クロスファイア

クロスファイア

宮部みゆきさんの原作はまだ読んでいない。2000年というと「陰陽師」の前で、出演者伊藤英明氏の名前に心配になる。たぶんセリフ棒読みの大根演技。もちろん20年たった今はそんなことないだろうけどさ。そう言えば彼の作品って「陰陽師」以外見たことないな。ナレーションはあるけど。冒頭女の子が襲われる。その後少女の葬式なので、あの女の子を襲った少女が返り討ちにあったのかなと思ったが違った。女の子は成長し、東邦製紙の総務で働く。彼女淳子(矢田亜希子さん)は自分の能力を隠して生きている。人に知られずにいるにはなるべく他人と関わらないようにしなければならず、母親が死んだ今は孤独な一人暮らし。巷では子供のひき逃げ事件が多発している。あの少女も犠牲者の一人。淳子は同僚にも距離を置かれているが、そんな中好意を寄せてきたのが営業の多田(伊藤氏)。彼には雪江という妹がいて、淳子は仲良しになる。ところが雪江が不良少年グループに殺されてしまう。タレコミがあって小暮がつかまるが、父親(本田博太郎氏)が有名人なことや、まだ未成年であることなどあれこれあって不起訴になってしまう。多田は彼を包丁で刺そうとするが、淳子が止める。彼女は自分の能力を使えば小暮を殺すことができると考えていた。一方連続殺人を捜査しているのが石津(桃井かおりさん)と牧原(原田龍二氏)。牧原は少し前まで放火担当だった。また、念力で火を起こす能力・・パイロキネシスにも詳しい。その理由は後でわかる。実は冒頭まだ幼い淳子を襲ったのは彼の弟。弟が焼け死ぬのを牧原は目撃。女の子の名前も知ったが、まわりには話さなかった。話したって信じてもらえないし、かえって自分が疑われる。彼は車が燃えた事件・・淳子が多田に自分の能力を見せるためにやった・・や、小暮がヤケドを負った事件淳子結びつける。一方多田は最初感じた小暮への殺意がだんだんなくなっていく。淳子の能力を見て、かえって人を殺すことへの恐怖を感じるようになった。淳子は会社をやめ、行方をくらます。それでいて知らない男から電話がかかってくる。会ってみるとこの男木戸(吉沢悠氏)は別の能力の持ち主で、仲間になって欲しいようだ。明らかに淳子に好意を持っており、じゃあ多田はどうなっちゃうの?びっくりする。

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特殊な能力を持った者が、悪人を制裁するというのは、一見正当なことのように見えるが、それを許さないことの方がもっと正当。つまりどんな悪党にも一定の権利はあるのだ。その一方でどれほど真実であっても念力は凶器や証拠とはなりにくい。捜査会議での牧原の主張は案の定無視される。さて、孤独に生きてきた淳子にも仲間がいることがわかり、例えばかおり(長澤まさみさん)と心を通わせることができた反面、事態は淳子の手に余るものとなっていく。木戸は小暮を見張っていて淳子に気づいたらしい。今夜も小暮達が悪事を働くというので淳子が行ってみると、奈津子という記者がとらわれていた。何とか助けようとするが、彼女は撃ち殺されてしまう。奈津子の相棒で、何か隠しているらしい浅羽も車が爆破されて死亡。ただ、車からは起爆装置が見つかり、淳子ではない別の誰かが背後にいるのがわかってくる。何の前知識もなく見ているので、これからどうなるかわからず、その点では楽しめた。こういう能力を持ち、殺人を犯した以上、ハッピーエンドはありえず、淳子は死ぬしかないのかなと思える。見ていてあちこち省略された感じはある。なぜ藤木(谷原章介氏)は長谷川(永島敏行氏)に命預けるのか。木戸は何をして暮らしているのか。超能力者は他にもいるのか。長谷川と木戸はどうやって知り合ったのか。小暮の父はなぜ息子を野放しにしておくのか。途中でなぜか方向転換的な展開になるし・・木戸の登場で多田の存在が薄くなるとか。どうも出来はそれほどいいとも思えない作品。まあ私は原田氏見てるだけで満足ですけどさ。ぎこちない演技をする人が多い中、桃井さんの演技は飛び抜けていた。どこがどうとは言いにくいけど、とにかく他の人と違う。あと火がボーボーもよかった。私が見た映画の中では「地獄変」、「魔界転生」、そしての「クロスファイア」ですな、三大ボーボー映画。特撮陣の張り切りぶりが目に浮かぶ。淳子は炎の中で死ぬが、他の人みたいに骨が残ったりしないのもよかった。肉体が滅んでも意念は残り、でも生きてる時のようなボーボーではなく、ポッと火をともす感じなのがよかった。