夏への扉-キミのいる未来へ-

夏への扉-キミのいる未来へ-

ロバート・A・ハインラインの名作SFが日本で映画化されていたなんてびっくり。さぞこぢんまりと・・日本映画だし・・でも猫が出てくるからそこは期待して・・。主人公の宗一郎は1968年生まれで、家族との縁は薄かった。両親が亡くなると功一夫婦に引き取られ、その二人とも死別。功一の娘璃子(清原果那さん)は叔父の和人に引き取られ、今は17歳の高校生。宗一郎は27歳で、和人と二人でFWE社を立ち上げ、和人は社長、宗一郎は技術者としてロボット開発にいそしむ日々宗一郎は拾った猫ピートと一緒に暮らす。ピートは寒い冬が嫌いで、扉を開けて不愉快な物体・・チラチラと舞い落ちる雪・・に気づくと、家中の扉を開けるよう要求する。扉のうちのどれかは寒くない夏に通じていると固く信じている。宗一郎は何回もピートのために家中の扉を開けて回るはめに。ピートは夏への扉を見つけることを決してあきらめない。原作だとピートはジンジャーエールが大好物だが、そういうシーンはなかったな。丸っこくてかわいくて、パスタとベーコンという二匹の猫が演じているらしい。宗一郎役は山﨑賢人氏。こういうイケメンの人ってみんな同じような顔していて、私には区別つかないな。途中で別の人と入れ替わっても気がつかないかも。その点和人役眞島秀和氏は大河でおなじみ。普通の人やってるの初めて見たな。和人の秘書の鈴やってるのは夏菜さん。「人生がときめく片づけの魔法」に出てた人だな。宗一郎の婚約者らしいが、彼は見るからに草食系で、女性に興味なさそうで、恋人どうしには見えないな。原作だとベルで、こっちは鈴(りん)。うまいなあと感心していたら、他にもサットン→佐藤、トウッチ→遠井など。他にもあるのかな。リッキー→璃子もそうだろうけど、リッキーはニックネームで、本名はフレドリカだから、リカでもよかったな。今は1995年で、和人や鈴に裏切られた宗一郎はクレデウス生命が宣伝しているコールドスリープでピートと共に30年の眠りにつくことにする。ただ、酒を飲んでいたため少し頭を冷やせとなって、そのせいであれこれある。マスコミに公表すると言ったため、鈴は彼にインスリンを注射。動けなくしておいて、自分が前に勤めていたマニックスグループの保険会社のコールドスリープに。30年たって目覚めると2025年で、もうヒューマノイドが実用化されている。

夏への扉-キミのいる未来へ-2

冒頭1968年の時点で、三億円事件の犯人がつかまったとかニュースで言ってるから、似てはいるけど別の世界の話なんだとわかってる。だから1995年の時点でコールドスリープが実用化されてるとか、2025年で今からたった三年なのにヒューマノイドが普通に仕事についてるとか、そういうのもオッケーよ。宗一郎が眠りについた二年後に、糖尿病だった和人は死亡。鈴はどこかで計画が狂ったらしく、何もかもうまくいかなかったようだ。住んでいるところはゴミ屋敷と化し、自身はぶくぶく太って昔の面影なし。宗一郎にとってショックだったのは、璃子が死んだらしいこと。墓まである。他に妙なこと・・覚えのないことがいくつかある。で、自分は過去に戻って何か細工したのだと気づく。ここらへんから話がってきて、なかなか理解が追いつかない。で、二回目見るはめになる。コールドスリープの他にチラチラ出てくるのが遠井という瞬間移動の研究者。移動には時間も含まれる。つまりタイムトラベル。まあ、そんな中私はず~っと思ってましたよ。猫のピートはどうなったんだ?って。クレデウス生命で一緒に30年コールドスリープするはずだったけど、鈴のせいでできなかった。代わりにヒューマノイドのピート(藤木直人氏)が出てきて、コールドスリープから目覚めた後五日間の世話をする。遠井を捜し出して過去へ・・という時にはなぜか彼も一緒にタイムリープ。この時間転移装置はかなりアバウトで、衣服も機械(ヒューマノイド)もオッケーらしい。普通なら人間だけが全裸で可能・・となる。原作だと過去へ戻って最初に出会ったサットン夫妻が全裸。ヌーディストクラブの敷地だったからというオチがつく。宗一郎は衣類だけでなく金も体にくっつけて過去へ飛ぶ。2025年では金に値打ちはなく、ゴミ同様なのだそうな。だからごっそり買って体にくっつける。1995年で換金し、その金は遠井の研究費となる。うん、だから金の延べ板もタイムリープ可能なのね?弁護士、弁理士として宗一郎を助けてくれる佐藤役は原田泰造氏。みどりは娘かと思ったら妻でした。原田氏は「ミッドナイト・バス」という映画に出ているけど、まだ見る機会なし。表情もいいし、しゃべり方もはっきりしていて、いい俳優さんだと思う。

夏への扉-キミのいる未来へ-3

宗一郎が危険をおかしてまで過去へ戻ったのは自分の研究のこともあるけど、璃子の命を救うため。原作だとダンは30歳で、リッキーは11歳。これじゃロリコンだ・・となってまずいから、璃子は17歳。宗一郎への思いは真剣だ。何度か鈴のヒールのある靴がうつるが、それを見る璃子は鈴の美しさ、仕事のできる大人の女性、宗一郎にピッタリ・・などの嫉妬に苦しんだことだろう。前半はわりとゆったりしたテンポだが、過去に戻るぞのあたりからせわしなくなる。インスリンのせいで昏倒している宗一郎のすぐそばに未来から来た宗一郎がいるんだよな・・とか、マニックスでコールドスリープしている宗一郎と、クレデウスでコールドスリープしている宗一郎の二人がいるんだよな・・とか、璃子を追った和人はどこへ行ったんだ?とか、ピート(ヒューマノイドの方)の存在とか、気にることはあるけれど、まあ考察は他の方にお任せしてと・・。それにこっちの宗一郎はあっちの倒れてる宗一郎には干渉してないし、二人同時にコールドスリープしている分にはお互い干渉はありえないしな。あのガラスの割れる音は宗一郎の仕業だったのね。猫が逃げるにしても、ガラスを割ることはまずないよなあと思っていたもんで。宗一郎が璃子を説得する時、ピートはずっと彼女に抱かれたまま大人しくしている。そこが印象的で。たいていの猫はあんなに長く大人しくはしていないからな。眠くなった子猫なら別だけど。ラストは年齢も近づき、心も近づいた二人に焦点がしぼられ、それ以外のことは省略気味。せっかく璃子を家族として迎えたのに、10年で手放すことになった(コールドスリープに入ってしまうから)佐藤夫妻とか出してきて欲しかった。でもホラ題名からして・・二人の愛の結実がメインだものなあ。アメリカで映画化されていたら、さぞかしCGバリバリの、ド派手なアクションと二人のめくるめく愛の世界になっていたことだろう。猫までCGで出てきそうだ。今回印象的だったのは璃子のキャラ。原作だとまだ11歳ということもあるが、リッキーは大したこともせず終わる。21歳になってダンと結婚する役目しか負わされていない。しかしこちらの璃子は違う。宗一郎が去り、自身が眠りにつくまでの10年間に目覚ましい働きをする。お嫁さんになることが人生のすべてではないのだ。