ずっとお城で暮らしてる
これは文庫が出ているが、未入手。作者シャーリィ・ジャクソンは「たたり」を書いた人。メリキャットは18歳。姉のコンスタンス、伯父のジュリアンの三人でお城のような屋敷に暮らしている。六年前、夕食の席で家長のジョン、妻、ジュリアンの妻がヒ素で毒殺された。疑われたのはコンスタンス。しかし無罪放免になった。ジュリアンは毒のせいかどうかよくわからんが、車椅子生活。事件の真相を突き止めようと本を書いているらしい。精神的な後遺症のせいか、コンスタンスは家から離れることができず、買い物や図書館で本を借りるのはメリキャットの仕事。しかしその彼女も町へ出るには魔法の力を借りなければならない。銀貨を土中に埋めるなどいろいろなまじないをし、自分は守られていると暗示をかける。町の人は好奇の目で見るのはまだいい方で、様々な罵倒を浴びせる者も。親切にしてくれるのは食堂のステラだけだ。メリキャットが、寄る必要もないと思われるのに食堂に来るのはそのせいか。ちょうど消防士のジムが来た。コンスタンスと恋仲になったが、メリキャットがジョンに告げ口してぶち壊す。彼はそのことを恨んでいる。ある日いとこだというチャールズが現われる。メリキャットにとっては、自分の生活をおびやかす侵入者だ。彼は明るくハンサムで気さくな性格。たぶん見ている者は本当にいとこなのか?とか、金が目当てじゃないか?と疑いの目で見る。毒殺事件を起こしたのがメリキャットだというのは、(原作を読んでいなくても)予想がつく。あの時彼女は父親に罰せられ、夕食の席にはいなかった。ひねくれた性格で、誰も彼女を疑わないのは妙に思われる。コンスタンスの方が、ジムとの仲を裂かれたという強い動機があったからか。ジョンは銀行が嫌いで、金庫に現金をしまってある。電話も引いていない。チャールズはそれらを心配する。初めて会った時からメリキャットは彼を拒否し続ける。彼がいくら歩み寄ろうとしても受けつけない。ジュリアンの様子がおかしい。チャールズは病院へ入れるよう勧めるが、コンスタンスは断る。彼はジョンの持ち物で高価な金の腕時計がメリキャットによって埋められていたり、コンスタンスが銀貨の価値をよくわかっていないようだったりと、姉妹の奇妙さに呆れる。
ずっとお城で暮らしてる2
原作を読んでいないので、チャールズのことはよくわからない。いい車に乗っているし、イタリアへ行ったこともあるようだ。仕事をしているのかどうかも不明。たぶん彼は自分ならもっと有益な金の使い方ができると思っているのだろう。善良と言うか、自分というものがなさすぎるコンスタンスだが、彼女は明らかにチャールズに引かれている。危機感をつのらせたメリキャットは、チャールズのシャツのボタンを引きちぎり、車に傷をつけ、食事中に毒キノコの話をする。見ている人はとうてい彼女に共感できない。性格が悪すぎる。そのうちチャールズはのべつまくなしにコンスタンスを呼び立てるようになる。まるで一家の主人気取りだ。ジュリアンはますますおかしくなる。認知症か。メリキャットは森で両親の幻を見る。死んでからもなお威圧的で、彼女を支配するかのような父親。メリキャットはチャールズのパイプをクズかごへ。火がついてるからそのうち火事になる。チャールズが邪魔とは言え、屋敷まで燃やします?大急ぎで車で走り去るチャールズ。いや、逃げるんじゃありません。火事を知らせに、助けを呼びに行くんです。何しろこの屋敷には電話がない。彼としては金庫の中の大金が気になっていたことだろうが。ジム達消防士が駆けつけるが、野次馬も大勢やってきた。彼らは喜んでいる。閉じこもって自分達となじもうとしない姉妹を憎んでいる。大金を持っているのが妬ましい。そのうち邸内に乱入し、窓ガラスや家具を壊し始める。姉妹を見つけるとリンチにかける。警察のサムが威嚇射撃をしてやっと事態を鎮める。ジュリアンは死に、戻ってきたチャールズはメリキャットによって殺される。コンスタンスと二人で死体を埋める。コンスタンスにも毒殺犯がメリキャットだということはわかっている。わかっていて妹をかばった。焼けて廃墟のようになった屋敷で姉妹は暮らし始める。今のメリキャットは、かつてのジョンのようにコンスタンスを支配している。ラストシーンで彼女は初めて笑顔を見せる。メリキャット役は「運び屋」で見たばかりのタイッサ・ファーミガ。コンスタンス役アレクサンドラ・ダダリオは「パーシー・ジャクソン」シリーズに出ているらしい。胸糞の悪い映画だが、チャールズ役セバスチャン・スタンが驚くほどマイケル・ビーンに似ていて、それがたった一つの救いだった。