フロッグ
これはネットで全部ネタバラシしてるのを読んでから見たんだけど、それでもおもしろかったな。ホントは何も知らないで見た方がいいんだろうけど、知りたがりやなもんで。別に見る気はなかったのよ。WOWOWのガイドブックの写真見ると何じゃこりゃでしょ。あれはカエルのお面なのね。出てるのもヘレン・ハントくらい、知ってるのは。でもほめてる人が多くて、それで見る気になったのよ。まあ全体的には「ドント・ブリーズ」みたいな感じ。他人の家に入り込むクソガキ・・いや、若者達。途中で大きなどんでん返し。最後じゃなくて途中ってのがね。それまではホラー映画っぽい。怪奇現象の起きる豪邸。広々としていて、他人が入り込んでいても気がつかないほど。刑事グレッグの妻ジャッキー(ハント)は不倫している。息子のコナーはそんな母親が許せない。家の中はぎくしゃくしたムードが漂い、会話も一方通行。家の中では妙なことが起きるが、小さなことなのでスルーされる。マグカップが一つ見当たらない。屋根の上にそのマグが置かれ、中には吸い殻。当然グレッグはコナーの仕業だと思う。グレッグが割った窓ガラスの修理人が来る。留守をしていたジャッキーの代わりに彼に対応したのは娘さんだと言う。娘なんていないのに。キッチンの引き出しから銀食器がなくなっている。ジャッキーはあの修理人が盗んだのだと思ってる。彼女の父親は結婚に反対していた。一介の警官じゃ稼ぎもしれている。それを押しきって結婚したのは、決して妊娠したからというだけじゃない。それなのに・・。巷ではジャスティンという10歳の少年が行方不明になって騒いでいる。他にもマイケルという少年が行方不明だ。15年前、六人の少年を埋めたゴードンという変質者がいて、スピッツ刑事がつかまえ、今は獄中にいる。グレッグはそのスピッツと組むことになる。ゴードンはえん罪を申し立てているが、証拠はばっちり揃っていたからスピッツは彼が犯人と疑っていない。今回の事件は獄中にいる彼は無関係だから、考えられるのは模倣犯。前回の事件では二人だけ脱出して助かった。そのうちの一人トミーに話を聞きにいくが、スピッツ達を見た彼は・・。まあここでカンのいい人ははは~んとなるんだろう。こういう映画だと、反則として主人公・語り手が実は・・というのがある。
フロッグ2
それが警官だったり探偵だったりするとますます反則だ。でも、どうせやるならコソコソしないでこの映画みたいに臆面もなく堂々とやるのがいいんだろう。見る方もチェッ、何でぃ~となるところ、そう来たか!と素直に驚きたくなる。さてどうやらジャッキーは不倫を後悔しているふうだ。グレッグはともかく、コナーが傷ついているのがこたえるのだろう。それにたぶん彼女もなぜトッドによろめいたのか実はよくわからないのではないか。今もコナーがいるってのに朝っぱらからノコノコ現われる。どう見たってまわりの見えないただのコマッタちゃん。外でもめていたら上から降ってきたマグが頭に当たり、血が出る。あわてて地下室へ連れていき、まずはコナーを学校へ送って、それから病院へ行こうと思っていたら・・。帰ってきたら彼は死んでいた。夕方までジャッキーは何もできない。だって家にいたのコナーだけだし、彼が殺したに違いない。不倫のことすごく怒っていたし。通報なんてできない。元はと言えば私が悪いんだし。よく考えりゃ二階から降りてきたコナーは、(マグを落とすことはできても)地下にいるトッドは殺せないんだけど。その後すぐ車で学校へ送っていったんだろうし。でも彼女はもうそう思い込んじゃってる。仕事から戻ったグレッグは、ジャッキーに手伝わせ、トッドを森の中に埋める。二人の留守中、何も知らないで学校から戻ったコナー。その彼が浴槽で縛られ、気絶してるのが見つかる。今まで妙なことがいろいろあったけど、これで家の中に誰かいることがわかった。グレッグはジャッキーにコナーを病院へ連れていかせ、自分は・・。ここまでが前半。突然映像が手持ちカメラみたいになって、かわいい女性がうつし出される。ここからは今まで起こったことを、ミンディとアレックという二人の侵入者の側から描く。種明かしと言うか。こういうのは別に珍しくないけど、普通ならフラッシュバックとかもっと短く見せる。でもここではていねいに長々と省略もせず見せる。ミンディはフロッグのプロを自称している。カエルがぴょんぴょん跳ぶように家を転々とするからフロッグ。やってることは犯罪だが、もちろん自分ではそう思っていない。家主に迷惑かけないとか、一ヶ所に長くとどまらないとか、ルールはきちんと守る。
フロッグ3
家主が気づかなければ犯罪になりようがないということだ。食べ物を失敬しても、金持ちは備蓄が多いから気づかない。カメラでうつすのはドキュメンタリーのつもり。ネットで流す時は画像に細工をして自分達の顔をわからなくするのだろう。ちなみにこの家を見つけてきたのはアレック。入ってみると広々としているし、普段使われていない客用の部屋もあって、おあつらえ向き。彼らが自由に動き回れるのは、昼間家に誰もいない時。それ以外は音を立てないよう気を配る・・はずが、今回が初めてというアレックはすぐに退屈し始めた。いくらミンディが言い聞かせてもだめ。ただ隠れているんじゃ何のために侵入したのかわからない、怪奇現象でからかってやりたい。屋根でタバコを吸うわ、銀食器を隠すわ、夜中にあちこち歩き回るわ。何でグレッグやジャッキーは目を覚まさないのかなと思うが、グレッグは不眠で睡眠薬使ってるからそのせいかも。ジャッキーが飲んでるのは精神安定剤か。彼女の仕事がカウンセラーというのは皮肉。「ドント」もそうだったけど、ミンディにも途中で見切りつけてこの家を出ていく機会はあった。もっともそれだと映画にならないけど。ミンディの説教がいやなのか、アレックは睡眠薬を失敬し、彼女に飲ませて眠らせる。彼の行動はただのイタズラ好きとは思えず、異常にさえ見えてくる。グレッグをクローゼットに閉じ込めた時の奇妙な行動。眠っているグレッグに立ちションとなると、もう何を考えてるんだ?って感じ。写真の顔部分を傷つける行為もそうだ。何も知らないで見ていれば、彼が今回の誘拐事件の犯人なのではとさえ思えてくる。ただ、ラストの方で彼の正体がわかってみると、なるほど・・となる。助かった二人の少年のうち、トミーは出てきたが、もう一人は出てこない。なぜスピッツ達はもう一人に話を聞きにいかないのか。トミーと同じで、こっちを見たとたん錯乱するのがオチ・・と省略したのか。それにしたってそれを言うシーンがあっていいものだが。精神的なショック受けて病院送りになったが、退院後は行方知れずとか。あれこれあって、ミンディは殺されてしまう。こういう映画だと女性の方が生き残るのが普通なので、ここはちょっとびっくりした。彼女は森の中で明かりのついたトレーラーを見つけ、中に入る。
フロッグ4
この中にマイケルとジャスティンが閉じ込められているわけだが、あの時点で逃げていればねえ。もっとも子供達が助かったのは、彼女のおかげ。犯人は子供達を埋めるための穴を掘っていたが、彼女を見つけたせいで子供達の始末は後回しに。家に戻って彼女を殺し、彼女やその仲間が誘拐犯・・そういうふうに細工する。コナーの件があるから、誰も疑わないはず。ミンディには気の毒だが、他人の家に入り込むプロを自称する時点でもうアウトですがな。アンタ何考えとるの?って感じ。おまけに仲間に引き入れたアレックがあまりにもイカれたやつだった。彼がいなければ普通に数日滞在して、すぐ次へ移って何事もなかったのに。隠れていなければいけないのにアレックの行動は見つかりたいと思ってるとしか・・。でも見終わってから考えた。閉じ込められて出せと叫ぶグレッグの声を聞き、すき間から様子をうかがっていたのは・・。自分もああやって閉じ込められ、叫んでいたのではないか。その様子を相手はすき間を通してうかがって、たぶん愉悦に浸っていたのではないか。それが今は立場が逆。立ちションしたのも、たぶん相手に同じことされたのではないか。ヘナチョコに見えるアレックだけど、犯人との格闘では意外にがんばってた。彼はやられるわけにはいかないのだ。復讐を遂げるまでは。彼がこの家を見つけてきたこと、怪奇現象を起こしてからかってやりたがったこと、み~んな理由があるのだ。あ、そうなるとコナーをあんな目にあわせたのは彼とジャッキーをこの家から遠ざけるためかな。誤解したスピッツに撃たれ、最悪の結末にもなりそうだったけど、どうにか助かったようでよかったよかった。子供達も救出されたしよかったよかった。こういう映画は後味がよくなきゃ。一方病院から戻ったジャッキーとコナーは何が起きたかわからず呆然。そう言えばクライマックスの間中この二人は不在でしたな。特にハントは一番最初に名前が出てくるから主役だろうに。グレッグ役ジョン・テニーは知らない人。「レギオン」に出ていたらしい。コナー役ジュダ・ルイスは整った顔立ち。首の太い女の子でもいける。アレック役オーウェン・ティーグは見覚えがあるが「セル」に出ていたようだ。この映画の成功は彼をキャスティングしたことが大きいと思う。
フロッグ5
もちろん他のキャストもいいんだけど、ティーグの容姿が、アレックというとらえどころのないキャラにぴったりはまっている。ルイスのように整っていなくて、流動的な顔立ち。ケヴィン・ベーコン風で一癖ありげ。二回目はアレックの言動に注意しながら見ていたが、その微妙で繊細な表情には感心してしまった。復讐を誓いながらも、時にはぐらつくとか。トミーもそうだが、どんなにつらい日々を送ってきたか・・気の毒に。それにしてもミス・マープルの村とは大違いですな。カーテンのカゲからヒマを持てあまして日がな一日外を覗いてる老婆はいないようだ。見慣れない男女が閉まりかけたガレージに滑り込んでも、夜屋根の上でタバコ吸う火が見えても誰も気づかない。回想シーンで、犯人がアレック達に堂々と素顔をさらしているのは・・という意見がある。でも犯人は子供達を生きて帰そうなんて思ってないから、素顔見られても気にしなかったんだと思う。15年たってなぜまたやり始めたのかという意見もある。たぶん二人に逃げられたことで、犯人はあわてたと思う。本当はもっと続けるつもりでいたに違いないが、早急に犯人をでっちあげ、事件は解決したことにしなければならない。こういう時のために前々から目をつけていたのが小児性愛者のゴードン。恐怖でおかしくなってるトミー達の証言が必要ないくらい完璧な証拠を揃え、逮捕する。ただしこれ以上犯行を重ねることはできないから、衝動は封印する。で、15年たつ。再開したのはたぶん妻の浮気のせいだろう。怒りを妻にぶつける代わりに少年達にぶつける。再開してもせいぜい模倣犯の仕業となるくらいで、自分には結びつかない。トミーに会いにいったのは賭けだったと思う。でも錯乱した彼が何か口走ってもスピッツは信じないだろう。警官はみんなそうだが、解決ずみの件について変更を認めるのはいやがる。ゴードンを逮捕したのは間違いだったなんて思いたくない。もっとも、前回の失敗があるから今回は自分の顔を見せないよう用心してはいると思う。そのわりには森の中、あかあかと明かりのともったトレーラーは目立ちすぎるけどね。他に何があったかな。そうそう、内容には関係ないけど冒頭のアイスクリームの屋台に行列する子供達。一番後ろの小さな男の子。ボクの順番まだかなあ・・って感じでもみ手して覗き込んでる格好がきゃわゆかった~!!