛ぶが、同乗した二人を睡眠薬入りのコーヒーで眠らせ、自分はパラシュートで脱出。足を折ったものの、計画は成功。墜落事故だから普通はコロンボの担当ではないが、エドナの弟ルークが殺人だと訴え出たため・・。今回は98分と長め。キャッシュの美声も聞くことができる。ハンサムというわけではないが、ギター片手にあんな美声聞かされたんじゃ女性はイチコロだわな。時間に余裕があるにしては、エドナの死後「魂の十字軍」はどうなったのかなどの描写はなし。コロンボの要請で埋葬された遺体が掘り出され、解剖に回されるが、ブラウンは抗議もしない。他の犯人と違い、彼には同情の余地がある。彼を悪の道から救い出してくれたエドナだが、今では明けても暮れても彼をいびり、働かせる。500万ドルもかけて礼拝堂を作ろうとしている。妻らしいことは何もせず、束縛しまくる。メアリー・アンの件だって、彼女の仕組んだ罠なのでは・・と思えるほど。二人が死に、重しも取れてよかったねえ・・と思ったら、ブラウンは今までの反動か、やたらはしゃぎ出す。水着の美女を侍らせ、ギター片手にパーティ。妻をなくしたんだからもうちょっと自重すればいいのに、それができない。彼はコロンボのこともわりとうまくあしらうが、そのうちボロを出す。(パラシュートを見つけるための)大がかりな山中の捜索・・そんなのコロンボの罠って見え見えだけど、引っかかる。ラスト・・コロンボは珍しく彼に同情し、特別扱いする。自首するつもりだったんでしょ?いやいやブラウンはそんなこと思ってないって。エドナやメアリー・アンがブラウンをさんざん苦しめていたことを知り、それでコロンボが同情して・・となった方が自然。ヴァン・ダイクはサラ・ポーリー風。事故調査担当パングボーン役ジョン・デナーの、穏やかで知的な感じはよかった。

刑事コロンボ25 権力の墓穴

ハルプリン(リチャード・カイリー)はロス警察の次長・・と言っても、ガイドブックによればこの肩書は存在しないそうで。要するにコロンボより地位が上ってことでしょ。ある晩隣人のコールドウェル(マイケル・マクガイヤー)が、妻ジャニスを殺してしまったと相談に来る。前から自分の妻マーガレット(ローズマリー・マーフィー)を殺そうと思っていたハルプリンは、早速このことを利用。ジャニス殺しもマーガレット殺しも、近頃巷を騒がせている宝石泥棒の仕業・・というふうに細工する。何しろ捜査の指揮を取るのは自分。でもなぜコロンボを担当に?まだ新任でコロンボのことよく知らず、もっさりしていてトロそうと思い込んだとか?コールドウェルは前から夫婦ゲンカが絶えなかった。ジャニスには若い愛人がいて、宝石を売っては貢いでいたらしい。その宝石を買ったのはコールドウェルだろうから、怒るのは当然・・と言うか、何で離婚しないの?ハルプリンの方は妻が莫大な財産持ってる。慈善団体に多額の寄付を惜しまない。ハルプリンに言わせれば、あいつらますます働かなくなる・・だ。そんなやつらのために財産が減っていくのが口惜しい。そのくせ彼は賭け事に金を注ぎ込む。その金は妻から出ている。賭け事なんかせず、妻と別れ、自分の給料貯金すればいいじゃん・・と思うけど、やっぱり財産は欲しい。マーガレットも別に悪妻ではないが、何かと言えば「私の財産よ」・・これじゃ夫の心も冷えますって。さて、宝石泥棒ジェサップは困っている。彼は宝石は盗んでも殺人なんかしない。でもみんな彼のせいにされそう。コロンボの同僚ダフィの調べでは、ジェサップは容疑者の筆頭。コロンボは彼に頼んで一芝居打ってもらうことにする。・・今回は犯人が警察関係者というのが珍しい。コロンボにとっても予想外だろうけど、どの時点で怪しみ始めたのかな。怪しい人影を見たと言い張ったせいかな。ハルプリンはマーガレットをオフロで溺死させ、その後コールドウェルにプールに投げ込ませたけど、解剖すりゃ肺から石鹸水が見つかって、おかしい・・となるに決まってるのになあ。カイリーは「ミスター・グッドバーを探して」に出ていた。監督は俳優のベン・ギャザラ。

刑事コロンボ26 自縛の紐

今回の犯人役はロバート・コンラッド。「ワイルド・ウエスト」も「ハワイアン・アイ」も見たことなし。ガイドブックによるとこの頃39歳で、ジャナスは53歳という設定。実年齢よりだいぶ上のを演じるのは珍しい。小柄だが、がっちりした体格。おっそろしく油っこい顔立ちで、どの写真見ても(つまり私は前に書いたようなテレビシリーズは見てないが、「テレビジョンエイジ」には写真がよく載っていたのだ)、日に焼けて黒々、てかてか。どの写真でも17の時に結婚したというきれいな奥さんと一緒。もっとも最近のプロフィルでは1935年生まれではなく、1929年生まれになっていて、こっちの方が正しいとすれば、年のわりに老けて見えたのもうなずける。奥さんもその後取り替えたようだ。今作品では女性ファンへのサービスか、男性視聴者への当てつけか、上半身裸で泳ぎ(そりゃ下半身裸では泳がないわな)、砂浜を走り、パンチボールを打ち、縄飛びをし。何か着るにしてもたくましい上腕必ず袖から覗かせる。まあホント、これでもかとばかりに見せつける。さて、ジャナスはスポーツクラブのチェーン店を経営。そのうちの一つのオーナー、ジーンが彼の不正・・各クラブから不当に利益を得、その金を海外へ持ち出している・・に気づいたようだ。まあ勝ち誇ってジョナスをののしり、夜クラブに「一人」残って調べるという時点で、ジーンの運命は決まり。なぜ誰かと一緒に残らなかった?ジョナスが黙って見ているとでも?ジーンには別居中の妻ルースがいて、酒浸りっぽい。子供が成長して家を出て、二人きりになったとたん、何の話題もないことに気づく。ルースはそれでもまだジーンに未練があるようだが、ジーンはなさそう。・・別に夫婦には共通の話題なくちゃいけないなんて法律があるわけじゃなし、しゃべらなくてすむのならその方が楽じゃん。ルース役コリン・ウィルコックスはちょっとけだるい感じでマリアンヌ・フェイスフル風。ジーンがジャナスの不正調べていたのを知り、いつもなら彼をゆすって返り討ちにされる・・となるところだが、そうならない。自分から酒と睡眠薬を一緒に飲み、病院へ運ばれる。もう少し自分を大切にしようね。

刑事コロンボ27 逆転の構図

今回の犯人役ディック・ヴァン・ダイクは、数年前の「ナイト ミュージアム」でも元気な顔を見せていた。いまだにハンサムだし、動きも声も若々しかった。写真家のポール(ヴァン・ダイク)は、妻のフランセス(アントワネット・バウアー)を、誘拐に見せかけて殺す。刑務所を出て三週間のアルビン(ドン・ゴードン)を、犯人に仕立て上げる。自分の足を撃ち、アルビンともみ合っているうちに撃ち殺してしまったという筋書き。ホフマン刑事(マイケル・ストロング)らは、よくある事件で、もう解決・・と決めてかかるが、コロンボだけは納得しない。前半の彼はなかなかよいと思う。彼は感情の自然な流れを重視する。妻が誘拐され、犯人に身代金を渡す時、妻の居どころを聞き出す前に殺したりするだろうか。まず何よりも妻の安否や居どころをはっきりさせるのが普通じゃないのか。ポールが指定された時間に遅れていったのもおかしい。普通なら心配で居ても立ってもいられず、時間より前に行くのでは?それに対し、ポールはいちいち説明する。何で無我夢中だったので覚えていない、全然気がつかなかった、説明のしようがない・・と、開き直らないのか。しゃべればしゃべるほど食い違いが生じ、自分の言ったことでがんじがらめになる。ガイドブックによれば、妻殺しの動機は、脚本では明らかにされていたようだ。数年前ポールは神経衰弱になり、フランセスは彼の管理能力に疑問ありという理由で、財産を全部自分の管理下に置いてしまう。病は癒えたが、裁判で争ってまで自分の分を取り戻すだけのガッツがポールにはない。いっそフランセスを殺して全部自分のものに・・と、そっちの方へ行ったわけですな。テレビを見ただけだと、助手のローナと恋に落ち、一緒になるために邪魔な妻を始末・・と、そういうふうにしか見えない。後半になると、いつものしつこくてうるさいコロンボに変わる。神経衰弱という過去を知った上で見ると、あのしつこさ、うるささがポールの神経をズタズタにしているのがわかる。いつまでたっても要件を言わない前置きの長さ、いつでもどこでも顔を出す厚かましさ。たぶんポールは、こんな状態が続くくらいなら、いっそつかまった方がマシ・・と思ったことだろう。その点では気の毒だが、何の関係もないアルビンを殺すなんて許せないから、同情はしてあげないよ。

刑事コロンボ28 祝砲の挽歌

今回は見たことあるのかどうか記憶があいまい。実は私トム・シムコックスのファンで・・。彼が出ていたからには見たはずなんだけど、すぐ殺されちゃうからなあ。最後までちゃんと見たかどうか。え?シムコックスって誰だって?映画だと「シェナンドー河」。これも出てきてすぐ死んじゃう。「荒野の対決」・・確かロバート・フラーが出ていて、見たことあるんだけど、内容覚えてない。テレビムービーだと「夜空の大空港」。顔が四角くて、いつもまぶしそうな目をしていて。ガイドブックには生年不明って書いてあるけど、IMDbでは1937年生まれになってる。昔の雑誌では33年になってたと思うが、今となってはあいまい。まあとにかくテレビでたまに見かけて、いつも脇役で、いつもどうってことなくて、いつも目をしわしわさせて、でもそこが気に入って。いやホント、私がこうやって書いてあげなきゃ・・他の誰が彼のこと書くってのよ!今回の犯人役はパトリック・マクグーハン。この名前の読み方がねえ・・。ガイドブックにはマッグーハンとあるけど、マクグーハンの方がなじみがある。と言うか、私昔はずっとマックバーンだと思っていたのよ。マクグーハンなんてこんな変な名前って・・。テレビシリーズ「秘密諜報部員ジョン・ドレイク」は毎回見てた。でも内容は全然理解できなかったし、何も覚えていない。覚えているのは「NATO」と主題曲くらい(あのチェンバロ!)。次の「プリズナーNo.6」は意味が全然わからなくて、すぐ見るのをやめてしまった。今ケーブルテレビでやってるけど、見ようとは思わない。今なら少しは理解できると思うけど、それでもね。で、前置きが長くなったけど、陸軍幼年学校の校長ラムフォード大佐(マクグーハン)が、理事長で創立者の孫でもあるヘインズ(シムコックス)を殺す。開校記念日の式典で祝砲を撃ったら、大砲が暴発。悲劇だがよくある事故・・それでかたづくはずだった。ヘインズは経営不振の学校を、共学の短大にするつもり。ラムフォードはクビ。そんなことさせてたまるか!今回はマクグーハンの名演技に目が行く。スキのない軍人でありながら、時々年取ったおばあさんのようにも見える。目のあたりが異様で、妖怪のよう。じっとり汗をかいているけど、それでいて冷たい。強靭に見えて弱々しい。最後は自殺すると思ったんだけどな。他にはルーミス大尉役バー・デべニングがよかった。シムコックス退場後は、彼を見て目の保養。

刑事コロンボ29 歌声の消えた海

コロンボのカミさんはくじ運が強いらしい。メキシコへの豪華客船クルーズが当たるが、その船上で事件が・・。犯人役はロバート・ヴォーン。中古車ディーラーのダンジガー(ヴォーン)は、この船の常連で、今回も顧客100名あまりを乗せている。20年かかってここまでの地位を築いたが、前回のクルーズでバンドの歌手ロザンナと関係を持ってしまう。妻のシルビアは年上で財産家。ロザンナのことがばれればただではすまない。したたかなロザンナは、バンドのピアノ弾きロイド(ディーン・ストックウェル)を振り、情事をネタにダンジガーに食らいつく。ダンジガーはニセの心臓発作を起こし、医務室へ運ばれる。そうやってアリバイを作り、ショーの合間にロザンナを射殺。銃やら領収書やら、鏡に口紅で書かれたLの字やら細工し、ロイドの犯行に見せかける。もうここで「コロンボ」を見慣れた人々から声が上がりそう「余計なことするな!」。この場合ロイドに濡れ衣着せようなんて小細工する必要はない。ダンジガーとロザンナのことは誰も知らない。その一方でロイドとロザンナがトラブってることはバンド仲間みんなが知ってる。だから何もしなくても疑いはロイドにかかる。でも彼がそういうことをするタイプじゃないってのもわかってるし、有力な手がかりもないとなれば、いたずらに時間だけが過ぎ、そのうちメキシコへ着く。そうなりゃお客を足留めするわけにもいかず、ロイドが逮捕されてけりがつくか、迷宮入り。でもそれだと映画にならないからダンジガーはあれこれやり、コロンボに目を付けられる。バンドのリーダー、ポデル役の人は「遊星からの物体X」の一人目の犠牲者かな?ストックウェルは昔「コンピューター殺人事件」というテレビムービーに出ていた。私はこれをもう一度見たいものだと数十年思っているけど、かなわないだろうなあ。今回印象に残るのはシルビア。舞台が船に限定されるが、大海原の上なので開放感がある。コロンボが、部下も鑑識もおらず、道具もない中で奮闘するというユニークさもある。でも一番印象に残るのは、やっぱり人間なのだ。ダンジガーを疑い始めたコロンボは彼女にも事情を聞くが、その正直さ、率直さに驚き、感服する。普段いやと言うほどウソや見栄、その場しのぎを聞かされているからね。ただ残念だったことが一つ。夫が心臓発作起こしたというのに、シルビアが全く医務室へ姿見せないこと。これって変でしょ?

刑事コロンボ30 ビデオテープの証言

今回のハロルド(オスカー・ウェルナー)は、どことなく「死の方程式」でロディ・マクドウォールが演じた犯人に似ている。才能はあるのだが、いわゆるオタクで、利益より道楽優先。金を注ぎ込み、会社を傾ける。会長で義母でもあるマーガレット(マーサ・スコット)は、社長のハロルドをクビにするつもり。常に夫の味方である妻エリザベス(ジーナ・ローランズ)も、夫に数人の愛人がいることを知れば考えも変わるだろう。一方ハロルドはすでに義母殺害の用意をすませている。家はビデオモニターなど、最新の防犯装置でいっぱい。彼は犯行を録画し(もちろん自分はうつらないようにしてある)、自分がパーティに出かけた後、それが警備員詰め所のモニターにうつるようタイマーをセット。これでアリバイは完璧だ。ここらへんは「スパイ大作戦」でも見ているよう。さてウェルナーと言えば「突然炎のごとく」。昔テレビで見たが、かわいらしい顔をしているなあ・・と。映画自体は男女三人の三角関係か何かで、何が何やらさっぱり意味がわからん。私はどうもこういう取り留めのない、何をどうしたいのかはっきりしない映画は苦手。他に「華氏451」も有名だけど、見たことなし。エリザベスは足が不自由で車椅子生活だが、けなげで愛情深い女性。しかし実母を夫に殺され、ラストは豪邸に一人残される。彼女を見るコロンボの目はやさしく、同情に満ちている。彼女を不幸のどん底に落とすのは本意ではないが、犯罪は犯罪だ。ローランズは非常に美しい。見たことはないが、「87分署」の頃はブルネットだった。私が彼女を最初に見たのは「特攻ギャリソン・ゴリラ」。色っぽい年増美女。それから数年たってるが、ますます美しい。それに比べるとウェルナーは・・童顔のくせに老けやすいタイプ。ガイドブックにはシリーズでも1、2を争う冷血漢と書いてあるので、期待したのだが・・。気に入らないことがあると、すぐかんしゃくを起こす駄々っ児みたいなのが残念。印象に残ったのは、寝室に置いてあるピエロの人形。手を叩くとドアが開くという装置があって、マーガレットを撃った銃声で、エリザベスの寝室のドアが開く。そのせいで廊下の光が入り、本来なら暗くて見えない(寝室は明かりを消してあるから)はずのピエロが見えた。このピエロが気持ち悪くてねえ。ここだけホラー。

刑事コロンボ31 5時30分の目撃者

今回はややひねった内容。精神分析医マーク(ジョージ・ハミルトン)は、患者のナディア(レスリー・ウォーレン)と愛人関係にある。彼女は彼の研究対象でもある。そのためには危険な薬を使うこともいとわない。ナディアの夫カールは、妻に浮気させ、ほどよいところで浮気相手を罵倒し、手を引かせるのが趣味という変態。はずみでカールを殺してしまったマークは、ナディアにウソの証言(カールは二人組の強盗に殺された)をさせるが、精神が不安定な彼女はそのうちウソに耐え切れなくなるだろう。そこで彼女に催眠術をかけ、自殺するよう仕向ける。そのきっかけを作るのに電話を利用するが、偶然そこにはコロンボも居合わせたから、アリバイ作りはばっちりだ。さてハミルトンと言えばプレーボーイ。でも、若い時はいいけど、年を取ってからはどうなんだろう。老プレーボーイなんて、何だかわびしい。ハンサムと言うよりのっぺりしていて、あんまりステキだとは思わないが、アンソニー・パーキンスにちょっと似ている。「ドラキュラ都へ行く」は映画館で見た。テレビ放映では確か岸田森氏が吹き替えを・・ありゃりゃこりゃりゃ。ウォーレンは「最高にしあわせ」を映画館で見た。その後「スパイ大作戦」に出ていたが、きつい顔立ちなので合っていなかったような気も。あと、見たことないけど「シンデレラ」でスチュアート・ダモン(王子役!)と共演している。コロンボがマークの助手アニタに声を荒げるシーンにはびっくりしたな。女性にはおおむね礼儀正しいコロンボなのに。ナディアの死を防げなかったので、気が立っていたのかな。とにかくコロンボは怒ると怖い・・と。さて、マークはカールを殺した後、別荘から車で走り去るが、盲人にぶつかりそうになる。危うくよけたものの、車は門柱にぶつかったから、塗料か何かが付着したのでは?車だってへこんだはず。でもタイヤしか調べてなかったな。本来なら目撃者となるはずの男性は、盲目だったせいでなれない。マークからすると、コロンボ達が男性を目撃者として連れてくるのはちゃんちゃらおかしいわけ。目が見えるふうを装ってだまそうったってそうはいかない。あの時の男性は確かに盲人だった。でも彼がそう断言することは、彼がその場にいたという自白でもある。つまり今回の事件での目撃者は、盲人ではなく、マークの方だった・・と。見ている我々は、男性は兄弟で住んでいると聞いた時点で、からくりは読めるけどね。

刑事コロンボ32 忘れられたスター

ジャネット・リーは、映画は「サイコ」くらいしか見てないが、一時テレビ番組やテレビムービーで盛んに見かけた。ジョージ・マハリスと共演した「サンフランシスコ用心棒」なんてのもあったな。もう一度見たいよ~ん。グレース(リー)はネッド(ジョン・ペイン)と組んで、もう一度ブロードウェイに復帰したい。それには大金がかかるが、年上で引退した医者である夫ヘンリー(サム・ジャフェ)は、妻の頼みを退ける。いつまでそんな夢を見ているんだ・・。その晩彼女は夫を射殺。病気を苦に自殺したように見せかける。自分は別室で映画を見ていたことにする。コロンボは憧れのスターに興奮しつつも、自殺にしては不審な点があるのを見逃さない。グレースは他の犯人のような余計なことはしない。余計なことも言わない。復帰に向けて忙しくすることで夫の死を乗り切るつもり・・それだけ。例によってコロンボがしつこくうろつき回り、夫の死を蒸し返すのを嫌がるが、犯行の発覚とかそういう心配は全然してない。そのうち彼女の言動がおかしいのがわかってくる。人の名前を忘れる。ものの置き場所を忘れる。せかせかと動き回り、あれこれしゃべるが、何かが抜け落ちている。ヘンリーが復帰に反対したのには何か理由があるのでは?彼が医者だったことを考えると・・。コロンボの推理は当たった。ヘンリーの診断によれば、グレースには脳に動脈瘤がある。しかも手術できない。昔のことは覚えているが、最近になればなるほど記憶が失われる。そう、彼女は夫を殺したことさえ覚えていないのだ!余命はわずか・・それなのにコロンボが、グレースに向かって殺したのはあなただとか迫るのはなぜなんだろう。見かねたネッドが、殺したのは自分だと言い出し、身代わりになろうとする。実は彼は昔からグレースを愛していた。彼女がショービジネスの世界を去るきっかけを自分が作ったことを、ずっとすまなく思っていたのだった。でも・・だからって偽証までして犯人の名乗りあげなくても・・。コロンボがやっぱりあれは自殺でしたと報告すりゃすむことで・・。グレースに仕える老執事役で、「奥様は魔女」のモーリス・エヴァンスが出ていた。

刑事コロンボ33 ハッサン・サラーの反逆

見終わった時、あら?結局犯行の動機は何だったの?と思ってしまった。金庫から盗まれたという60万ドルが動機?私は王位を狙っているのかな・・と思ったんだけど。そのための資金だと思ったんだけど。でも国王は、飛行機に乗って無事帰っちゃった(結局は戻ってきたけど)。スアリ王国総領事代理のサラー(ヘクター・エリゾンド)は、下っ端ハビブ(サル・ミネオ)をだまし、警備隊長アラファ殺害の片棒をかつがせる。その後、殺人と60万ドルの盗みの罪を着せ、ハビブを殺害。国王はアメリカを訪問中。若くて進歩的な思想の持ち主で、サラーとはそりが合わない。捜査を担当することになったコロンボは、すぐサラーに目を付ける。一見過激派学生の仕業に見えるが、内部の者でなければ実行は無理だからだ。最初は快く協力していたサラーも、しつこくうろつき回るコロンボにはうんざり。国務省に苦情を言い立てる。アメリカ政府としても、大事な交渉がコロンボの当て推量のせいでふいになっては・・と、圧力をかけてくる。そこでコロンボが取った手段とは?エリゾンドはどこかで見たような人だ。きちんと整った美しい顔立ちの人。悪役だが、品がある。なかなか尻尾を出さないサラーだが、国王を見送った後は気がゆるんだのか、人が変わったようになる。外交官特権で逮捕はできない、コロンボに勝った・・と冗舌になり、油断する。コロンボの差し金で国王は密かに引き返し、それを聞いている。で、国に帰って裁くと言われたサラーは、大あわてで自供でも何でもする・・と、コロンボに逮捕される方を望む。それもそのはず、スアリでは首をはねられるらしいから。ここらへんのやり取りが見せ場なんだろうけど、私は今いち乗れなかったな。用心深いサラーは、最後まで気を抜かないと思うのだ。銀行の帯封がどうのとか、謎解きもわかりにくい。国王役バリー・ロビンスはジョン・トラボルタに似ている。42歳の若さで亡くなったらしい。ハビブ役サル・ミネオは37歳。みんなもったいないねえ。本部長役ケネス・トビーは「遊星よりの物体X」や「水爆と深海の怪物」に出ていた人だ。もっと出番あるかと思ったら、最初の方だけ。軽かったな。総領事館前でデモをしている学生・・エキストラでジェフ・ゴールドブラム。ガイドブック見てなきゃ見逃してたかも。彼にもこんな時期があったのねえ・・。

刑事コロンボ34 仮面の男

今回はCIAからストップがかかるという珍しい内容。ブレナー(パトリック・マクグーハン)は経営コンサルタントだが、実はCIAの情報部員。しかもアメリカ西海岸の統括者という重要な地位にある。以前一緒に仕事をし、死んだことになってるヘンダーソン(レスリー・ニールセン)は、ブレナーの内職(二重スパイ)をネタに脅迫してくる。ブレナーは物取りに見せかけて彼を殺害。捜査を始めたコロンボは、本物のヘンダーソンがちゃんと生きており、偽名を使っていたと思われる被害者の身元がわからず往生する。ブレナーに目を付けたものの、なかなか尻尾を出さない。そのうちCIAの部長コリガン(デヴィッド・ホワイト)まで登場、捜査を中止するよう言い渡される。今回のコロンボはちょっと変。ヘンダーソンが死の直前立ち寄ったバーへ行くのだが、ダンサーに目を奪われ、捜査もうわのそら。ブレナーが人目の多い遊園地でヘンダーソンと会うのも変。案の定写真をとられ、後でコロンボが彼に気づくきっかけとなる。せっかくコリガンがコロンボに釘をさしたのに、ブレナーがちょっかい出すのも変。自宅に招き、いろんなものを見せ、得意満面だが、一枚の昔の写真のせいで、彼が謎の老人スタインメッツだとばれてしまう。彼は非常に頭がよく、語学も堪能、情報部員としても経営コンサルタントとしても成功している。その自信が結局は彼の足をすくう。今回は98分と長いが、間延びすると言うかだれると言うか、いらないシーンがある。ブレナーがコレクションやら葉巻やら音楽やらでコロンボをもてなすシーンは、明らかに長すぎ(ちなみに監督はマクグーハン自身)。その一方でヘンダーソンが今まで何をしていたのか不明。コリガンがコロンボに直接会うのもおかしい。普通ならコロンボの上司に話をし、上からの命令ということにするはず。とは言え、マクグーハンがスパイというのは「ジョン・ドレイク」を思い出させてくれてうれしいし、おバカスパイのイメージが強いニールセンが、CIA情報部員として真面目くさって出てくるのもおかしい。彼らの上司が「奥様は魔女」のラリーだなんて、もうムチャクチャなキャストで、これまたうれしい。

刑事コロンボ35 闘牛士の栄光

これは「歌声の消えた海」の続きらしい。コロンボはカミさんとメキシコ旅行中。でもいつの間にか事件に巻き込まれてしまう。旅行中だし、捜査権もないので、できるだけ のことはするけど、解決しないままロスへ戻る場合もあると承知している。引退した闘牛士モントーヤ(リカルド・モンタルバン)は、長年自分の介添え役をしてくれていた エクトールを殺す。表向きは事故に見せかける。息子クーロに重傷を負わせた牛マリネロを仕留めようとして逆に・・。まわりはこの筋書きを、疑いもせず受け入れる。だと するとサンチェス警部(ペドロ・アルメンダリス・ジュニア)は、なぜコロンボを捜査に引き入れた?コロンボはすぐモントーヤに目を付けるが、動機がわからない。彼はロスだろうがメキシコだろうが、自分のやり方を通す。いろいろ質問し、ある時は矛盾を、ある時はヒントを見出す。国民的英雄だから疑うなんてとんでもないとか、首が飛ぶ、年金がふいになるとか尻込みしたりしない。サンチェスがだんだんコロンボに影響されていくところがおもしろい。闘牛士の誇り、父親が息子の仇を討つというのは、サンチェスにもすんなり受け入れられる世界。でも、エクトールの体には針のあとのようなものがあったし、モントーヤの証言には矛盾がある。こりゃもしかしたらコロンボの 言うことが正しいかも・・。例によってコロンボは闘牛の本を読む。ちゃんと勉強するのが偉い。逆に言うと、いつどこへ行っても仕事から離れられないということだ。クライマックスでは、コロンボが回復したクーロに頼んで、一芝居打ってもらう。勇敢なはずのモントーヤは、牛を前にして、体が動かなくなってしまう。たぶん引退に繋がった 出来事・・他の闘牛士のピンチを救うが、そのせいで牛に突かれ・・が、彼のトラウマになっているのだ。クーロのピンチの時も動けなかった。それをエクトールに見られてしまった。それが殺害の動機。動機にしては弱すぎるという意見もあり、確かにそうなのだが、過去の栄光にしがみつくしか生きる手立てのない人がいるのも現実。クーロ役A・マルティネスは、私は見たことないが、「11人のカウボーイ」に出ている。モンキーズのミッキー・ドレンツに似ている。アルメンダリス・ジュニアは「新・荒野の七人」など。この作品で印象に残ったのは、「家庭と教会は大事だ」というサンチェスのセリフ。家庭は全世界共通だろうけど、教会というのはメキシコらしいね。

刑事コロンボ36 魔術師の幻想

ジャック・キャシディ三度目の犯人役だが、今回が一番いいかも。魔術師サンティーニ(キャシディ)は、クラブのオーナー、ジェロームに稼ぎの半分を取られている。彼は元ナチの親衛隊隊員で、今もイスラエル政府に追われる身。名前を変え、ドイツなまりを直し・・でも彼の正体を明らかにする一通の手紙のせいで身動きが取れない。以前ある老人が持っていたが、彼が死ぬとジェロームが手に入れ、ついでにゆすりも受け継ぐ。サンティーニはマジックの合間にジェロームを殺害。給仕を利用してアリバイまで作る。・・ある技術の持ち主が、自分の犯行にそれを利用するというのはよくある。よく知っている、得意なことだから失敗せずやり遂げる。逆にこの犯行をやり遂げられるのは、そういう技術を持っている〇〇しかいない・・ということにもなるのだが。今回で言えば新式の堅牢なカギを難なく開けるとか、人の目を巧みにそらすとか、そういうのができるのはマジシャンしかいない・・ということになる。コロンボがマジック用品の店で聞き込みをするシーン・・店主の、ジェロームは嫌われていたという言葉に反応しないのはなぜ?普通なら被害者がどういう人物だったか、どんな敵があったか聞くはずだが。犯人はサンティーニに違いないから、ジェロームの人柄はどうでもいいってか?それって早すぎない?それにしてもサンティーニは、人生の半分以上をゆすられ続けている。親衛隊で残虐な行為をしていたという設定らしいが、ジェロームもそれに劣らず強欲で残忍。殺されてもちっともかわいそうじゃない。サンティーニは今の地位確立するために大変な努力したはずだし、娘デラも男手一つで育てたみたいだし、同情しちゃう。他に給仕頭ブラントフォード役でロバート・ロジアが出ているが、どうってことない扱い。最後の方でサンティーニに対する態度が冷たかったけど、正体知らされたから?彼はジェロームの裏の顔は知らなかった?ジェロームを殺した時、タイプライターから告発の手紙を引き抜くシーンがあるが、インクリボンはそのままなので、これがラストの伏線かな・・と思っていたらやっぱり。ま、新式のタイプライターで、インクリボンが使い捨ての巻き取り式なため、手紙が楽々再現できたというのまでは予想していなかったけどね。

刑事コロンボ37 さらば提督

今回は珍しく最後の最後まで犯人がわからない。殺されるのは造船所の経営者で、”提督”と呼ばれるスワンソン(ジョン・デナー)。最初は娘婿で、社長のチャーリー(ロバート・ヴォーン)が犯人に見える。ただ、犯行そのものはうつさないので、犯人ではない可能性もある。次にスワンソンの娘で、チャーリーの妻ジョアナ(ダイアン・ベイカー)が怪しく思える。チャーリーは妻がスワンソンを殺したと思い込み、死体を遺棄したらしい。その彼も殺されてしまうので、ますますジョアナは怪しい。彼女はアル中で、時々記憶をなくす。チャーリーは利益優先で、昔気質のスワンソンとは衝突ばかり。スワンソンが会社を売って、金の亡者どもとはおさらばする気だったことがわかる。孫ほども年の違うリサと結婚するつもりだったこともわかる。リサは財産には興味がなく、遺言書にも明記させる(おかげで容疑者リストからは、はずれる)。チャーリーが妻をかばったのは愛情からではなく、彼女が殺人犯になると、莫大な遺産が相続できなくなるため。また、最後にわかる犯人の動機も結局は金だった。監督は「仮面の男」に続き、パトリック・マクグーハン。変に間延びしたシーン、変な構図は彼の特徴か。コロンボのボロ車に窮屈そうにおさまる男達。船内で電話する時のコードの絡み。リサの瞑想を真似しようとするコロンボ・・その他モロモロ。見ていていらいらし、早送りしたくなる。私が編集担当なら大喜びでハサミ入れる。デナーは「白鳥の歌」でパングボーンやってた。今回コロンボには新人刑事マックが助手として付く。ラストでは彼もコートを手にしていて、だいぶコロンボに感化されたようだ。演じているデニス・デューガンには見覚えがある。「戦闘機対戦車」に出ていた人だ!驚いたことに監督としても「ナショナル・セキュリティ」「ビッグ・ダディ」等をとっている。ちょっと口元がだらしないが、かわいい感じ。もっと大柄にし、オタクっぽくするとポール・W・S・アンダーソンになる(何のこっちゃ)。他に弁護士ケタリング役でウィルフリッド・ハイド=ホワイト。いつものように優雅で温厚そうに見えて、一筋縄ではいかないじいさん。今回はエロじいさんでもある。

刑事コロンボ38 ルーサン警部の犯罪

今回の犯人役はウィリアム・シャトナー。テレビの人気シリーズ「刑事ルーサン」。主役のウォード(シャトナー)は、ギャラの半分をプロデューサーのクレア(ローラ・オルブライト)にしぼり取られている。彼女は彼を発掘し、育ててくれた恩人ではあるが、過去の秘密を握られ、いくら稼いでも持っていかれてしまうことには嫌気がさしている。ある晩スキーマスクをかぶり、強盗に見せかけて、買い物中の彼女を射殺。衣装や銃は撮影用のを使い、ビデオと付き人マークを利用して、アリバイを作る。今回はテレビの名刑事対本職の刑事という趣向。白ずくめで気取ったルーサンは刑事には見えず、どちらかと言うとポアロ風。この作品で印象に残るのは、ルーサンではなくクレア。もういい年だが、それなりの色気がある。サンドイッチを買いに行った店の主人トニーにも口説かれる。ウォードとも以前関係があったようだ。夫シドには若い愛人がいる。そのせいかクレアは愛情生活には見切りをつけ、金の亡者になっている。「うんざり」というセリフが二回ほどあったが、仕事の鬼のように見えて、ややなげやりな雰囲気も。ルーサンの怒りも気に止めない。ゆすられ続けるのにがまんできず、相手が逆襲に転じるとは思わないのかな。何で絶対の自信を持つのかな。彼女の死後、シドは大金を相続することとなる。彼は妻がルーサンからしぼり取り、ため込んでいたことは知らない。邪魔な妻は死に、愛人と一緒になれるし、思わぬ金も入ってくるしで、いいことずくめ。もちろんウォードはシドに疑いがかかるよう細工するが、うまくはいかない。いつものことだが、彼は何もしない方がよかった。べらべらしゃべらない方がよかった。トニーの店ではなく、人目につかないところで撃ってもよかった。後で、クレアがトニーの店に行くことを知っていたのは四人だけ・・とか、そういうことにならずにすんだ。でもウォードはそうなって欲しかった。わざと目立ち、コロンボと推理を戦わせる。常に中心にいないと気がすまない役者の性(さが)か。クレアが握っていた秘密は、朝鮮戦争当時彼が脱走兵だったということ。あたしゃもっと・・殺人犯だったとか・・そういうの想像してましたけど。まあ・・何と言うか、愛だの恋だのに見切りをつけ、仕事と蓄財に励むというのは・・わかる気がするな。あそこまで相手を追い込んだりせず、ほどよいところで打ち切り、お金を使う楽しみ味わえばよかったのにねえ。

刑事コロンボ39 黄金のバックル

いつもそれなりに満足させてくれる本シリーズだが、今回はどうもよくわからず、不満が残る。リットン美術館の館長ルース(ジョイス・ヴァン・パッテン)は、婚約者ブラントが姉フィリス(セレステ・ホルム)と駆け落ちという苦い過去がある。オールドミスのまま今日に至った彼女の生きがいは美術館。しかし弟エドワード(ティム・オコーナー)は、経営不振を理由に館を閉じ、美術品を売却するつもり。そうはさせじとエドワードと警備員ミルトンを相討ちに見せかけて殺す。ミルトンはギャンブル依存症で借金があり、すでに美術品をいくつか盗んでいる。深夜泥棒に入ったところを残業していたエドワードに見つかり・・という筋書き。二人を殺したルースは、習慣で電気のスイッチを切ってしまう。この点をコロンボが不審に思い、現場には第三の人物がいた・・となるのはわかる。でも題名にもなってる黄金のバックルって?ルースはこれを姪のジェイニー(ジェニー・バーリン)の部屋に隠す。後でそれが見つかって彼女は拘置所へ。コロンボは差し入れの食料にまぜてそれも出す。それが何かも知らないジェイニーは、灰皿代わりにしてしまう。コロンボが彼女をシロだと確信しているのは見え見え。ここで彼が彼女に、父親はルースに殺された疑いがある・・と言い出すのは意外な展開。ルースは過去自分を裏切ったブラントを殺し、今また姪を陥れ、姉を苦しめようとしているのか。考えてみればジェイニーは妻のいるティム(ミルトンの兄)と不倫している。まるで昔のフィリスのようではないか。それにしても結局ルースはどうしたかったのか。エドワードを殺したって経営不振が改善するわけじゃない。彼女は本当にブラントを殺したのか。ジェイニーにはそう思って欲しくないようだが、姪を大切に思っているのならなぜ陥れたのか。お皿だと思われたものが実はバックルで、盗まれたと思ったら実は盗まれてなかった・・このあたりも非常にわかりにくい。ホルムは今年95歳で亡くなったらしい。「イヴの総て」で知られるが、私にとっては「いつかあなたに逢う夢」のフレッチャーの祖母!あの頃で80歳くらいか。フィリスは常に殿方の支えを必要とするような、すぐ失神するような、古風なタイプ。そういうコメディーっぽい部分と、常に硬い表情でシリアス路線のルース・・どうも見ていてバランスがよくなかったように思う。

刑事コロンボ40 殺しの序曲

天才達のクラブ、「シグマ協会」の定例会。図書室で二発の銃声・・階下にいた会員達が駆けつけると、バーティの死体。誰かが逃げて行ったようだが、近所に出没している泥棒の仕業か。実はオリヴァー(セオドア・バイケル)の犯行。彼はバーティと共同で会計事務所をやっているが、横領に気づかれ、公表すると言われ・・。今回はややこしい仕かけとか、コロンボに出されるテスト問題とか、そういうのはどうでもいい感じ。天才集団というのもさして生かされていない。オリヴァーは天才であるが故の苦悩の日々をしみじみ語るが、あまり共感できない。昔からバーティをいじめ、冗談の種にする。ああやって綿密な計画立てているし、前々から殺意いだいていたようで。明らかに楽しんでいるし、子供っぽい。それでも家に帰り落ち込むが、妻のヴィヴィアン(サマンサ・エッガー)がまたとんでもない女で・・。たぶんオリヴァーは自分とは全く違う彼女に魅力を感じ、結婚したんだと思う。知性とも苦悩とも無縁、まわりのことは気にしない自由奔放さ。でもそのうち間違いに気づく。とんでもない浪費家、自己チュー。バーティが死んだと聞かされても「忘れましょ」。途中でオリヴァーが犯行を告白しても「私には関係ない」。極めつけは、コロンボに逮捕されようかという時にかけてくる電話。「早く帰ってきて、あなたが欲しいの」・・まあ、このシーンには見てる人全員引っくり返ったことだろう。横領のきっかけはたぶん彼女の浪費。穴埋めしようとしたが株で大損。客の金に手を付け、それを隠すために裏帳簿。天才的な頭脳のはずが、やってることは他の犯人達と同じ。出てくる二人の秘書の扱いはわかりにくい。全体的にとっちらかった印象で、あまり出来がいいとは思えないが、いいところもある。コロンボの述懐・・まわりが頭のいい人達ばかりなので、自分なりに努力したということ。確かに彼は近道をしない。犯人の著書を読むとか、レコードを最初から最後まで聞くとか、自分の足、あるいは車で道のりをたどってみるとか。難問をさらっと解かせ、彼も実は天才なのだと強調したいらしいが、心に残るのはそういう地道な努力の方である。バイケルは「眼下の敵」に出ていた。愛想の悪いウエートレス役で、まだ無名のジャミー・リー・カーティスがちょこっと。

刑事コロンボ41 死者のメッセージ

今回の犯人役はルース・ゴードン。撮影当時80歳だったそうだが、元気なものだ。推理作家アビゲイル(ゴードン)は、70歳の今も現役ばりばり。二年先の分まで書いてあるというから大したものだ。四ヶ月前最愛の姪フィリスが海で行方不明になる。アビゲイルは、ヨットに同乗していた夫エドモンドが殺したに違いないと思っているが、証拠がない。死体もあがらず、このままでは気がすまない。彼女はエドモンドをあざむき、金庫室へ閉じ込め、ニューヨークへ。翌朝窒息死した死体が発見される。盗みに入ったエドモンドが、誤って閉じ込められた事故・・という筋書き。エドモンドがフィリスを殺したかどうかは不明なまま。彼の部屋を調べたコロンボは、妻の写真が一枚もないことから、夫婦仲は悪かったと推測する。また、アビゲイルは犯行の前にエドモンドにわざと宝石や札束を見せる。その時の表情から、彼の性格はある程度推測できる。彼の職業は不明。部屋の中にはさまざまなスポーツ用具。大きくて目立つのは・・ワインラック?たぶんハデな生活ぶりだったのだろう。とは言え、推測させるだけでなく、具体的な描写もあった方がよかった。でないと、閉じ込められ、窒息していく恐怖を味わって当然の悪党なのか、アビゲイルの復讐に全面的に味方していいものなのか、見ていても迷ってしまう。つまり、エドモンドに同情してしまうのだ。さて、コロンボは例によって有名人好きを発揮する。作品で殺人をいっぱい手がけているから、推理はお手のものでしょ・・。常識で考えれば相手は老人だし、ロス・ニューヨーク間を飛行機でとんぼ返りという強行軍の後。しかも血は繋がっていないとは言え、身内をなくしたのだ。少しは気を使うはずだが、無神経だし無遠慮。ところがアビゲイルもアビゲイルで、「何があったか説明できると思うわ」なんて言い出す。何で黙っていられないのかね。エドモンドの車のキーをめぐって面倒が起きるが、何で旅行に持って行って、向こうで処分しないのかしら。灰皿なんかに突っ込むから、秘書のヴェロニカ(マリエット・ハートレイ)に怪しまれ、給料上げろなどとやんわり脅迫される。たぶん見ている人の多くは、彼女とエドモンドが不倫していて、フィリスに気づかれ、始末したのでは・・と思ったはず。でも結局何にもなかったな。まあアビゲイルがラストで言うように、フィリスの事件をコロンボが担当していたら、こんなことにはならなかったんでしょうなあ。

刑事コロンボ42 美食の報酬

売れっ子料理評論家ポール(ルイ・ジュールダン)は、店の宣伝をする代わりに金を要求。支払い続けるのに嫌気がさしたヴィットリオは、ゆすりたかりをばらすと宣言。ポールはトラフグの毒を使って彼を殺す。今回はおいしそうな料理がいっぱい出てくる。コロンボはあっちでもこっちでもご馳走にあずかる。聞き込みに行くと、そこのシェフがヴィットリオは友人だったと料理を持ってくる。ヴィットリオの葬式では、店のシェフ、アルバート(ラリー・D・マン)が参列者にコロンボを紹介し、「捜査中は決してひもじい思いはさせない」と宣言する。イタリア人の団結とか、そういうのを感じさせる。今回はフランス人のジュールダン、日本人のマコ、フランスとベトナムのフランス・ニューエン、イタリア系のフォークなど、国際色豊か。フグ刺しに芸者まで出てくる。何の毒なのか、いつ飲まされたのか・・それがコロンボにはなかなかわからない。我々には何の毒かも犯人もわかっているが、いつどうやっての部分は見せてもらえない。ワインオープナーのカートリッジに仕込まれていたらしいが、カートリッジって何?ヴィットリオの友人デュヴァル(リチャード・ダイサード)、メアリ(ニューエン)の役どころがややあいまい。彼らはポールにはゆすられてなかった?ポールの秘書イヴ(シーラ・ダニーズ)の役どころもあいまい。ダニーズは「ルーサン警部の犯罪」にも不倫相手の秘書役で出ていた。フォーク夫人だが、演技はあまりうまくない。若いうちはそれでもいいが、いつまでも不倫相手、秘書役じゃ仕方ない。さっさと結婚相手見つけて、首尾よく後妻におさまった?マンはゲジゲジ眉にギョロ目の、肥満したオッサン。一度見たら忘れられない。ジュールダンはジャック・ロードを貧相にした感じ。ダイサードは「遊星からの物体X」に出ていたらしい。ヴィットリオの甥で、英語を話せない給仕マリオがアントニー・アルダ。びっくりするくらいきれいな顔立ち。レナード・ホワイティングとかそっち系。名前でわかるがロバート・アルダの息子。アラン・アルダとは異母兄弟になるらしい。どんな料理も彼には負ける。こんな美しさは長持ちしないだろうなあ・・え?52歳で死亡?あらら。ニューエンは、「コロンボ」の常連犯人役ロバート・カルプと一時結婚していた。監督は何とジョナサン・デミ。

刑事コロンボ43 秒読みの殺人

テレビ局CNC支社長マークのチーフ・アシスタント、ケイ(トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー)は、有能な女性。恋人でもあるマークは、ニューヨークへの栄転が決まると、あっさり別れを切り出し、彼女を後任に推す気もない。ケイはある晩試写の合間に彼を射殺。凶器はエレベーターの箱の天井にほうり上げる。フィルム交換をしていたというアリバイもばっちりだ。社長のフラナガン(パトリック・オニール)からは一時的にマークの代わりをするよう言われる。いちおう自分の思い通りになったわけだが、その仕事というのがなかなか大変で。まず思うのは、マークは殺さなきゃならないほどひどいやつか?ということ。犯行の動機としては少し弱い。ただ、女性の立場からすると、彼女の怒りももっともだ・・とはなる。マークが彼女を後任に推さない理由として、決断力のなさをあげていたが、半分くらいは女性だからというのが入ってる。女性が男社会でのし上がっていくには、男と同じことをやっていたのではだめ。それ以上の努力が必要。でもそうやって上へ行っても、今度は何でもよくできる女ほど厄介なものはない・・となるのだ。ケイは監督と出演者の橋渡し役、お金や日程の調整に追われる。生番組の主演女優ヴァレリーはケイの親友だが、甘ったれたろくでなし。さんざん世話を焼かせたあげく、酔って番組を放棄。ケイは急遽自分が作った映画を穴埋めにするが、低視聴率。フラナガンからは勝手なことするなクビだと言われるし、一生懸命やってるのに裏切られっぱなし。そういう時でも決して取り乱さず、生き延びてやる、返り咲いてやる・・と自分に言い聞かせる。コロンボに逮捕される時も、ホッとするのではなく、これからの戦いにファイトを燃やすのだから大したものだ。今回のようなことは(殺人は別として)初めてではなく、踏みつけられる度にぐっと耐え、よりいっそう努力してここまで来たのだろう。今回はコロンボがムチ打ちになるとか、モニターいじくって楽しむとか、フィルム交換に失敗するとか、お遊び的シーンもいくつか。ケイが子供の頃住んでいた家・・今は廃屋・・を訪ねるシーンもなくてもいいものだ。でもそこ・・自分の原点・・を訪れる気持ちはわかる。ディーヴァーは「マーニー」の時のティッピー・ヘドレンやダイアン・レインに似ている。知的で芯が強く、応援したい気になる。コロンボさんよ、逮捕はもうちょっと待って。憎たらしいフラナガンと、雑巾みたいなヴァレリー始末してからにして!

刑事コロンボ44 攻撃命令

心理学者のメイソン(ニコル・ウィリアムソン)は、飼っている二匹のドーベルマンを、電話のベルと、「ローズバッド」という言葉に反応して人を襲うよう訓練。自宅に助手のチャーリー(ジョエル・フェビアニ)を呼び、犬にかみ殺させる。自分は健康診断を受けている最中というアリバイを作っておく。彼の妻ロレーンは六ヶ月前に事故死したが、チャーリーと不倫していた。後でわかるが事故を仕組んだのはメイソンらしい。チャーリーの死体を見つけ、通報したのは、メイソン宅のゲストハウスに住み込んでいる学生ジョアン(まだ若いキム・キャトラル)。彼女はメイソンを慕っているが、彼は自分の空間に他人が入り込むのを許さない。チャーリーはプレーボーイのようだが、メイソンのような変人が夫では、ロレーンがよろめくのも無理はない。不倫に気づいたのならさっさと離婚すりゃいいのに、ねちねち計画を練り、残酷な方法を取る。犯行がばれないよう犬を殺そうとするが、コロンボが阻止する。ジョアンもたぶん殺されるところだったが、コロンボが邪魔する。コロンボがメイソンを疑い始めたのは、チャーリーが犬に襲われた時電話に出ていたため。メイソンは自宅に電話はかけてないとウソをつくが、正直に言った方がよかったのでは。まだ診断中で帰宅が遅くなると電話した、犬の声は聞こえたけど別に異状は感じなかったので切ってしまったとか。でも彼はチャーリーの悲鳴を聞いて喜んでいて・・ちょうどその時心電図取ってたから、興奮がそのまま記録されちゃった。それだって電話かけるために動いたからとか、待たせているのが気になってあせったとか、いくらでも言い訳できる。今回はメイソンがコロンボに興味を持ち、分析しようとする。「殺しの序曲」もそうだが、シリーズ終盤に入り、コロンボの非凡さを強調しようという意図が見える。そんなことする必要ないのに。ウィリアムソンの「恐怖の訪問者」は映画館で見た。なぜか涙を浮かべるという妙なシーンがあったと思う。それで印象に残っている。フェビアニは「秘密指令S」、映画だと「スネーク・アイズ」。「秘密」は前ケーブルテレビでやってたけど見なかった。録画しても見てる暇がないから。今作はややインパクトに欠ける。コロンボは「ローズバッド」に反応しないよう犬を訓練し直しちゃったけど、わざわざ証拠消しちゃったの?

刑事コロンボ45 策謀の結末

いろいろ楽しませてもらった「コロンボ」シリーズも今回で終わり。「新」も見たいけど、レンタル店は遠い・・。今回の犯人役はクライヴ・レヴィル。そう、あの「ヘルハウス」の堅物の、頑固な、主役かと思ったら殺されちゃう・・あのオッサンですよ。こちらでは歌は歌うし、楽器は弾くし、一人芝居はするし、演説もするという正反対キャラ。詩人、エンターティナー。犯人役にこういう一流の演技派揃えているから、このシリーズは高水準を維持できたのだろう。デブリン(レヴィル)は、アイルランドの争乱に苦しむ未亡人や孤児のため、援助活動をしている。しかし裏では集めた金を使って武器を調達。テロリストに流している。オコンネル工業の会長オコンネル夫人(ジャネット・ノーラン)と、その息子ジョージ(バーナード・ベーレンス)も仲間。ところが取引の仲介をするポーリー(アルバート・ポールセン)は、上乗せ代金を要求したあげく、金だけ持って逃げようという食わせ者。デブリンは彼を射殺。凶器はポーリーのものだし、デブリンと彼を結びつけるものはないから、捜査線上に浮かぶことはまずない。しかしポーリーの遺品の中にデブリンのサイン入り自伝があったせいで、コロンボが訪ねてくる。もっとも、今のデブリンにはコロンボのことより、調達できなかった銃の方が気がかり。アイルランドへ運ぶ船の出発は変更できないから、それまでに何とか手に入れなければ・・。さて、垂れ下がった鼻と、薄い唇・・決してハンサムではないが、機知に富んだ話術でまわりを魅了するデブリン。でも見ているこっちは、その精力的な言動に疲れた。彼は自分からのこのこコロンボに近づいていく必要はなかった。一緒に酒なんか飲むから、ウィスキーのビンのキズと、彼が結びついてしまった。大人しくしていてもそのうち彼が犯人だとばれただろうけど、武器の持ち出しには成功したかも。でもわざわざ動き回って犯人だとわかっちゃったし、武器の密輸のからくりも見破られてしまった。ノーランは「二つの顔」の時の家政婦。ジェーン・フォンダによく似ている。ベーレンスはジョディ・フォスターに似ているな。ポールセンもよく見かけた顔。今回びっくりするのは、書店でコロンボが「エロチック・アート」という本に興味しんしんなこと。こういう描写は珍しい・・と言うか、最終話でこんなシーン見たくないんですけどぉ・・。