赤い連発銃

赤い連発銃

この映画は見たことあるかどうかはっきりしない。あるような気はするけど。1956年というと、「抜き射ち二挺拳銃」の四年ほど後だ。でもオーディ・マーフィはほとんど変化なし。あ、でも笑うと目尻にシワがあったな。髪はきれいになでつけられ、ヒゲもなくかわいらしい。顔のアップはあまりなく、横顔をうつすことが多い。特徴のある鼻がやっぱりかわいらしい。ほとんど女性に囲まれているので、チビなのも目立たない。いや、中には彼より背の高い女性もいたけどさ。時は南北戦争も終わりに近づいた頃。フランク(マーフィ)は北軍の中尉だが、出身はテキサスらしい。見回りの途中シャイアン族の一行と出会う。インディアンが勝手に居留地を離れるのは禁じられているが、彼らは丸腰だし目的も取引か何か。フランクはとがめだてせずにおくが、報告を聞いたシビントン大佐は、こらしめてやると、フランクの制止も聞かずシャイアン族を急襲。フランクは先回りして警告しようとしたが、間に合わなかった。彼はそのまま脱走兵としてテキサス国境近くのジョーンズヒルという町へ。北軍兵士なのは服装でわかるので、町の者にスパイ扱いされるが、そこへコマンチ族が襲ってくる。保安官事務所にある武器が目的で、奪った後はさっさと引き上げる。この時代の状況はよくわからないが、居留地から出るなというのはずいぶん勝手な規則だと思う。白人の方が後から来たくせに。シビントンの行動も短絡的で、頭がおかしいんじゃないかと思えるほど。こんなのが上官だと部下は苦労する。襲われたのがシャイアン族で、仲間が復讐しにくるというのならわかるが、襲ってくるのはコマンチ族。いったいどうなっているのだろう。インディアンを助けようとしたフランクが、今度はインディアンと戦うというのもよくわからん。でもこういう矛盾した行動を取らざるをえない時代だったのかも。いつの間にかシャイアン族の・・サンドクリークの襲撃から二週間もたっているのに驚く。フランクは準備を整えてから脱走したわけではなく、着の身着のまま同然。お金とかどうなっているのかな。

赤い連発銃2

彼がやって来たのは昔の恋人ステラのところ。待つよう言ったのに、彼女はフランクが去った一週間後にはエドと結婚。彼は出征中なので、彼の弟バックスと暮らしている。フランクがなぜ北軍へ入ったのかははっきりしない。「気がとがめて」というセリフがあるが、奴隷制度についての発言はなし。シビントンへの態度でもわかるが、不正をよしとしない性格なのは確か。ステラの結婚もずいぶん早いが、絶望したため衝動的にということらしい。フランクが南軍へ入ったのならともかく、北軍だしね。フランク自身は南北両方からの脱走兵・・みたいに感じている。ここらへんは少し変わっていていい。さて、ステラには相手にされず、次に警告しに行ったハンナにも追い払われる。アンという女性が、北軍に父親を殺されたと彼を撃ってくる。さすがにフランクも頭にきて、わざわざ(警告に)戻ってきたのに勝手にしろ・・となる。しかしコマンチにやられたドーラの死体を見つけ、ハンナのところへ運ぶ。それでやっと彼女も危険が迫っていることに気づき、女性や子供を教会へ集める。このハンナは大柄で、彼女の横にいるとマーフィのかわいらしさがいっそう目立つ。ドーラの葬式をしていると、数人の女性が乗った馬車が来る。オグデン夫人と黒人のメイド、ヘティ。他の女性は・・歌手らしいルーシーとその仲間?よくわからん。ルーシーはお化粧ばっちりで、デコレーションケーキのクリームみたいなヘアスタイル。男性は皆戦争へ行っていて、残っているのは女性ばかりというのがこの映画の特徴。牧師もいない。残っているのはケトルという男だけだが、なぜなのか不思議。病気でもないしケガをしているわけでもない。とにかくフランクの指揮で襲撃に備えての準備が始まる。女性がたくさん出てくるので、初めのうちは見分けがつかない。射撃の訓練、格闘の訓練もどことなくお気楽。しかしフランクは大真面目で、脇目もふらず指揮して回る。中には彼がいばっていると不満持つ者もいるが、その一方で彼をかばう者も。

赤い連発銃3

ステラは元恋人が現われたのだから心が動く。元々エドのことが好きだったわけじゃないし。しかし自分に正直になられてもフランクは困惑するだけ。ここへ駆けつけた一番の理由は彼女のことが心配だったからだろうが、結婚しているとわかってからは節度を保つ。それに今の彼はアンに心引かれ始めている。しかし彼女だけ特別扱いはしない。私がマーフィの映画を好きなのは、ベタベタイチャイチャシーンが少ないからである。たとえインディアンの襲撃が迫っている状況でも、たいていの映画なら恋の花が咲き開く。これがマーフィではなく、例えばチャールトン・ヘストンだったら・・。30過ぎの若くてたくましくて男臭さムンムンの偉丈夫。それでなくても男っ気なしの生活が続いている女達。用もないのに話しかけたり気を引いてみたり。ヘストンだったら絶対ステラに迫られても困惑なんかしないし、その一方でアンともよろしくやるんだろうなあ。でもホラこっちのフランクはチビで童顔で生真面目で。つまり人間としての幅がない。なぜインディアンと戦わなければならないんだろうなんて悩んだりしない。とにかく生き延びなければ、女子供を助けなければ。その単純さがいい。残された時間が少ないのなら自分に正直に・・と、ステラもアンも思い始めるが、フランクの方は反応鈍い。アンにキスされても何もしない。今一番に考えてることは生き延びることだが、それをクリアーしたとして、次に待ち構えているのは自分が脱走兵だということである。アンの愛にこたえるのは身の潔白を証明した、その後だ。話を戻してケトルはメアリーに結婚を迫られている。子供でもできて、それで必死になってるのかと思ったがそうでもないらしい。彼女は一途な性格で、目が曇ってケトルの本性が見抜けない。ケトルが女達にここから抜け出そうとけしかけているのを聞いたフランクは、馬を放してしまう。ここから出たらコマンチにやられてしまうから、脱出の手段を断ったのだ。自分の馬だけ見回り用に残しておくが、ケトルはメアリーをだまして自分だけその馬で逃げてしまう。

赤い連発銃4

その時もフランクはメアリーはケトルを止めようとしたようだと、彼女をかばう。ケトルは途中で三人組の男につかまり、その場しのぎに女がいっぱいいる、宝もあると話すが、あえなく殺されてしまう。三人組を見たフランク達は応援が来たのかと喜ぶが、それも一瞬。追い返された三人組はコマンチに出くわし、彼らを教会へ連れてくる。フランクは一計を案じて全員で屋上へ上がり、教会内はもぬけの殻に見せかける。計画はうまくいくかに思えたが、バックスが銃を暴発させてしまい、その後はコマンチとの戦いとなる。この時もフランクはバックスを責めない。三人組の出現は唐突で、正体は不明。しかもあえなくコマンチに殺されてしまう。フランクは三人組の一人が乗っているのが自分の馬なのに気づくが、取り返しもしなかったな。さて、いよいよコマンチ対ペチコート軍団の戦いとなるが、私はてっきり途中で軍が駆けつけてきて、コマンチを蹴散らすのだと思っていたが違った。フランクは一人教会を抜け出し、祈祷師を殺す。そしてその死体をコマンチ達に見えるよう吊るす。それで彼らは退散する。女性達の中には死傷者も出たけど、戦うことによって生き方を見直す者も。例えばステラはエドを待つことに決めたし。フランクは軍に出頭する。軍法会議にかけられるが、裁くのはシビントンだから絞首刑間違いなし。しかしそこへファーウェル大将が現われる。フランクは脱走する前ファーウェルに手紙を書いていた。シビントンの暴挙を知らせてあったのだろう。で、調査の結果その通りだとわかったのだ。フランクの言い分をシビントンは全く信じないが、銃を構えたハンナ達が押しかけ、フランクの正しさを証明する。このラストはすっきり痛快となるはずだが、見終わってみると、あれッ、どうだったっけ?となって、もう一度見直すはめになる。シビントンにスパッと制裁が下されないのがその理由。喜んだフランクとアンがキス・・ともならない。女達が現われ男どもはたじたじ・・それもそのはず彼女達は彼らの奥さんで・・というのならオチとして最高だが、あいにく彼女達は南軍兵士の家族だからね。