Mr.ディーズ
この映画はゲーリー・クーパー主演の「オペラハット」のリメイクらしいが、私が思うにこっちの方はオリジナルよりかなり下品な作りになっているのではないかしら。子供は喜ぶけど親はあんまり見せたくないドリフターズのコントのようなもの。パロディだとわかっているけど素直に笑えないギャグの連発。アダム・サンドラーの場合、悪ノリ感とほのぼの感のバランスがうまく取れていると「ウェディング・シンガー」みたいに見終わって気持ちよくなることができるのだが、今回は悪ノリしすぎて下品になってしまった。世間知らずの青年が大都会に行き、そこで出会った女性に一目ぼれというのは「タイムトラベラー」も同じ。青年がとほうもない大金持ちとか、女性はすれっからしだが元々は純情・・というのも同じ。「タイムトラベラー」は舞台は現代でも古きよき時代を感じさせるうまい作りになっていた。何よりも主人公を演じたブレンダンの品のよさがそのまま作品のよさにつながっていた。下品さや悪趣味はサンドラーの持ち味でもあるが、度を越した悪ノリは作品の品格まで落としてしまう。私はほのぼの感を期待して行ったので、その点ではひどく残念に思った。出演者ではジョン・タトゥーロがよかった。召使のエミリオ役で、スッと現われたり消えたりするところがおかしい。足フェチなのも笑えるが、一番おかしかったのはピーター・ギャラガー扮するセダーにプエルトリコに返すぞと脅かされて、私はスペイン人ですと言って「オ・レ」とやるところ。サイコー!さすがのサンドラーも彼に完全に食われてしまっている。大金持ちでこだまが返ってくるほど部屋が広いとか、エレベーター係にディーズが仕事の方はどうだいと聞くと、「上下している」なんて答えるところがおかしい。ディーズがピザを配達した三人のおばあさんのキャピキャピぶりや、それを見てウヒョホと喜んでいるセシルにセダーが「立たせるな」なんて意味のよくわからんことを言うのがおかしい。こういう毒のないさらっとしたギャグの方が笑えるものなのだ。マッケンローとの悪さや、二万ドルずつお金をばらまくところなんて笑えませんぜ。それと溺れているヒロインを助けないところもバツ。いくら前にだまされたからといってもね。ここでディーズの評価はがたんと落ちてしまい、その後のカードのシーンも感動が半減した。こういう映画では主人公は何があっても女性にやさしくないとだめよ。