美女と怪物

美女と怪物

アリゾナにあるミュラー教授の屋敷は”城”と呼ばれている。このミュラーはなぜか足が悪い。演じているのはエリッヒ・フォン・シュトロハイム。こうして見るとどことなくヴィン・ディーゼルに似ている。助手のパトリックがリチャード・アーレン。原作の「ドノヴァンの脳髄」は読んだことないけど、あっちではパトリックが主人公でジャニスはその妻。ミュラーは出てこないようだ。映画ではパトリックとジャニスは恋仲。ミュラーは亡くなったジャニスの父親の代わりに彼女を見守るという立場にあるが、彼女は彼を嫌っている。彼のは親心じゃない独占欲だ。もっとも見ているこっちはミュラーが独占したいのは彼女じゃなくてパトリックのように思えるが。二人の交際を何かと邪魔しまくるのは、彼の研究にはパトリックの助力が不可欠だからだ。彼は死んだ後も脳を生き続けさせたいと思っている。パトリックは脳波計の権威で、実用性を証明したい。いちおうジャニスにも科学者の素質があるらしいが、看護師に毛生えたくらいの扱いしかされない。そう言えば女性のマッドサイエンティストっていたっけ?さて、サルを使った実験は思うような結果を出せずに終わる。ジャニスはパーティへ行くつもりだった。でもパトリックがミュラーと実験を始めちゃったため、仕方なく自分も手伝う。実験の後、意地でもパーティへ行くが、途中で電話が入り、デートはまたまた邪魔される。小型飛行機が墜落し、乗っていた二人は死亡、一人はまだ息がある。城へ運び込むが、マーティン医師が来た時にはすでに死亡。しかし実際にはまだ脳は・・。ミュラーはかねがね人間を使って実験をしたいと思っていたから、これは願ってもないチャンスだ!自分の理論を実証したい!パトリックは犯罪だと言いつつ、自分の研究のこともあるし・・。このパトリック・・すぐ気が変わると言うか、押し流されると言うか。結局こういう性格のせいであんなことになるんだな。脳は取り出され、培養液に漬けられ・・ってこれじゃ漬物、ピクルスみたいだな・・浸けられる。脳波が記録され・・機械から吐き出されるテープをミュラーやパトリックがじっと見つめるという、動きの少ないあまりワクワクできない描写。ま、この時代のSFじゃあそれ以上のことは無理か。

美女と怪物2

パトリックのドノヴァン化も、下からライトあてるなどして工夫。下からあてるだけでけっこう凶悪な人相になる。肝腎の脳の持ち主だけど、ドノヴァンという有名な富豪だった。夫人と弁護士のフルトンが来て、最期に何か言ったか知りたがる。適当に言い繕うが、早くもフルトンは二人の態度に不審なものを感じ、城に侵入。脳を盗んだことを(あっさり)知る。ジャニスはここから逃げようとパトリックをせっつくのだが、はその場ではその気になってもミュラーのところへ行くとすぐ気が変わってしまう。だんだん実験にのめり込んでいく。彼を愛しているジャニスは結局がまんしてここへ居続けることとなる。この後パトリックはさんざんジャニスにひどい態度を取るのだが、彼女は最後まで彼を守ろうとする。よっぽど好きなんだろう。ジャニス役はヴェラ・ラルストン。元々はフィギュアスケートの選手だったのだそうな。眉が太くて目がちょっと垂れていて、美人と言うより個性的。私がいいなと思ったのは、パトリックがロスから電話すると、手紙を書いていたところだと言うところ。電話やメールじゃなくて(←?)手紙というのがいいですな。さて、脳を生かし続けることには成功したけど、交信できないのでは何にもならない。何かいい方法はないものか・・って、アンタら前もってそういうこと考えておかなかったんかい!で、脳を強化してテレパシーで交信を・・ということになる。媒体として頭の中を空っぽにできる人間が必要だが、それがパトリック。今では彼の方がミュラーよりのめり込んでいる。意外なことにミュラーのカゲがだんだん薄くなる。こっちはシュトロハイムだし、マッドサイエンティストだしと思いながら見ているのに。でもほら最初に書いたように原作ではパトリックがマッドサイエンティスト。一人のキャラを映画では二人がやってるわけだから、なかみが薄まるのも当然なんだよな。さてパトリックはだんだん脳に操られ始める。最初は少しだったけど、だんだんドノヴァンでいることが多くなる。彼の秘密口座から大金を引き出す。連邦刑務所へ行って死刑囚のコリンズに面会する。彼の罪名が義父殺しと知らなかったということは、その時はまだパトリックの部分が残っていたということか。フルトンには金はいくらでも出すからコリンズを無罪にしろと命令する。

美人と怪物3

この頃新聞にドノヴァンは詐欺師とかいう記事が載るけどどういうことかね。コリンズは無罪を主張しているが、有力な目撃証人のせいで不利。証人はマリールーという少女。コリンズがドノヴァンの息子なのは予想がつく。夫人やフルトンが最期の言葉を知りたがっていたのは、今のままだと莫大な遺産を相続できないからか。遺言書がどうなっているのかは不明だが、彼女達はコリンズが(無罪になって)相続人となるの阻止したいのだ。最後の方で明らかになるが、コリンズはドノヴァンの先妻との間の隠し子。あらでもこれっておかしくないか?先妻以外の女性との間にできたから隠し子になるんでしょ?先妻が他の男性との間に作ったのなら隠し子だけど。で、殺された義父ハワードはドノヴァンの秘書をしていて、彼の伝記を書こうとしていたらしい。裏の顔を書かれちゃ困ると止めたけど聞かなかったから殺したんだろう。つまりドノヴァンは無実の息子は助けたいけど、自分が殺したとは言えないから、また自分は脳だけになって動けないから代わりにパトリックを操って金をばらまいて何とかしようとしたと。何か無理のある設定ですな。もう死んだことになっていて裁きを受ける心配もないのだから、自分が犯人だと発表した方が簡単なのでは?パトリック操って自白書書かせりゃいい。と言うか、夫人とフルトンが共謀してハワードを殺して罪をコリンズに着せ、飛行機に細工してドノヴァンも殺した・・その方がすっきり筋が通るな。さて、城の家政婦フェイムはミュラーの言いなりの人物に思えたけど、なぜかここへ来てジャニスの味方をし始める。こりゃてっきり実は彼女はジャニスの生き別れの母親で・・とかなるのだと思ったけど、違ったな。彼女は単にミュラーのやり方ががまんできなくなったと・・そういうことらしい。クライマックスではミュラーを撃ち殺し、ジャニスが脳の入った容器を破壊する。フェイムの銃の撃ち方だと足に当たると思えたけど。もっと上に向けて構えないと・・。てなわけで、やったことがやったことなので、フェイムのミュラー殺しはおとがめなし。パトリックは少々服役した後ジャニスと結ばれハッピーエンド。ん?無実のコリンズはどうなったの?何でこういう大事なこと省略したまま映画終わらせるかなあ・・。