運び屋
クリント・イーストウッドの遺作・・じゃない、まだまだ元気なところが見られる快作。もうこの年になると、見る方も寛大な気持ちになるから、けなしている人はほとんどいない。演技だけならともかく、監督もというのがすごいな。園芸家のアール(イーストウッド)は、インターネットのせいで仕事を失う。デイリリーという花に時間と金をつぎ込み、妻や娘に見放される。変わらず慕ってくれるのは孫のジニー(タイッサ・ファーミガ)だけ。そんなお先真っ暗のアールだが、ひょんなことから麻薬の運び屋に。90歳で違反ゼロの彼を疑う者は誰もいない。もちろん最初は運んでるのが麻薬だとは知らなかった。でも気づいてからも運び続ける。大金が入るし、メキシコのボスの豪邸に招かれたりもする。ボスのラトンやってるのはアンディ・ガルシア。どことなくロバート・デ・ニーロ風。途中で部下のグスタボが彼を殺し、ボスにのし上がる。グスタボ役はクリフトン・コリンズ・ジュニア。DEA(麻薬取締局)の捜査官ベイツがブラッドリー・クーパー、相棒のトレビノがマイケル・ペーニャ、ボスがローレンス・フィッシュバーン。他にブラウン捜査官がローレン・ディーンだけど、彼は出てるだけだったな。アールの妻メアリーがダイアン・ウィースト。「リトル・ミス・サンシャイン」のアビゲイル・ブレスリンみたい。メアリーは途中で病死。看病と葬式でアールが姿を消したため、組織の連中はあわてる。今度こそ・・と態勢を整えて待ちかまえていたベイツ達も当てがはずれかける。しかし葬式をすませたアールは仕事を続行。結局つかまる。しかし罪人となったアールを娘アイリス(アリソン・イーストウッド)やジニー達は温かく見守る。実話が元になっていて、本人は服役中に死亡したとか。何と言うか出てくる顔ぶれを見ているだけで楽しい。流れる音楽を聴いているだけで心地よい。麻薬を扱う怖そうなアンちゃん達といつの間にか仲良くなってるのが微笑ましい。それでいて身内にこんな人がいたら家族はさぞ大変だろうなと思う。小さく縮んだようなメアリーを見ると、さぞ傷つき、悲しい思いをしたんだろうなと思う。ストレートに嫌悪感をあらわし、父親を拒否するアイリスにも共感できる。間に立って橋渡ししようとするジニーがけなげだ。