スクリーマーズ

スクリーマーズ

原作はフィリップ・K・ディックの短編「変種第二号」。持ってたかしらと捜してみたらあったあった。「パーキー・パットの日々」の中に入って。私はこれを、「クローン」の原作「にせもの」が入ってたので買った。少なくとも二回は読んでるはずだが、全然覚えていない。普通読み返しているうちに「この文章には覚えがあるぞ」とか思うものだが、それが全然ない。原作ではアメリカとソ連が戦争を始め、アメリカ政府はムーンベース・・月に移っていて、主人公がいるのはフランス。映画では舞台は惑星シリウス6Bで、戦争は新経済ブロック社・・NEBと、そこの労働者、科学者による連合との間のもの。地球では戦争は起こっていない。戦争の原因はシリウスで見つかった資源ベリニウム。採掘に伴う放射能汚染が問題になった。戦いは長引き、どちらが正しいのか、何のために戦ってるのかわからなくなってる。星全体が廃墟となり、汚染されている。五年前地球から持ち込まれたスクリーマーという武器のおかげで、連合側は有利ではある。生きている者なら何でも襲うが、連合側は手首につけたタブのおかげで襲われずにすんでいる。彼らは地下にいるので、詳しいことはよくわからない。自分達でどんどん改良を進めているようで。ある日NEBの伝令が連合の基地へ来るが、あと少しというところでスクリーマーにやられてしまう。持っていた文書には和平交渉うんぬんと書いてある。ここの司令官ヘンドリクソン(ピーター・ウェラー)は早速グリーン長官を呼び出すが、交渉は事実で、ではやっとこの戦争も終わるのか。その頃民間輸送機が近くに墜落。民間機のはずなのに原子炉を積んでおり、武器もたくさん。たった一人生き残ったのは上等兵マイケル。機の行き先はトリトン4で、NEBと戦うため。彼らの後からもっとたくさん送り込まれることになってると。また、グリーンは二年も前に死んでおり、戦いの舞台はトリトンに移っていると。あちらでベリニウムが発見され、しかも汚染の心配もないからだ。ヘンドリクソンやチャックは驚く。自分達は何も知らされず、見捨てられたままここに取り残されるのだ。しかしとにかくNEBのクーパー長官に会って和平交渉だ。気を取り直したヘンドリクソンはマイケルを連れて出発する。

スクリーマーズ2

ウェラーは「ロボコップ」以外はたいてい悪役だが、この作品はそうじゃないらしい。それで見る気になった。こういう荒涼とした世界がよく似合う。マイケル役アンディ・ラウアーは高島政伸氏によく似ている。今現在の彼は年のわりに老けちゃって似てないけど。マイケルは救出された時、まわりの手を振りって何かを取りに機内へ戻る。二回目見ていてそれがVRなのがわかった。後でこのゴーグルみたいなのかけて楽しんでいて、スクリーマーに襲われそうになる。タブを手首からはずすという警戒心のなさ。見ていたのは女性の裸。怒ったヘンドリクソンは足でつぶす。これをかけていると視界はさえぎられ、耳も音楽で聞こえないから無防備状態になる。彼は射撃の腕はいいが、経験は浅く、おしゃべりで軽薄。ところが後半になると口数は少なくなり、兵士らしくなる。昨日は暑い砂漠に見えたのに今日は雪が積もって寒そう。そんな中二人はNEBの基地を目指して歩く。途中廃墟で出会ったのがぬいぐるみを抱えおびえた少年デヴィッド。見捨てていくわけにもいかず連れていく。放射線の影響のせいか、チャックとの交信状態はだんだん悪くなる。昨日訪問者があったとは言ったけど、ヘンドリクソンは何も聞かない。普通誰が来たか聞くはずだが。もちろん映画を見てる人全員それがよくない出来事だって予想する。もう少しで着くという時、デヴィッドが撃たれる。何と彼は改良型スクリーマー。こういう哀れな少年を拒む人間はおらず、そこが向こうの付け目。一体でも入り込めばあとはしめたもの。現にNEBの壕(バンカー)もデヴィッドのせいで全滅。生き残ったのはロス、ベッカー、ジェシカの三人だけ。原作だとロス、ベッカーはジェシカのところへしけ込んでいて命拾いしたとなってる。ヘンドリクソンはジェシカを一目見て心を奪われる。彼は以前恋人がいたけど、別の男と逃げられてしまったという悲しい過去の持ち主。本部なんてもう存在してるとは思われないけど、それでもクーパーに会うというヘンドリクソン。案内するのはジェシカ。演じているジェニファー・ルービンは「シアトル猟奇殺人捜査」で主人公の相棒刑事やってたらしい。行ってみると誰もいなくてやっぱり無駄足だった。そこへ爬虫類型スクリーマーが現われるが、これが一型。デヴィッドが三型。

スクリーマーズ3

となるとニ型があるはずだが・・。ベッカーがロスを怪しんで殺すが、彼は人間だった。ベッカーの方がよっぽど怪しく見えるが。連合の基地へ戻ってきて、チャックに出てくるよう命令しても聞かないので、それでもう全滅したのだとわかる。扉が開くとデヴィッドがぞろぞろ出てきて、いくら撃ってもきりがない。小型の核爆弾で一掃するが、マイケルがベッカーに殺されてしまう。彼がニ型だったのか。彼を倒し、タグを調べるとヘンドリクソンにも理解できない言語が・・。もうスクリーマー達は独自の言語を創り出しているのか。前にも書いたがマイケルはこの頃には兵士らしくなってきている。何しろロスやベッカーが異常なので、彼はちゃんとせざるをえないのだ。でもやられてしまった。ジェシカと二人きりになったヘンドリクソン。抱き合いキスをし・・あらまあ。ここで突然司令官専用の脱出用宇宙船があるということが明かされる。行ってみるともちろんお約束通り一人用。あれこれあってジェシカもスクリーマーとわかるが、彼女は愛を知り、ヘンドリクソンの腕の中で死んでいくのであった。地球に向かう彼はまだ気づいていないが、船内にはいつの間にかぬいぐるみが・・。サンフランシスコに着陸許可を求めて、答えがすぐ返ってくるのはどう考えたっておかしい。タイムラグゼロ。ここ太陽系とは別の惑星ですぜ。さてたぶん映画で強調されるのはロボットが愛を知ったという、ロマンチックな部分。でも原作は違う。女ロボットは主人公をだまし、月へ向かう。ムーンベースに入り込むため今まで協力していたのだ。置き去りにされた主人公はロボットに囲まれ、手榴弾で自爆するつもりだが、それでも少しは気が楽だ。すでにロボットがロボットを殺すという段階に来てるからだ。人類は滅びるかもしれないが、ロボット達も人類と同じことやってるようじゃそのうち・・。この部分が映画では伝わってこない。スクリーマーも愛に目覚める・・そんなロマンチックな展開で盛り上げる。彼らが地球に入り込んだ後はどうなるのだろう。とは言えこのぬいぐるみがどういう機能を持っているかははっきりしないまま。てなわけで地味な映画で、ところどころ物足りなさはあるものの、なかなかよかった。