ヒッチャーシリーズ

ヒッチャー2 心臓”完全”停止

「ヒッチャー」は何作か作られている。リメイク版を見た後、オリジナルの方も見た。ルトガー・ハウアーもいいけど、私はやっぱりショーン・ビーンの方が印象強烈かな。あと「ヒッチャー95」も見てみたい。キーファー・サザーランドが出ているから。今回のヒッチャーはジェイク・ビジー。こういう得体の知れない役にはぴったりだが、終わってみるとあんまり印象に残らない。こういう役キーファーがやるとはまると思うんだけど・・(妄想)。「心臓”完全”停止」は一作目の正統な続編ということらしい。冒頭今度はジム(C・トーマス・ハウエル)がヒッチャーに?と思わせておいて、実は・・となる。滑り出し(だけ)は好調。ジムは警官になったが、15年前の出来事はいまだに彼を苦しめている。今回も事件は解決したものの、過剰防衛ということでクビになってしまう。恋人マギー(カリ・ウーラー)との仲も不安定。何とかトラウマを克服しようとエスタリッジを訪ねる。リメイク版ではエスタリッジは死んじゃうけど、オリジナルでは生きているからね。途中ヒッチハイカーを乗せたことから再び悪夢が・・。ジムは断固乗せないつもりだったけど、マギーが強引に乗せてしまう。マギー大減点。ストーリーは似たり寄ったり。警察に行かないでどんどん状況を悪くする。次はこうなるって見え見えだし、元凶はマギーだからあんまり同情もできない。途中でジムが死んでしまうのは意外だが、あとはリメイク版と同じ流れ。ウーラーはアシュレイ・ジャドを横に広げたような顔立ち。なかなかの美人だし体つきもボリュームがあっていい。ラスト、ヒッチャーと対決し、彼女が勝つというのは決まっているので、そこへ行くまでどう見せるかがこの映画の肝。飛行機で立ち向かうのは目新しいが、機体に穴をあけられてから反撃する反応の遅さにはがっくり。さっさと始末せず、手のこんだことしてるうちに警官が来て止められてしまうというのも興味をそぐ(「サンフランシスコ大地震」と同じ)。一人だけマギーを信じてくれるカスティーヨ(ショーン・ジョンストン)もあっさり死んじゃうし、心が晴れない映画だ。それなのになぜ見たかというとスティーヴ・レイルズバックが出ているから。カメオ出演みたいな感じなのはわかっているから、最初から期待しない。その通り数分で出番終わり。死体ででもいいからもう少しうつるかと期待したけどそれもなし。残念でした。

ヒッチャー (2007)

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしく。新年一発目は「ヒッチャー」でありんす。公開三週目、一回目は20人くらい、二回目は15人あまり。久しぶりのシネパトス。中年男性が多いが、女性もちらほら。きっとショーン・ビーンのファンだろう。私はファンと言うほどではないが、興味は持ってる。見たのは「フライトプラン」「サイレントヒル」「ナショナル・トレジャー」「リベリオン」。「ナショナル」では悪役だったけど、憎たらしいと言うよりかわいそうで。渋くて知的で端正でどこか人がよさそう。おだやかで誠実そう。でもだからこそ冷酷無比の悪党やる彼を見てみたい。きっと似合うと思うわ~。まあ私は「ロード」全く見てないので、元々どういうタイプ・・いい人専門なのか悪役専門なのか・・知らないんですけどさ。さて「ヒッチャー」は20年ほど前にルトガー・ハウアーとC・トーマス・ハウエルで作られていて、今回はリメイク。批評とか読むとみんなハウアーを大絶賛。でも私は見たことないので比較できましぇん。内容も少し違っているようだ。私の感じではリメイクの方は女性・・つまりグレースに比重がかかっているような。内容は・・いかにもシネパトス向き。つまりシャンテシネなんかでは絶対やらない。アメリカでは毎年42000人がハイウェイで死亡するとか何とか字幕が出て映画は始まる。交通事故で・・って出るわけじゃないから、死亡人数の中には事故死の他に、ヒッチハイカーに殺されたとか、ヒッチハイカーが殺されたとかというケースもあるのだろう。ほとんどの人は内容わかっていて見にくるのだから、こんな数字ぽこっと出して通り過ぎるんじゃなくてもっと工夫すりゃいいのに。犠牲者42000人のうち、交通事故死は○○人である・・とかさ。そうすりゃお客はいっせいに頭の中で引き算始める。うまくすりゃ次に出てくるウサギ見逃してくれる。いやホント「ミス・ポター」でも始まったのかと思っちゃった。画面に全くなじんでいなくて不自然に浮き上がっているアニメばればれのウサギが出てきて、車にはねられてわざとらしくまっぷたつ(三つかもしれんが)。もうこの瞬間映画の出来がわかるわけ。安っぽい二流映画だぞ・・ってね。次に出てくるトンボもアニメばればれ。「ビー・ムービー」かと思っちゃった。何でこういう余計なことするのかね。

ヒッチャー2

さて・・グレースとジムの大学生カップル。休みで車で遠出する。別に大した用事あるわけじゃない。家族や友人にカレシ自慢したいだけ。見せびらかしたいだけ。そんな感じ。でも自慢するようなカレシでもないんだけど。ジムを演じているザカリー・ナイトンは大学生にしてはちょっと・・と思ったら20代後半。やっぱりねえ・・何か汚らしい。せめてヒゲがなければねえ。顔立ちはまあまあだし人のいい性格だし、悪くはないけどもうちょっと何かが欲しい。ういういしさとかさ。あれじゃオッサン。グレースは・・この映画の見どころは怒涛の数日間における彼女の成長なんだけど、こちらもねえ。最初出発する時の彼女はキャッピキャピ。まず時間にルーズ。寝坊してパジャマのまま飛び出してくる。しかも枕かかえてる。枕変わるとアタシ眠れないの~というタイプかも。車に乗り込むと助手席で着替え始める。ジムは横目で見てニヤニヤ。そのうちグレースはもじもじして「おしっこ~」となる。そりゃラブラブの今は彼女のそんなしぐさもかわいいと思えるさッ!でも何年かたってみろよ。何てだらしのない、何て恥じらいのない・・ってことになるからさッ。と言うかジムには「何年かたって」はないんだけどさ(あッネタばれ!?)。関係ないけど「はじらい」という映画の予告やった。二回目は死んだ・・じゃない、寝たふりしてた。さすがシネパトス、こういう映画もかかるのさッ。でも私はこんな腐ったような映画は例え予告でも見たくないのさッ。話を戻して二人はラブラブだし幸せいっぱい!ところがとんでもないことになっちゃう。世の中の裏側なんて何も知らなかったのに(たぶん)、どっぷりつかって、もう逃げ出せなくなっちゃう。相手のせいにしてなじり合ったり、おびえて助け合ったり・・そんな激動の年月・・じゃない、二、三日を過ごすわけ。あげくの果てグレースは恋人失って呆然。抜け殻状態。しかし・・こういう映画のお約束で、最後には立ち上がる。しかも銃を持って。相手ぶち殺して復讐完了。「モーテル」と同じ流れですな。グレースを演じているのはソフィア・ブッシュ。どことなくバーバラ・ハーシーに似ている。カップルに感情移入し、応援し、ハラハラドキドキすべきなんだろうけど、私にはどうもねえ。このカップルに魅力感じない。

ヒッチャー3

オリジナル版ではC・トーマス・ハウエルだから若くてういういしくて純粋で頼りなくて(たぶん)・・。がんばれよ~何とか助かって~となるの必至。でもこっちの二人は・・。確かに気の毒。親切心出したばっかりにひどい目に会う。彼らと同じくライダーを乗せた一家は、信心深くて、困っている人には助けを・・という善意のかたまり。でもその結果は血・血・血・・。一方グレースとジムには助かるチャンスは何度もあった。でも事態はどんどん悪い方へころがってしまう。そこで引き返せば何とかなったかもしれないのに暴走してしまう。一家殺しの犯人と誤解され、警察に身柄を拘束された二人。しかしライダーがやってきて署の人間皆殺しにしてしまう。二人が逃げた後やってきたのはエスタリッジ警部。まわりの大半の連中はアホ(取りあえず逮捕、まずは逮捕、想像力ゼロ、聞く耳ゼロ)だが、エスタリッジは事態を正確に把握できる頭のいい男。犯行は大学生カップルにできるようなことではなく、犯人は別にいると直感する。エスタリッジ役はニール・マクドノー。彼とビーンだけですな、この映画で私の知ってる人。さて・・あれこれあってみすみすジムを死なせてしまったグレースやアホ警察。エスタリッジはグレースにあやまるけどグレースはもぬけのカラ・・じゃない、抜け殻状態。ジムもグレースも若いだけあって、いくらピンチ体験してもどこかしら考えが甘い。逃げる途中モーテルに忍び込む。お金ないから仕方ないんだけどシャワーざばざば浴びるわテレビ見るわベッドでぬくぬく。気の毒ではあるけれどずーずーしいと言うかノーテンキと言うか。特にグレースの方はね。話を戻してライダーはつかまって護送されるんだけど、途中で手錠はずしちゃう。胴体まっぷたつの次は不可能な手錠はずし・・マジックショーかよッ!と、思わず突っ込み入れちゃいました。目の前に警官いるのに何で気づかれないの?あんなのありえな~い。目の前の警官がアホなら運転席の二人もべちゃべちゃしゃべってお気楽ムード。田舎だから凶悪犯なんてお目にかかったことないんだろうなあ。それでまたあれこれあって、護送車の後ろの車にいたエスタリッジはつぶれた車の中ではさまれて動けなくなってしまう。

ヒッチャー4

助手席にいてぼんやり虚脱状態だったグレースは、我に返ってエスタリッジの銃奪って護送車に向かう。これ余計なことなのよ。悲劇のヒロインが今、銃を手にスーパーレディに変身!のシーンだけど、これがまああなたとんでもない迷惑行為なんですの。銃を持ってかれちゃったおかげでエスタリッジは丸腰。全くの無防備状態。しかも身動きできない。グレースは護送車の扉を開け・・さっそうと復讐を・・あらら殴られてのびちゃったわ。まあ予想通りですけどね。自分から行っちゃだめなのよ。相手は待ちかまえているに決まってる。相手が出てくるの待たなくちゃ。ライダーは警官から奪った銃持ってエスタリッジに近づく。エスタリッジ何もできず殺されちゃう。くそッ!銃さえあれば死なずにすんだのにグレースのバカ、疫病神、死神!エスタさんよ、予備の銃持ってなかったの?頭のいいアンタとしたことが・・。もちろんその後でグレースがライダーを・・。でもほら、よくやったとか、カッコいいとか、感動したとかにはならないのよ。だって彼女のせいで・・。それにしてもジムの○○と言いエスタリッジの無念の死と言い、なんちゅー後味の悪い映画だ。特にジムの○○・・そんなもんうつすなよ!よっぽど一度で帰ろうかと思ったけど、でも迷った末もう一度見ましたとさ。せっかく来たんだしぃ。・・と言うか私もスキねえ・・。私が来たのはショーン・ビーン目当てなんだよな、確か。ファンがこういう役の彼見るとどうなんですか?悪役もステキ!・・となるのかな。謎のヒッチハイカー、ジョン・ライダー。でもこの名前も借り物。本当のライダーは彼の手にかかってすでに死んでいるらしい。私がちょっと気になったのは、ガソリンスタンドでライダーが電話かけてたこと。誰にかけてたの?それともかけるふりしていたのかな。彼には前科もなく警察の記録にも何も引っかからない。背景のない、実体のない幽霊みたいな存在。人を殺しまくるけど、その一方でグレースをそそのかして自分を殺させようとする。殺人に快感を覚えていて、ジムやグレースにも同じ体験させようとする。自分と同じレベルに相手を引きずり込もうとするのは「消えた天使」と同じ。グレースは恐怖やモラルが邪魔してためらい続ける。ライダーに自分を殺すよう強要されても撃てない。

ヒッチャー5

そのためらいのせいでジムを失う。でもラスト、彼女はもうためらわない。グレースに撃たれたライダーは「快感だろ?」と笑いかけるが、グレースは「いいえ、何も感じないわ」と無表情なまま。ライダーの表情が「え?」という感じに変わったところでとどめの銃弾。今のグレースはためらわずに人を撃ち殺すことができる。でもライダーと違うのは快感も何も感じないことだ。ライダーはグレースを変えたが、同じタイプの人間になったわけではない。グレースは理由もなく、あるいは快感を求めて人を殺したりしない。ライダーを撃ち殺しても快感はない。満足感もない。ライダーを殺してもジムは戻ってこない。彼女は二、三日前の彼女とは違う。幸せでキャピキャピしていた童女はもうどこにもいない。ウーム、ハードボイルドだぜい。このラストはまあびしりと決まっていてよかったと思う。車が引っくり返るところなどもかなりハデにやってくれていて、まあいちおうがんばって作っているなあという感じ。若い二人も大奮闘。でも私は魅力感じなかったけどさ、ごめん。ビーンは・・よかったですよ。いろいろ欠点はあるにしても、まあ何とか見られる作品に仕上がったのは彼のおかげ。善人のように見え悪人のように見え・・幽霊みたいな存在だけど、実在して人を殺しまくる。自分を殺すようグレースに強要するシーンも、一歩間違うとお涙ちょうだいになってしまう。変に同情を買おうとするように見えたのでは見ている側もしらける。こういう凶悪犯はあっちの世界の、手の届かない謎めいた存在でなければならないのだ。私が一番気に入ったのは、グレース達を追跡しているパトカーの後ろからぐんぐん近づき、いきなり発砲するところ。その無表情なところがよかった。怪しいのが近づいてきても警戒心ゼロの警官連中には呆れたけどね。それとこの時ライダーはヘリにも発砲するんだけど、あのヘリどうなったの?普通墜落炎上シーン出てくるはずだが・・。どうせすぐDVD出るんだろうな。だからわざわざ映画館で見る必要もないんだよな。すっごく後味悪いのにごていねいに二回も見る必要どこにもないんだよな。でも・・見ちゃうんだよな。オリジナルでのハウアーはきっとすばらしいんだろう。でもこちらのビーンのライダーもすごくよかったヨ。